クリミアの話って、今後どうなるんだろうねぇ?

Defiant Putin Blasts West as Hypocrites for Ignoring 'Free Will' of Crimeans

ロシアのクリミアの領土編入は、世界史的な事件に感じます。というのは、現地の住民投票で領土が独立してほかの国に編入できるという実績を作れば、どんなに個別事情が異なっても、侵略が正当化されるロジック(=実績)が生まれたというということですから。もちろん、コソヴォなり、いろいろケースはあるんですが、この場合にはストレートにロシアに編入されて、パワーバランスを変えるという一連の流れが目に見えて見えるので、とても物議を醸すでしょうねぇ。なので、とても興味深く追っています。人類の歴史がどうなっていくんだろう?というような視点で鳥瞰した時に、とっても興味深い出来事だと感じるので。・・・・それにしても、ウクライナEU加盟とかNATOの勢力圏内に入れるとか、、、ヨーロッパやアメリカの外交政策って、ほんと洗練されているよなー、、、なんというか、要はそれだって内実侵略みたいなもんだし、領土を拡大しているようなもんだけど、侵略には見えにくいもんなー。クリミアの編入だって、それとどこが違うのか?と言われれば、僕は、本質的には何の違いもないって感じてしまうよ。


ちなみに、クリミア編入に当たってプーチン大統領がした演説は、興味深い。基本的に僕ら日本人は、ヨーロッパ、アメリカ中心の情報にさらされているので、真っ向からその視点に反抗する情報に触れる機会は少ない。今だと中国やアルジャジーラの視点はそうだが、中国は日本とは領土問題でもめているし、中東はなかなか遠すぎて実感がわかない。が、今回のは日本に直接的には関係ないように見える事件でも、さすがに大ごとだし、大国の一つのロシアの動向なので、調べていて調べがいがある。さすがに、世界に影響を与える出来事なので。

クリミア編入を表明したプーチン大統領の演説
ウクライナ南部クリミア半島のロシア編入について、ロシアのプーチン大統領が18日、大統領府があるモスクワ・クレムリンで正式に表明した。演説は30分以上にわたり、クリミアがロシア領になる正当性や混乱が続くウクライナ民族主義者への懸念を語ったほか、米国を始めとする西側諸国の国際問題に関与する姿勢を批判した。


6年越しぐらいでコソヴォ独立の因果応報が巡り巡ってる件について


これ、とても面白い視点だった。主に接する情報のルートや世界解釈以外にどんな視点で世界を見ているかを感じるいいきっかけだった。世界って面白いなー。コソヴォなんか、全く興味がわかなかったというか、自分の人生に関係がなかったせいか、全然意識していなかったけど、こういう風に言えるんだ、と、ほほう、と思った。


この問題で、僕が感じた視点は、3点です。


1)WW2以降の「領土不可侵」と「民族自決」のルールがどうなっていくのか?


あと二つは、1)の具体的な展開ですが、


2)クリミアの領土の編入の先例は、まさに東アジアの領海問題とダイレクトに接続するんじゃないかな?。


特に、日本は尖閣琉球について、中国が海洋国家として台頭するために最も必要なのは、どう考えても台湾と尖閣や沖縄なんだよね。中国が大陸国家として、特にグローバル志向を目指さなければ別だけど、そもそも明の鄭和艦隊とその行動を見ても、世界で最初期に大海洋帝国として展開した歴史もあって、決して大陸国家として陸ばかり見ているわけじゃない。その時に、そもそも歴史的に、沖縄は大中華圏の中で考えると、なかなか不思議な位置にいるところで、たとえばここで住民投票で独立を宣言されたりしたら(そういうことは起こっても全然不思議じゃない)、それを理由に中国軍が進駐してきたって全然おかしくないんだよね。クリミアの例は全く似ている話だもの。明治以前は、沖縄は独立だったし、中国にも朝貢していたので、歴史的にも、日本固有の領土じゃない!と言い切ればいくらでもいえる。なので、クリミアの話は、ああ、ここってまさに東アジアの話とすぐつながるなーと思ったよ。尖閣の問題で、米海軍の司令官が、クリミアのように東アジアをしてはいけない、と東アジア海軍の軍人に話したというようなニュースをどこかで読んだが、グローバルな事件を追っていると、歴史的にどうしても連想してしまう話だよなとしみじみ思いました。アメリカにしてもアメリカを支える海洋帝国としてのシーレーン防衛を最も脅かすポイントは、ここだもんね。全体的に、いくらでも全く違う話だよ!と言えるんだろうけど、逆に力を背景にすれば、同じ話だ!と言い張ることも可能だな、と思いました。



3)スコットランドヴェネツィアの独立問題のように、メガリージョンの競争が主体になっていく今後の世界では、都市国家として地方や郊外を切り捨てて自国の奴隷・植民地の対象とする流れが加速するんでないの?(=それが国民国家(=ネイションステイツ)の弱体化と内乱のような混乱になるのではないか?)


89% of Veneto residents vote for independence from Rome

Venice Referendum: Crimea encouraged vote to take place

僕は時事問題的にこのことが知りたいというよりは、歴史を俯瞰的に理解したいという、大きな流れをつかみたいという部分と、こういう仕組みや構造が理解できると、SF的に未来がどうなろうんだろう?とか、ぶっ飛んだSFの物語を見たときに、凄い理解が速かったり面白さが倍加するからなんんですよね。いってもれば、コードギアスのアニメを見たときに、その面白さが倍加するためとかに勉強している(苦笑)。非常に、趣味的な視点です。まぁ、趣味でもないと、仕事に関係なければ、こんなマクロの出来事は、人生に関係ないものね。なんだかんだいって、マクロの出来事って、僕らの人生には直接的には関係がないもの(間接的には本当はあるんだけどね)。


さて、3)なんですが、ちょっと前に、ウェールズ人の友人に、興味深い話を聞きました。今、ウェールズってTVとかラジオの放送が、ウェールズ語でやっているそうなんです。BBCなんかも、ウェールズ語のサイトを見ると、全部ウェールズ語で全く読めん。テレビの人気番組のドラマとかあるそうです。って、何がこれがすごいかって、彼のお祖父さんの世代では、そもそもウェールズ語をしゃべる人は、ほとんどいなかったそうなんです!。みんな英語ばかり。それを、彼の世代一世代30年ぐらいで、教育を整え、言語を普及させて、そうなっていったそうなんですよ。僕は詳しいことはわからないので真偽まではようわからんのですが、直接聞いたし、サイトを見てもたしかにウェールズ語は公式になっているし、まぁそういうことがあるんだろうということにしましょう。これは、たった1世代で失われた言語や文化が回復するってぐらい、現代の教育のシステムは、凄いってことなんだろうと思います。逆に、シリアやアフガニスタンなどの紛争地域で、真っ先に狙われて根絶やしにされているのが教育関係者だそうです。教育関係者を殺し続けると、1世代でその民族集団が壊滅してしまうからだそうなんですよ。現代って、というか人類って、なんてクレバーで怖いんだって、心底怖くなる話です。


とはいえ、この話は、これまでネイションステイツ(=国民国家)を形成するには、数や武力が足りなかったリージョンが、独立したり民族的なアイデンティティを再形成して主張する大きなトレンドがあるんだろうと思います。理由は単純で、EUという超国家共同体があるので、その中で独立しても、ネイションステイツの一体性を簡単には壊しにくくなっているからだろうと思います。


また、今後の世界は、イノヴェーションを加速させるような多様性が好まれるはずなので、オリジナルの存在感を示す共同体を内部に抱え込むことは、決してマイナスではありません。この辺は、とはいえ、イングランドにとっては、大英帝国の一体性が失われるわけであって、、、、というパワーバランスの落ち着き先は、まだまだ議論があるでしょうが、それでもスコットランドの独立問題がマジで議会で議論されているように、この方向性は、議論としてはありという雰囲気があります。民族自決と言いながら、ネイションステイツの一体性を失わせる行為では弾圧も辞さなかったこれまでの現代世界とは、トレンドが逆方向です。


劣化国家


そしてもう一つ、メガリージョン(=大都市広域経済圏)と郊外/地方が分離する傾向です。世界的に、メガリージョンの競争が、世界のヘゲモニーを分けるという流れが明確になってきた今、メガリージョンが、自分たちの既得権と成長を維持するために、独立して、お荷物の地方を切り捨てたいという流れは当然に起きるはずです。あきらかに、大都市圏からすると、自分たちの稼いだ税を地方に再分配させられるのは、ものすごい不公平です。メガリージョンだけならば、高い成長率を保てるわけですから。

消費するアジア - 新興国市場の可能性と不安 (中公新書)

ましてや、メガリージョンは、圏になっていて、郊外、地方と外の層に行けばいくほど、安い賃金の労働者を吸収する、、、いってみれば、植民地的な構造になっているわけです。なので、メガリージョンにすれば、できるだけ郊外や、地方は切り捨て、と迄もでいかなくとも、別の領域として区別したいわけです。シンガポールがとても良い例で、シンガポールの国民はすべての権利を持っていますが、国家のインフラ的なわかりやすくいうと3K労働的なものは、すべて安い移民や国籍を持たない人間を奴隷のように酷使することで、都市のインフラを安く保つ仕組みになっています。これが、シンガポールのように最初から、都市国家としてはっきりそのように歴史的になっていると、問題はありません(実際はあると思うけど。。。)。しかし、これがタイのバンコク経済圏と地方や、日本の東京圏とその他地方といった風に、ネイションステイツとしての一体性が歴史的にありながら、経済的文化的な域圏が分化してしまうと、とっても問題です。これが、日本でいえば、JR北海道や郵便局などの、ユニバーサルサービスの問題点です。ちなみに、タイでのデモや政治的混乱は、この差から生まれていると僕は思います。


高い成長とイノヴェーションを加速してグローバルな競争に勝つためには、大都市広域圏に対する集積が最も効果的だとする説が昨今有力に思えます。都市の高密度集積を背景にして、高いサービスレベルを維持すれば、ハイクオリティなサービスが効率的合理的に運営できます。けれど、それで地方にも同レベルのユニバーサルサービスを、同じ国民だからというネイションステイツの一体性の平等に訴えて維持すると、かなり無理がおきます。離島や北海道の奥地に、何の独自性もなくユニバーサルサービスという平等装置を設定すれば、税金の使い道がものすごく不公平になるのは間違いありません。だって、都市の人間にすれば、ばかみたいに高い税金を、自分にほとんど関係ない地方に投入されるわけで、やってられません。地方にしてみれば、同じ国民として平等な権利を享受できないのは、公平性に反する!という話になります。どちらの言い分も、正統性があります。シンガポールの国民と、奴隷のように都市インフラを安く維持させる労働力の外国人とは、関係性が違います。日本人は、150年近く国民国家を運営してきて、国家の一体性も高い。インフラの共有性も高いので。そこで、いきなり大都市圏の競争が重要だからと言って地方を切り捨てれば、それはおかしい!となるのは当然です。


これが、大都市と地方の一票の格差だと思うのです。
(つまりは、利害が違いすぎて、民主主義が機能しないということね)


ちなみに道州制の導入というのは、このそもそも地域性や競争力の源泉が全く異なっているリージョンを分解して、国防や外交などの共通税というか共有インフラを除いて独自財源で自立して競争させようとするということなんだろうと思います。ユニバーサルサービスが失われるのでデメリットばかり感じるでしょうが、メリットもたくさんあると思います。北海道自体は、物凄い競争力のある地域ですが、東京ベースの価値観と制度、法制に縛られていると、しょせん中央集権国家の遠い僻地の辺境でしかありえません。けれども、アジア圏で唯一といっていいほど素晴らしい良質の積雪のあるリゾートで(本当はロシアのカムチャッカなどと競合すると僕は思う)温泉があって、素晴らしい観光の集積地だと思います。この辺りにヘルスリゾートの巨大な集積地を作れば、ものすごい競争力を持つと僕は思うんだけれどなー。蝦夷共和国の夢よもう一度!です。アイディアによっては、いろいろやりようがあるのです。そもそも日本列島はめちゃくちゃ豊かな地域ですから。


とまぁ、大きな枠組みでは、国家という制度はどうなっていくのだろう?というのが疑問です。EUのような超国家的な制度が拡大する一方、都市国家やメガリージョン、もしくはこれまでの国民国家の地方であったスコットランドなどの独立志向など、逆の力学が働いているように思えるんですよね。また、これってWW2以降の大きなルールの一つである、民族自決や領土不可侵のルールとどう折り合いをつけていくのだろう?などなどということを、クリミアの話を見ながら、つらつらと考えていました。


どうなんすかねー?