『The Shift: The Future of Work Is Already Here』 リンダ・グラッドン著 これからの僕らの未来

The Shift: The Future of Work Is Already Here

リンダ・グラットン教授の『ワークシフト』は、近年まれにみる良書だったようだ。いま、全力で友人にすすめまくっている。自分の今まで考えてきた思考の断片が、非常に整合性をとれてつながっていく触媒になって、凄く感動した。久しぶりに凄い知的興奮を味わっている。もうすぐ、ちきりんさんの公開読書なので、それも凄い楽しみ。

「 Social book reading with Chikirin もおもしろそう!」
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20120816

何がこんなに面白いんだろうか?って言うと、たぶん一つは、先進国における人口の激減と超高齢化社会の到来、そして新興国の高度成長と人口爆発など、個々の問題「のみ」で断片的に不安をあおりながらこれまで語られていたことを、すべてぜーんぶひとまとめにして「世界は今どうなっているか?」ということを描きだしたこと。同時に、そういった『変化』がもたらすネガティヴな方向とポジティヴな方向の両サイドを描いてみたことから、いまの時代という「分岐点」の姿がすごくくっきり炙り出されてきたからだと思う。著者があげているマクロの変化要因は、下の5つ。


<未来を形づくる5つの要因>

要因1 テクノロジーの進化

要因2 グローバル化の進展

要因3 人口構成の変化と長寿化

要因4 社会の変化

要因5 エネルギー・環境問題の深刻化


たしかに「変化」を見ると、変化それ自体は、プラスでもマイナスでもなく、事実であって、人間の意志や世の中の流れでそれはどう変化するかわからない。だから描くとすれば、プラスになった場合とマイナスになった場合の両方を見せてもらわなければならない。世界はそんなにバラ色のはずもなければ、真っ暗なだけでもないはずだからだ。世界はモザイクだし、個人の意思決断でいろいろ個人の結果も変わる。このプラスマイナスの幅を描いたことが、結果として、全体の網羅感と幅の広さ奥深さを作り出したのだと思う。

この「世界全てをひとまとめにした」というのは重要なポイントだ。僕は、超高齢化社会の突入や財政破綻新興国に仕事がシフトして行ってしまう、大都市に人口が集中してメガシティを形成してその周辺部がスラム化していくこと(世界中で起きていることだよ!ほんと)、そのメガシティ同士の国際化の競争になるであろうこと、また人口が激減してしまい全世界の非都市部、地方は悲惨なほど沈んでしまうこと、などの減少は、日本特有とまでは言わないが、日本に非常に特徴的に表れている現象だと『思い込んでいた』。けれども、それは全然そうではなく、ほぼ世界全てで同じ現象が同時進行していることが、はっきりとこの本でわかった。これは凄く、物凄く大きい気づきだった。さらには、そういったマクロ要因だけではなく、そのミクロの影響として、、、僕も海外に住んでいるわけでもないし、自己再生のコミュニティとここでは言われるような、自分の気持ちの内側までシェアする重要な友人たちに日本人ではない人がたくさんいるわけではないので(というかそれってほぼ家族のみぐらいになるので非日本人は皆無だ)、知識としては知っていたり、時々仕事で話す相手や友人から、ああ似たようなことはあるのかもなぁ、と思ってはいたが、これほど明白に「世界が接続していて」同じ土俵で、同じ感覚で、同じ姿勢で、同じマクロの波に飲み込まれているとは、まだ思いきれていなかった。そうした先入観を全部そぎ落としてくれて、それぞれ見ていたマテリアルのパーツが、はっきり関連性を持ってクリアーに見えるようになった。これは本当に凄いきづきだった。

Shocking Facts You Did Not Know A Minute Ago

そうやって考えてみると、実はザクザク事実が自分の中にすでにあったことに気付く。考えてみれば、僕は世界中の都市を仕事で回り、全世界の最先端のビジネスを体験し、そして東京というメガシティに住んでいて、デジタル中世の最先端をこうしてブログなどのネットメディアで体験している、、、にもかかわらず、、、つくづく人間は、自分が見ているフレームワークパラダイムというナルシシズムの檻にとらわれる生き物なんだなと、痛感する。知っていて、実体験していてすら、それをちゃんと分析して直視することが難しい。もちろん、「生の現実の断片」だけではわからない。それを、類推して、横と縦で補強して、想定して、全体像をくみ上げるという作業が必要だ。しかしながら、それは、基本的に、既に持っているフレームワークの補助なしには行えない。・・・行えないことはないのだが、断片から全体像を、「純粋経験」的に、生の現実そのままで組み上げて統合化するのは、非常に難しいしステップのいる作業だ。そういう意味では、それをこのリンダ・グラットンさんは。大規模な調査とともにやってくれたわけで、そのフレームワークを援用すると、世界がすごくクリアーになった。つくづく、人ってのは、見ている眼の前のことですらも、ちゃんと直視できない生き物なんだな、と思う。


7 Billion: How Did We Get So Big So Fast?

マクロの条件で最も大きいのは、特に現代は、人口だ。人口がどう動くかで、非常に大きな波が、どのように襲ってくるかがよくわかる。これも、自分の人生や関係性にどう影響を与えるかの視点で見直すと、凄いいろいろなものがわかる。

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉