『囮物語』 西尾維新著

囮物語 (講談社BOX)

後書きで、作者がサードシーズン宣言(笑)で、とってもうれしかったです。


それにしても、なんて楽しそうに小説書いているんだーと、感心します。それなのに、非常に構想がよくよく考えられていて、なんというか推理小説から出発した作家だけあるなと思わせる構築力です。これは矛盾する資質なので、すごい人だなー西尾維新さんと思います。


さて、この「なでこメデューサ」まで読むと、救われた女の子側の一人称で書かれるという共通点があります。つまり彼女たちの内面が明らかにされて、その内面の問題点が、他人から救われる形ではなく、自分自身で自分の問題点に気づくことによって為されるという、構造上の共通点は非常に感じます。そして、自己の内面の問題点に対する『気づき』というのが、とても暗いテイストを帯びるのは、必然で、、、だって、自己欺瞞ナルシシズムが破られるほど、人にとって苦しく怖いことはないですからね。自分自身のウソに溺れているのが、人間にとって一番心地よい状況だから。。。。そこから抜け出すのは、本当に難しい。そういう意味では、『囮物語』と『花物語』はとても暗い。たぶん暗すぎて突き抜けてしまったのが『傾物語』ってところだろう(笑)。


その流れで考えると、羽川翼の『猫物語(白)(黒)』の、驚くべきカタルシスと明るさは、、、、すげぇ、なぁと思う。羽川翼が、ものすごい強力な自我と、、、自我の欺瞞(=ナルシシズム)が桁外れに大きすぎて、、、、、その落差ゆえか、ものすごい成長のカタルシスを感じるんだよね。つまり、彼女ってのは、存在がヒーローなんだろうなーと思う。ここまで自己欺瞞がでかいのは、、、要はここまで『心が壊れている大きさが大きい』のは、それ人が普通の存在ではあり得ないってことだもの。ふつうこういう自意識の問題点を、『自分自身の気づきで見つめなおす』という過酷な作業が、あれほどぶっ飛んだ、感動的な成長物語になったりしないよなー。。。と、逆に、『囮物語』を読んでいて思ってしまった。


とはいえ、一番小物感漂う、前髪娘が、、、なんと、セカンドシーズンのラスボスであったことは、感心しました(笑)。もーすげーよ。この作品。大好き。


猫物語 (黒) (講談社BOX)