『ベイビーステップ』 勝木光著 なんの特徴もない平均さ平凡さが極まることによって、オリジナルに転嫁することもある

ベイビーステップ(19) (講談社コミックス)

評価:★★★★★5つ
(僕的主観:★★★★★5つ)

この物語を読んでいると、とてもインスパイアされる。一つは、忘れていた20年近く前のテニスへの関心が凄く揺り戻ってくる。僕はもともと高校で硬式テニス部で、あの頃の僕のヒーローは、ステファンエドバーグであり、マイケルチャンであり、ゴーラン・イワニセビッチ、そして松岡修造だった。その熱い思い出が、戻ってきた気がします。なんだか、テニスが気になって仕方がないのです。それに、youtubeで過去の試合を探したり、、、こういう強烈な、しかも別次元のことへのインスパイアというか影響力って、よほどの作品でないとないのですが、、、、この作品ってその「よほど」なんんでしょうねぇ。


なんというかね、艶も色気もないんですよ、特にこのマシーンみたいな難波江くんとの戦いなんて。なのに、なんというかなぁ、じわっとかみしめるような面白さがあって。それがじわじわ積み重なると、あれ、おかしいな、色気も艶もないようなかさかさなはずだったのに、なにこの湿気バリバリの熱狂的な感じは、、、というような感情に誘い込まれていく。いやほんと、素晴らしい物語だ。いったい何がキーでこうなっているのか、、、、。


ふと、えーちゃんのスタイルを称して、なんの特徴もない平均さ平凡さが極まることによって、オリジナルに転嫁してきている、というようなことを書いてあったのを(この間だったかなぁ?)思い出して、ああ、、これって、ステファン・エドバーグをおもいだすなぁ、、と。サーブアンドボレーの選手だったので、ちょっと違うんですが、スタイルが凄く似ている。バランスが極まっているほどいい選手で、それ故に、なんというか迫力とか色っぽさというか艶が全然ない。スウェーデン人の超男前でしたが、、、、。ほんとつまらない感じの、淡々としたテニスなんですよ。けど、当時、他を寄せ付けない、ATPランキングの世界第1位。あの時は、なんであんなつまんないテニスの集大成が、あの結果と、不思議な魅力につながるかわからなかったんですが、、、たぶん、強大な武器がない、、、松岡修造やイワニセビッチのような世界最高速のビックサーブもないし、マイケルチャンやクーリエ張りのオールラウンドプレイヤーでもない、そういう自分をよく見つめ、そして、淡々とサーブアンドボレーによる試合の「組み立て」を自分の得意なリズムに巻き込んでいく。あの淡白さと淡々さが、当時は、なんだかなぁ、という思いもありましたが、今は逆にこれだけ年数がたっても、よく覚えています。そうか、ああいつ、自分のペースに引き込んで淡々と積み重ねる「スタイル」というのは、ありだったんだなぁ、、、と。