『クラスルーム☆クライシス』 監督 長崎 健司 シリーズ構成・脚本 丸戸史明  11話からのどんでん返しが、素晴らしい!!!

Classroom☆Crisis(クラスルーム☆クライシス) 2 (完全生産限定版) [Blu-ray]  

評価:★★★☆星3つ半
(僕的主観:★★★★☆4つ半)

まず最初の評価として、素晴らしく面白かった。11話からのどんでん返しが、素晴らしかった。あそこからの最後までのテンションは、★5つ。本当に面白かった。トータル評価としては、★3つ半ですが、これはぜひとも見てほしい、素晴らしい作品でした。特に一つは、丸戸史明さんの脚本という文脈で読むこと、さらにいうと、丸戸さんは、とてもオーソドックスな、ともすれば古いとも思える見たことがある完成した物語類型を組み合わせることで、「その先」を見ようとする人なので、ぜひとも、この人のは、名前で選択してみたいところです。といいつつ、過去の『パルフェ 〜ショコラ second brew〜』、『世界でいちばんNGな恋』とかやれていないんだよなぁ。『WHITE ALBUM2』のみという無様さです。でも、この人の作品って見事なぐらい、平均の水準を確実に超えて、エンタメとしては見事なので、見てそもそも損はないです。

パルフェ ~ショコラ second brew~

さて、twitterで実況中継していたので、それに合わせて、感想をくみ上げてみたいと思います。こうしないと、全作品見終わってから、上から全体を眺めてトータルで評価してしまうので、その途中で感じたことの展開、パーツパーツの可能性の評価とか、そういうのができなくなってしまうんだよね。特に、今回、『機動戦艦ナデシコ』を見直していて、最初の時点で相当嫌いでダメ出ししてたんだけど、その部分って、まぁその部分で切ってしまいやすいとは思うんですが(苦笑)、後半の展開でひっくり返っているし、それをそもそも監督は意図しているのがわかってきたんですよね。そうすると、最初の展開の不満点は、あとの方では消えてしまう。でも、本当は、そこ最初の部分での違和感こそが、この作品を評価する大きなポイントだってことが、LDさんと話していてわかったんですよね。そういう風に、リアルタイムに個々の評価をしていくことで、できれば丁寧に評価するのができればベストなんですよね。クンフーを積むのに。なかなかできないですけれどもね。でも、いま乗っているので、やれるときにはやろうって。


そうした時に、最初に思いついたのは『甘城ブリリアントパーク』でした。

甘城ブリリアントパーク 第6巻 限定版 [Blu-ray]

僕はこの話を、何の話としてみたのかというと、経営再建、事業再建の物語に見えるんですよね。いや、まぁ、そのまんまだと思うけど。けど『甘城ブリリアントパーク』って、主人公の可児江西也は、経営再建のプロフェッショナルとしては、甘すぎてダメだなーといって評価下げちゃったんですよね。LDさん曰く、あれは、千斗いすずさんの話なんですよ、といわれたんですよね。でも、たぶん、僕は、ラティファ・フルーランザの方が好きだったんですよね。LDさん曰く、あれは、噛ませ犬です!と断言されたので、ええ!!!って思ってしまったんですが(笑)。ラブコメのその部分は、たぶん僕は、主軸に思っていなかったんだろうと思うんですよね。だとすると、経営再建の話だなー、と。

華麗なる一族〈上〉 (新潮文庫)

でもだとすると、僕は山崎豊子さんの『華麗なる一族』を思い出したんですが、やっぱり、経営者の話だと、金と女のドロドロがないと、本物感が出ないなって思ったんですよ。前半を見ていると、日常系という設定ではありえないんですが、学園のラブコメディになるわけであって、その設定からすると、そこはあまり進んでいない。瀬良ミズキと白崎イリスのWヒロインで、あまり、ラブコメの方向は進まない。基本的に、経営、事業の話が展開していく。霧羽ナギサが経営で権力をどうやって得ていくか、もしくは、A-TECの事業の再建の話が展開していく。でもだとすると、学園ラブコメの設定なので、金と女のドロドロはできないですよね。なので、不満に思ってしまったんですよね。中途半端だって。もちろん、権力を得る過程で、政治家の選挙の話があるじゃないですか。あれ、素晴らしいとは思うんですよ。この系統の話で、なかなかできないところをアクセル踏みこんで描いている。と、LDさんが指摘してくれて、なるほどと思ったんですよ。でも、僕はこれを見る限り、確かにこの系統の話で、選挙の話を描くのは、素晴らしい脚本だと思うんですよ。でも、こっちに話をふったせいで、そもそもロケット開発の話は、宇宙開発への夢のSFの話になるはずなんですが、宇宙開発のその夢と志が描かれていないんですね。これは、はっきりと脚本でそれを選択したんだろうと思うんです。けど、たぶんロケット的なものが好きな僕としては、SFのそこの部分を期待していたんだと思うんですよね。なので、それを振り切るぐらいなら、、、、『白い巨塔』とか、ああいうレベルでの権力のドロドロを見たいと思ったんですよね。

で、、、、じゃあ、経営の話だとすると、究極ラスボスはだれか???という問題になると、霧羽カズヒサ社長になるわけですよ。もっといってしまうと、いいかえれば、霧科コーポレーションという会社が、会社の目標として何をするか?という話になると思うんですよ。けれども、それが11話、、、後半になるまで示されていない。なので、僕にはフラストレーションを感じてしまうんですよね。「それ」がないのならば、まぁ仕方がないです。けど、11話の大どんでん返しの後に、それががっちり示されるわけですよ。この社長!!!マジでラスボス的だぜ!!!という見事な、回答が帰ってくるんです。

ビジネス書や僕らの時代の企業の展開、歴史をたくさん見ていると、上記で引用したように、巨大コングロマリットが、事業ポートフォリオの安定性のために、多角化するのはもう当たり前の話なんですね。SONY、日立、GEなんでもいいですが、そうしてきました。その結果、コングロマリット・ディスカウントと呼ばれて、どれも中途半端で、コアコンピタンスで世界を独占するような集中と選択ができないことは、すべてで負け犬になるということがわかってきました。この辺を知っている身としては、いやいやこの物語類型をするならば、コングロマリットへの展開は、古すぎるよ、、と思っていました。いいかえれば、霧羽カズヒサ社長のビジョンが甘いということなんですよ。でもね、、、この時代の環境背景を考えて、見事な大どんでん返しというか、見事な会社のビジョンを描き出しているんですね。僕はしびれました。経営の話と復讐譚の話だと、これってナギサは、カズヒサ社長に仕えるしかなくなると思うんですよ。いや見事でした。いいかえれば、この落差、大どんでん返しを演出したくて、こういう脚本の構成をしたんですよ。この評価って、最後から見ると、見事になって、意識しなくなるんですが、、、、ようは、僕は、11話まで、このどんでん返しの謎を引っ張るのは、やりすぎなんだと思っているんですよ、僕は。視聴者がついていけなくなってしまう。11話でいきなりのどんでん返しも、平均的な視聴者がどこまで理解できたかがわかりません。もしくは、そこまでに切られてしまう可能性があるよなって。

でも、まぁ、素晴らしかった、というのは事実。少なくとも、僕のフラストレーションは、11話ですべて解消されてしまった。。。。んだけど、、、、、

これ全体の構成を考えると、12話の1クールって、尺が短いんだと思うんですよ。これが、24話だったら、もっとバランスよく演出で来たんじゃないのか、と思いました。おしい、、、と。特に、丸戸さんの才能のコアであるミクロの人間関係やラブコメの積み上げが、経営の話に押されて、あまり展開されていないで、積み上げが弱い状態になっているのが、僕はもったいないなって思ったんですよ。



もう一つは、超ネタバレですが・・・・・



これって、身代わりだってわかるための演出が、全くないじゃないですか。僕ももう一度見直してみましたが、初めてのナギサとイリスの出会いのシーンも、完璧に隠すことをナギサは選択していて、これは視聴者にはわかんないと思うんですよ。ちょっとでも演出したら、すぐ逆算されてわかってしまうと思うんですよ。これ、やっぱり完璧に隠すことで、あとで驚かせることを選んだんだと思うんですよね。それって経営の話を演出と同じですよね。それはそれで素晴らしい!!と思うんですが、それが隠されてしまったが故に、それに付随するドラマトゥルギーがすべて止まってしまっているんですよね。この身代わりの話がわかってから、霧羽ナギサって、凄い魅力的になるんですよね。それって、弱みを見せたからだと思うんですよ。人間味が凄い出てくる。あとミズキにあまえちゃって、恋愛が進むのも、非常によくわかるんですよね。ミズキって、お母さんじゃないですか、母性の設定だもん。そして、、、、イリスの話が思い出されれば、Wヒロインのハーレム設定が、凄い効いてくるんですよね。最後の一瞬ですが、3人でいちゃこらしているシーンとか、、、これ最初から見せてくれ!!!!!って思ったんですよねー、これも尺の話に還元する。この尺が12話ではないけど、24話であったら、もう少し、、、、中盤でこの設定を進めてほしかった気がするんですよねぇ。LDさんは、いや、このイチャイチャをメインではなくて、最後の一瞬しかないところが、抑制が効いてていい!!といっていて、ああ、それはそれもそうなんだよなーと悩んでしまいました。『白銀の意志アルジェヴォルン』のヒロインの、一歩前に踏み出さない感じが良かった!!!って、僕も思っていたんで、そのへんの抑制こそがいいっていうのも、、、わかるんですよ。なにも普通のハーレム作品にする必要はないってのも、わからんでもない。でもなーこれ、最初、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』のかんざきひろさんがキャラデザインじゃないですか。どう考えても、ずっと、京介にしか、見えなかったんですよね。それは、まぁそっくりというのもあるんですが、内面が見えないのでキャラクターが安定しないので、過去の作品に引きずられちゃったんですよね。

俺の妹がこんなに可愛いわけがない(7)<俺の妹がこんなに可愛いわけがない> (電撃文庫)


なので、、、、あー尺がもっとあって、早めに展開してくれれば、、、という思いが、、、11話以降が素晴らしすぎるだけに、惜しかったと思いました。


さて、僕は、この作品の最も興味深かった部分は、モノづくり、組織、チームでやっていることだと思うんですよね。この部分の展開を彼は非常に丁寧にやっている。僕、ここは時代の最先端だと思うんですよね。僕は、『妹さえいればいい』や『エロマンガ先生』より、こっちが筋がいい気がします。まぁ、筋の問題じゃないんですが。ようはその「種」をどう展開するか、ですから。

このあたりは、たとえば、『響け!ユーフォニアム』や『ちはやふる』 をみると、最前線の感じを感じます。このあたりの話を、自意識の解体の話からの展開で見ると、おもしろいのですが、あまりにながくなるので、また今度。

響け!ユーフォニアム 7 [Blu-ray]

ちはやふる Vol.1 [Blu-ray]


このへんは、丸戸さんは、先を目指して、コツコツ積み上げているように感じます。型の古いものを安定的に組み上げるエンターテイメントのオーソドックスな手法なのですが、、、、常にクリエイターとして、先を、目指そうとしているのは、感動します。いやーこの人は見るべき人ですねー。しかも、先を目指す人にありがちな、エンタメを忘れることもないし。いいです!。