『トランプがはじめた21世紀の南北戦争: アメリカ大統領選2016』 渡辺 由佳里著  2016年のアメリカ大統領選の導入の教科書ともいえる読みやすさ

トランプがはじめた21世紀の南北戦争: アメリカ大統領選2016

評価:★★★★★星5つ
(僕的主観:★★★★★5つ)

2016年のアメリカ大統領選のCAKESの連載記事『アメリカ大統領選、やじうま観戦記!』をずって追っていたので、この本を読みなおして、再度、大統領選を追体験した感じがして、非常に良かった。またこの本は、歴史の経緯、大統領選の仕組み、各候補者の特徴と支持者が網羅されていて、しかもとても平易に書かれているのでアメリカ大統領選挙の導入本として、とてもおすすめです。


アメリカ大統領選、やじうま観戦記!
https://cakes.mu/series/3628


1年以上も長く継続的にその人のFacebookや記事を追うと、その人の思考の癖がわかるようになるもので、著者の渡辺由佳里さんは、明らかにリベラルな人で、民主党支持で、それも中道路線支持、そして女性としてのヒラリーさんにシンパシーを感じているのですが、はっきりとそういう好み、自分の思想があるにもかかわらず、右左に対して非常にバランスがとれている人だと思います。自分の信条とすることをはっきり公言して、それでもなおかつバランスがある、というのはその人が信用できるかの重要なポイントだと僕は思います。敵に対して基本的に、口汚くののしる人は、見たいものしか見ない妄想の人であることが多いからです。妄想を信じるのは、理想主義的で、イデオロギーの基本なので、それすなわちダメ、とは言えません。ただはっきり言えるのは、バランスがない人は現実主義ではありえない。現実主義でない場合は、有用な意見ではない、と僕はいつも思います。渡辺さんは、プログレッシブ(バーニーサンダース支持者のような民主党の中でも左派)にまで行かないくらいのリベラルで中道に近い思想の持ち主で、かつ現実路線に親和性がある人だからだと、僕は読んでいてとても、心落ち着きました。自分の政治信条に近いし、何よりも道徳倫理的にバランスがあるの安心する。そして知的でディーセントで会話というか話す内容が、とても楽しい。もともと読書好きで、洋書のお薦めで有名な人だったのでそういう親近感もありました。


僕の英語力だと限界があるので、冷泉彰彦さん、渡辺将人さん、町山智浩さん、川崎大助さんなど日本語で、単純な事実だけではなく「評価する軸」みたいなものとともに全体の枠組みを示してくれる人はとても有用で、今回の選挙のナビゲーターとして、渡辺由佳里さんも、そういった指針ひとりでした。考えてみると、大手マスコミの記事はほとんど信じていないというか、事実の確認だけで、解釈は「顔が見える個人」を選んでいますね。そういう意味では、これも部族化の現象なんでしょうねぇ。というか、cakesやNewsweekの記事、毎回、凄い楽しみにしていました。なので、この本を読むことで、第45代大統領として、ドナルド・トランプさんが選ばれ、そしてこの2017年にアメリカから日本に戻ってきて(ということは、2期目のオバマ政権と45代大統領選挙をフルで体験できたわけです)それを振り返れるのは、とても楽しかった。
 

こうして、冷静に一冊の本で読むと、渡辺由佳里さんの記事、この本の面白さのコアがなんだったのかを一言でいうと、民主党支持のリベラルな中産階級アメリカ人の「インサイダーの視点」でこの大統領選を眺めることができることだろうと思います。彼女自身が、ボストン郊外のレキシントンというアメリカ中でも圧倒的に民度の高い地域にいて、非常に知的で裕福な人であり、かつもともと日本で生まれ育った移民であり女性であることから多様性文脈に強い共感をもっていることを、等身大の主観で表現していて、「そういう立場の人」がどういう風に感じるのかが、とても分かりやすく伝わってきました。結局のところ、「その人自身」が見えて共感できないと、なかなか記事自体を信用できないんですよね。ちなみに、お金持ちで知的で上品な人って、たいてい嘘くさい虚栄心に満ちた人が多いのですが(笑)、渡辺さんは、そもそも読書が凄い好きな人で、とても等身大で、嘘くささがなくて、安心して声に耳が傾けられました。お題目ではないリベラルな人が持つ、穏やかさとバランス感覚を感じます。ちなみに僕も本の虫なので、本が好きな人には強いシンパシーを感じるんですよね。


こうした顔の見える個人の意見で世の中の現象を追うことは、「良さ」でもあるのですが、同時に「トランプ現象を生んだ部族化するアメリカ」という章で描かれているように、僕自身も、ずっと最後までヒラリー・クリントンさん支持でしたし、基本的な多様性を肯定し重視するリベラルなバラク・オバマ大統領のアメリカを素晴らしいと感じて、渡辺さんの意見に共感していたので、自分自身がかなり「部族化」していることに、気づきにくかった。自分の価値観にフィットすると、なかなかその他の価値体系を受けつけなくなってしまうのだな、としみじみ思いました。というのは、経済政策的には、僕は共和党の「小さな政府」志向の方が親近感があるし、トランプさんの経済に関するアプローチは、基本的に最初からだいぶ嫌いじゃなかったんですが、それでも、その部分を選挙当時掘り下げて考えられなかったのは、多様性の文脈を否定するロジックが感情的に受け入れがたかったからなんですよね。そういう意味では、自分もアメリカのリベラルな大都市に住んで、リベラルな人の囲まれていたので、情報もだいぶそっちによってしまっていました。いま考えると、取引先とか経営者仲間の友人は、ほとんど全員が消極的にトランプ支持、もしくはトランプさんが大統領になることを予測していたので、冷静に論理的に考えると、その可能性の方が大きいということを感じ取らなければならなかったのですが、感情的にできなくなっていたんだなーと思います。


さてこの本を読んでいて、様々なトランプ分析本などと比較して、これはいいな!と思ったのは、1章の「アメリカの政治のしくみ」が部分です。これはアメリカの大統領選挙の基本的な枠組みの説明と、過去の選挙の振り返りです。いって見れば教科書的なものなんですが、これが実は、最も今回のアメリカの選挙で重要なことなんじゃないか、とすら思いました。僕が読み取った大きなポイントは、



1)リンカーンのころから民主党共和党の支持基盤は、まるで逆になってしまっている。
  1-2:大統領選挙と歴史の深い関係


2)オハイオ、フロリダ、コロラドペンシルバニア、ノスカロライナ、ニューハンプシャーアイオワネバダ、ミシガン、ウィスコンシンミネソタバージニアなど「スィング・ステート」と呼ばれる民主党が確実にとるカリフォルニアのようなリベラルな「青い州」でもなく、保守的な共和党の「赤い州」でもない州の動向が選挙を決める
  1-1:アメリカ大統領選のプロセス
 

この2点です。そして、今回の2016年の選挙を見る時に重要な点は、差別主義者(にみえる)のトランプさんが大統領になるのが感情的に許せない!というような部族的な感情視点というか表層的な部分ではなく、アメリカのマクロ構造がどういう風に変化してきたのかの「構造変化」のトレンドを見ることだと考えてみると、この2点がその説明になっているのだと思うのです。というか、究極、答えはこれじゃないか、とすら思えます。それを、シンプルに選挙制度と歴史から説明しているのは、たぶん著者は、導入部分を意図して書いていると思うのですが、僕にはこれが答えに思えました。


というのは、リンカーン大統領が共和党のリーダーだったときは、奴隷制度に反対して南北戦争を戦っています。が、しかしマイノリティが支持する民主党の最初の大統領のアンドリュー・ジャクソンは、アメリカ先住民を虐殺して出生した軍人で、150人もの奴隷を持つ南部の農場主でした。現在とまるで逆。なにをいっているかといえば、この当時と現在では、二大政党制の共和党民主党は、その支持基盤が全く逆く異なる存在になってしまっているということです。意外に、このことをはっきり書いているものがないように僕は思います。なので、ずっとアメリカを追っているわけでもない人には、良くわからなくなる。このことは、実はあまりに基本的過ぎて、アメリカウォッチャーには、まとめ直す必要もないことなんだからかもしれません。でも、これをもっと敷衍していうと、アメリカの変化を構造的に読み取るためには、それぞれの党が自身の支持基盤をどのように変化させていくか、というトレンドを読み解いていけばいいということを言っていると思うのです。アメリカは、そういう意味で、民主主義国家であり、人々の意思が反映する、人々が君主であり主権を持つ国なんだなとしみじみ思います。


では、大きなトレンドとして、民主党がマイノリティに大きな支持基盤を持つこと、共和党が白人とキリスト教原理主義者に支持基盤を持つ現在がどうして出来上がったのかを考えてみると、当然ですが、それぞれの党が自身を強くするために、現在の支持基盤を獲得するべく努力してきたこと、またそれを維持するために「彼らの要求にこたえ続けること」が必要なことがわかります。分岐点はブッシュ(子)大統領の時にその分断が目に見えて見えてくるのですが、構造的な背景は前から進んでいるのです。


民主党は、マイノリティを基盤に置いています。なので、構造的に、白人の中産階級の男性という既得権益を奪い取って、マイノリティに分配するという力学が働きます。当然のことながら、白人の中産階級の男性からの支持は失われます。ちなみに、白人のお金持ちの人にリベラルな人が多いのは、はっきり言ってそれだけ余裕がある人は、生活よりも道徳や倫理のよりよく生きることに意識が行くからでしょう。多様性の文脈を肯定して、リベラルな方向に舵を切れば、どうしても既得権益の中心部から権力を奪い取るという方向になります。この部分について、渡辺さんは、今回のスィング・ステートで揺れる地域でのヒラリーさん敗北とトランプさん勝利の構造的な主要な理由の一つに、ヒルビリー(Hillbilly)があるとしています。これは、なるほどという論点です。

ヴァンスが「Hillbilly(ヒルビリー)」と呼ぶ故郷の人々は、トランプのもっとも強い支持基盤と重なるからだ。多くの知識人が誤解してきた「アメリカの労働者階級の白人」を、これほど鮮やかに説明する本は他にはないと言われている。


 タイトルになっている「ヒルビリー」とは田舎者の蔑称だが、ここでは特に、アイルランドのアルスター地方から、おもにアパラチア山脈周辺のケンタッキー州やウエスバージニア州に住み着いた「スコットアイリッシュアメリカ独自の表現)」のことである。


 ヴァンスは彼らのことをこう説明する。


「貧困は家族の伝統だ。祖先は南部の奴隷経済時代には(オーナーではなく)日雇い労働者で、次世代は小作人、その後は炭鉱夫、機械工、工場労働者になった。アメリカ人は彼らのことを、ヒルビリー(田舎者)、レッドネック(無学の白人労働者)、ホワイトトラッシュ(白いゴミ)と呼ぶ。でも、私にとって、彼らは隣人であり、友だちであり、家族である」


 つまり、「アメリカの繁栄から取り残された白人」だ。



トランプに熱狂する白人労働階級「ヒルビリー」の真実
http://www.newsweekjapan.jp/watanabe/2016/11/post-26.php

Hillbilly Elegy: A Memoir of a Family and Culture in Crisis


渡辺さんは、「2-5:分断するアメリカ トランプ-取り残された白人のヒーロー」で、ホワイトトラッシュ(白いゴミ)ともいわれる彼らに、声とプライドを与えたことが、トランプさんの躍進の理由だとしています。僕は、これはなるほどいい点をついていると唸りました。ヒルビリーの話題を日本語で最初に知ったのは、彼女からでした。


ちなみに、この本の、そして著者の渡辺さんの視点で、もう一歩ほしいなと思った部分があります。


一つは、ヒルビリーに対して渡辺さんの視点に共感がほとんどないなという点でした。たしかに困難に直面した時に怒って怒鳴って逃げる「負け犬」の姿勢、すべては自分以外が悪い、社会が悪いと考える思考に対して、嫌悪感を覚えるのはわかります。肯定できる点が確かにないし、特に中産階級として、努力してその立場を維持している人からすると、ましてや彼らの既得権益を認めると搾取されるマイノリティの立場としては(僕もアメリカにおける東アジア人というマイノリティでしたので)いいと思える点は全くありません。道徳・倫理的に、そもそも認めにくいですしね。しかしながら、たぶん政治家として、民主主義社会として最も重要なことは、the Forgotten Men and Womenの声を反映させることであり、声なき人々に声とプライドを与えることが重要な仕事のはずです。だから、この部分を無視してしまうのは、世の中に大きな反動を生んでしまうと思うのです。ドナルド・トランプさんが、大統領に選ばれたのは、まさに、この「声なき声」に全候補者の中で唯一まともに向き合った人だったからではないでしょうか。もちろん、それは、差別主義的な視点であり、悪い意味でのポピュリズムであるとしても、僕は他の候補者が、あまりに「その層」を無視しすぎたのも力を与えた原因ではないかと思えます。


やはり、彼らさえも包摂していこうとする視点を持たなければ、部族化して、一部の不満を抑圧することになるんだろうと思うのです。しかし、この部分は、難しい問題で、アメリカ先住民やアフリカンアメリカンの歴史を学べば、とても悩ましい。ある意味、白人のアメリカの既得権益の先祖たちが過去に蹂躙してきた権利を、現在に返せというようなアファーマティヴアクションは、時系列的に受益する層がずれています。いってみれば、悪いことをしたのは過去の白人のご先祖様なのに、なぜ「いま現在の俺が私」がその罰を受けてけてマイノリティに権利を奪われなければいけないのか?というのの理由が、過去そういった権利を蹂躙してきたから、というのは、いま現在に余裕がないヒルビリー、白人の中産階級以下の労働者層にしてみれば、何とも納得がいかない理由に思えます。だって「自分」が実際に得をしたわけでもないのに、生まれた時からマイノリティよりも権利が低いというのは、平等じゃなくないか?と思うわけです。本当の事実は、その人が努力していないだけなのですが、そういうことは人間は受け入れられません。恵まれている中流以上の、努力すればいくらでも上がれる白人はいいかもしれないが、そうではない層にとっては、撃ち捨てられて無視されて殴打される所業に等しい(いや、自分自身でそこは努力しろよ!とか、アフリカンアメリカンの差別はまだ根強く残っているんだ!とかは、正しいけど、言っても仕方がありません)。そして、往々にして、貧困と無教養の連鎖は、差別を求めるものなんです。自分より下を作って安心する以外に、上に脱出する「術」を学んでいないので、それ以外に方法が思いつかない。この繰り返す連鎖自身に目を向けない限り、こういう反動は常に起きてしまいます。この連鎖の構造は、そういう風に考えてはいけない!という風な倫理と道徳の「あるべき姿」を求めるのが最悪の処方箋です。現在のマスメディアなどのトランプ政権の反動は、そういう処方箋に見えて、僕は、効果がないなと思います。感情の表出は、人間の本質なので、仕方がないのですが…。


もう一つは、関連するのですが、ヒルビリー、ホワイトトラッシュ、白人の低所得者が、トランプさん支持のコアであるというのは、本当に正しいのか?という点です。というか、正しいとは思うんですが、「それだけ」なのか?というMECE(網羅)感があるかということなんです。実際、僕の周りにも、中産階級以上のかなりの人々が、本音はトランプさん支持でした。僕は、バリバリの西海岸の青い州に住んでいたにもかかわらず。しかも白人に偏らない。実際の選挙結果も、想定以上の女性がトランプさんに投票していたり、アフリカン・アメリカン投票率が全然伸びなかったりと、スィング・ステーツが見事なまでにトランプさんにふれました。トランプさんが、差別主義者で、ヒルビリーの嫌悪すべき差別思考を支持母体にしているとすれば、これ「以外」の層に伸びるのがそもそもおかしい。トランプさんへの支持は、こうしたヒルビリー的な白人中年男性労働者階級の「アメリカの繁栄から取り残された白人」だけではないのではないのか?それが、目に見えて大きな具体的な塊なのかもしれないが、その背後の本質は、何かもっと広がりがあるものなのではないか?という部分を僕は知りたいです。まぁ、ちなみに、渡辺さんがそこを無視しているというわけではなくて、ヒルビリーという層を見つけたら、分析は、その背後のより普遍的な本質を見つけ出さなければいけないのではないか?という僕自身の気づきなんですけどね。そもそもこの本は、大統領選のプロセスを追ったものなので、それは次の分析なんですけどね。


ちなみに、じゃあこれは何か?といえば、やっぱり、2016年までの世界の大きな問題点は、マサチューセッツ州出身の上院議員エリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)さんが思想的指導者であるOccupy Wall Streetなどに代表されるように、先進国における中産階級の解体の問題だと思うのです。この話はブログでずっと書いていますが、グローバル経済が進む中で、地球規模での富の平準化が起こりました。これまでは、国境で、その中で平等をしようという分配機能が働いていたのですが、グローバルな経済のリンクによって、富が、発展途上国、いわゆる「南の国々」に薄く広く広がるようになりました。いってみれば、先進国の中産階級は、これまで搾取してきた、資本主義の後発国や途上国に職と富を奪われたわけです。これは、道徳・倫理的には、正しいことです。国境の中だけで、分配機能を働かせて平等を達成しようというのは、その国境によって人類を差別しているといわれても仕方がなく、リベラリズム的には許容できません。"We are the 99%" は、それをアメリカの格差問題に話をリンクさせているところがうまいと思うのですが、アメリカ国内の問題は確かにそこはあるのですが(だからこそバーニー・サンダースさんが出てきた)、人類的には、正当性が弱い話だと僕には思いました。しかしながら、グローバリズムを否定して、というか、ナショナリズムの価値観に振れ戻してみれば、これはとても正統性、正当性がある議論になります。国境の中だけで考えろ、となるからです。そして既に、世界は、ブリクジットに代表されるように、ナショナリズムを肯定する国益追及の時代にフェイズが移りました。そのアメリカ版の意志の表れが、ドナルド・トランプ大統領だと僕は感じます。これなんとも寛容がないことなのですが、人類の経済成長は、構造的に先進国の中産階級以下を、特権階級と維持させるほどの力強さは持ちません。かなり暗鬱とするのですが、そういう時代に人類は入ったということだと覚悟すべきだな、と最近思います。


話が、少しずれてしまいましたが、僕は、渡辺さんのこの本は、2016年の大統領選を学ぶのにとても良い導入本だと思います。とても平易で読みやすく、大統領選の歴史経緯や各候補者の具体的なことを記載しているので、これを読めば、全体像がつかめます。欠点というわけではないですが、究極的には、渡辺さんはリベラルな人なので、この視点は民主党やマイノリティ、中産階級から見たバランスの良い点であるというところを意識しておけば、完璧でしょう。とても良い本です。ちなみに、日本語で共和党的というか、トランプさんをどちらかというと肯定的に書いている本では、三浦瑠璃さんの『「トランプ時代」の新世界秩序』がおすすめです。ある意味民主党的なヒラリーさん支持と逆の視点なので、両方読むと多面的に見えておもしろいです。


「トランプ時代」の新世界秩序(潮新書)





今回は、個人的には政治理念とかは抜きにして、ヒラリーさんに大統領になってほしかったと、心から思いました。それは、やっぱり女性が、人類の指導的超大国の指導者になる、という姿を見てみたかった!のです。僕はまだ40なので、僕が生きているうちに、女性のアメリカ大統領をぜひとも見てみたいです。・・・・ヒラリーさんは、それにふさわしい人だったと思います。英語がいまいちな僕でも、スピーチで何度も泣きました・・・。経済政策的には、僕は共和党の「小さな政府」志向を支持するし、トランプさんの経済政策は、基本的に、今思い返すと、ヒラリーさんよりも(といっても、実はほとんど差がない気がしますが!)良かったのですが、それでもね、、、女性の大統領になってほしかったですよ。こういうのを判官びいきというのかもしれません。



さて最後になりますが。この本のタイトルが、とても秀逸でセンスがいいのですが、このアメリカの分断を「新しく始まった南北戦争」ととらえるのは、とてもいいキャッチフレーズというか、分かりやすい例です。いろいろインスパイアされます。もちろん、そういう分断があること自体は、悲しくしんどいことなんですが。とはいえ、アメリカは分裂と統合を繰り返す振り子のような歴史なので、こういった分裂の力が激しくなってきた中で、今後どのような統合原理が働いていくかが、見ものだと思います。アメリカを見るときには、分裂への力学だけではなく、同時に統合への力学も働いているというバランスで見なければならないといったのは、鈴木透教授です。ちなみに、下記の本は、それを学ぶのにとてもいい本です。

実験国家アメリカの履歴書―社会・文化・歴史にみる統合と多元化の軌跡


ちなみに、その人を知るには、一番いいのはその人の人となりと、人生を知ることです。そんなこと、アメリカを知るためには関係ない!といってしまえばそれまでですが、僕は、彼女のお薦めの本を読んだり、記事の連載を追っているうちに、「このように考える人」は、どうやって出来上がってきたのだろう?と興味がわいて、下記の彼女の自伝というかエッセイを読んだのですが、それによって、彼女の判断がとても、信頼できるというか、楽しめるようになりました。その人自身を信頼するには、僕はこういう過去の判断の積み重ねの履歴があると、とてもいい補助線なると思うのです。このエッセイもおすすめです。


どうせなら、楽しく生きよう