2017年は、僕らの中で何かが終わったという話を、下記のラジオでしました。2017年のまとめて言う形で。ここでは丸戸史明さんの『冴えない彼女の育て方』が13巻で、終わったことをシンボルとして話しています。話していて物語の類型的には、ハーレムメイカー的な、女の子を選べないでウハウハ状態に世界が止まるという類型が終わって、ちゃんと一人を選択するのを明示的な形で示して、しかも人気を保ったまま、かつその他のヤンデレやツンデレの類型のエピソードをこれでもかと深堀していながら(ハーレムメイカー的な手法を洗練しつくしている)、それでも、ちゃんと物語を終わらせたところに、「終わった」という感慨を覚えます。
それと同じくらいに、このタイミングで、ベイビーステップが終わったのも、とても感慨を覚えます。最初期からの大ファンなので。10年間なのですね。とにもかくにも、素晴らしい物語を、勝木光先生ありがとうございました。
とはいえ、物語的に言うと、不思議な感覚があります。というのは、「ここで終わる必然性がない」と思ったからで、まぁ、ぶっちゃけ、ファンなので、もっと続いてくれてもよかったのに、と思ってしまいます。あとがきにあるように、デビスカップ編や、プロのATPツアーの日常を見てみたかった。フロリダのテニスアカデミーに属していたことからも、物語的にも仕込みがたくさんしてあって、もっともっと見れるはずだと思ったので、唐突な終わりに、ショックを隠せませんでした。しかし、同時に、逆説的ですが「いまここで終わってもおかしくない」ところまで物語が到達していることも、構造的にも伏線の残りを全く感じないところも、この作品の特徴だなぁと思うんです。なので、傑作として完成しているし、えーちゃんには、そもそもトラウマなど何かの欠落があって、勝つことや上に上ることを目標としているキャラクターではないので、彼がテニスをして食べていけること、ずっとずっとテニスにかかわっていけること(=プロになったこと)と、あえて言うのならば、それを共有できる伴侶のなっちゃんと相思相愛になった時点で、もこの物語の構造的なドラマトゥルギーは終わっているんですよね。
けれども、それは「あえて」言っている話で、スポーツ漫画として、やはりこの作品が特異なオリジナルな部分は、トラウマや欠落をベースに、強烈な上昇志向による「勝ち負け至上主義」、僕は日本的ランキング・トーナメント方式といっていますが、そうではなキャラクターの在り方を軸に成長が描けるんだ、ということを描いたことだと思うんです。僕は、ランキングトーナメント方式に勝ち登っていく・・・・典型的なのは、「甲子園を目指す」というような物語ですが、そういうものの動機の在り方を成長(勝ち上がっていく)ことに対比させて、成熟という言い方をしていましたが、もうこういった高度成長期の残骸とでもいうようなランキングトーナメント勝ち上がり形式は、one of themになってしまっている現状では、まだまだ物語の類型としては大きな府という骨太のものですが、既に中心の幹で、他を支配するという構造ではなくなっていると思うんですよね。なので、もう、わざわざ成長という言葉に対比させて成熟という意味が失われているように感じます。スポーツ漫画の物語において、このような在り方が可能なんだ、ということを、しかも高い人気と長い連続性を備えて世の中に打ち出したことは、とてもエポックメイキングなものだったと思います。
まぁそういった分析の部分ではなく、、、、、もうえーちゃんやなっちゃんに会えないのは、寂しいなーと思います。10年ずっと、気にしてきた存在ですからね。それにしても、こうして全体を見渡してみると、なっちゃんの決断と行動の速さっぷりには、驚きます。アキちゃんやマーシャなど、かなりのハイレベルのライバルたちに、一瞬たりとも、付け入るスキを与えなかったのは、本当に凄いと思うのです。これは、彼女が人生を間違わない人なんだな、というのが凄くよくわかる。そして勝木さんのヒロインに対する感覚、ヒロインとのラブコメの物語をどういう展開で考えているかが、如実にわかるものでした。なんというか、恋愛にまったく重きが置かれていない(笑)。かといって、自己実現まっしぐらで、「自分」しか見えていないおれがおれがの怪物でもない。とてもニュートラル。うーん、とても不思議な感じがします。というのは、これだけニュートラルだと、普通は動機自体がなくなってしまうんですよ。けど、えーちゃんの強い意志は、物語全体を通して、見事に描かれている。いやはや、新世代の動機の在り方だな、と思います。けど、もうこういう「動機の感覚」は、もうこういう「動機の感覚」は、普通なんでしょうね。時代が本当に、次の世代にうつって、これまでの物語類型の文脈が、かなりいったん終了した感じが、凄いします。勝木さんのキャリアはわからないのですが、フロリダのアカデミー編やなっちゃんのジョージア大学のエピソードを見ていても、アメリカやグローバルな人間関係というのが、ほんとうに、壁がなくサラっと描かれている。たぶん住んだことないと思うんですが、アメリカの日常の雰囲気とか、もうほんと、何のなんというか壁もなく、普通に描かれてて、、、、世代が違うってこういう感覚なのかーと、驚きを感じます。たぶん、アメリカに住んだことなくても、日本の日常と地続きなんですよね、グローバルに接続しているので、何かを本気でやると、特に壁もなくそこに接続されてしまう感覚。「地続き」なんですよね。ほんの20年前までは、アメリカなどの生活世界というのは、憧憬のまなざしで見る異世界のようなものだったんですよね。いまはや、日本の普通の日常と、特に違和感悪接続されている地続きなんですよね。。。いやはや、本当に、なんと時代が変わってしまったんだろうと思います。
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