『君の膵臓をたべたい』(2017 Japan) 監督 月川翔 脚本吉田智子 原作 住野よる ソウルメイトに至るには肉欲が邪魔なんだなとしみじみ

君の膵臓をたべたい DVD通常版

客観評価:★★★★4つ
(僕的主観:★★★★4つ)

映画館の予告で何度も見せられているうちに、見たくなって見に行った。正直に、日本映画のお涙頂戴系+スター起用による興行成績狙いには、がっかりすることが多いので、つられてしまったなと見たのですが、これがなかなかどうしての素晴らしい作品でした。単純に構成を中心として、脚本のまとまりがよく、伝えたいメッセージがはっきりしていて、映画として完成度が高いというのがあるのですが、そういったベースの部分だけではなく、個人的に、最後までこの二人が、Hなこととか、キスすらしないという部分が、本当に素晴らしい脚本だ、と感心しました。あそこまでギリギリの状態(笑)で、肉体関係に至らないのは、もちろんヒロインが死ぬとわかっている、お互いに未来がなくて踏み出せないという背景があるのですが、それが長く引き伸ばしのお預け状態を続けることによって、より大きな愛であろう肉欲を超えた愛に到達していることが全編から感じられて、胸が締めつけられました。エロスで引っ張っている部分が映画のコミカルさを出していて、それでいて着実にアガペーに到達していく感じです。ヒロインが死ぬとわかっている、最後の時間を過ごすという、いってみればありがちな設定の、この深さを余すところなく表現で来ていて、いい作品だなと唸りました。浜辺美波北村匠海のふたりが、時間を重ねるごとに、魂を共有していくソウルメイトになっていく様が、丹念に表現されていて伝わってくる。これが、時間がたった後の、それなりに年齢を経てしまったという「振り返り」の時間構成で、主人公が過去を思い出すというノスタルジーを感じさせる感情移入の手順を経ているのが、この作品を見事なものにした所以であろうと思う。ソウルメイトのレベルに至った愛だからこそ、長く引きずり人生を支配するというのがよくわかるからです。いい映画でした。

君の膵臓をたべたい (双葉文庫)