『13th 憲法修正第13条』 (2016) Ava DuVernay監督 systematic racismとは?


2020-0605【物語三昧 :Vol.54】Ava DuVernay監督『13th 憲法修正第13条』システマチックな差別とは?-59

評価:★★★★★星5つ
(僕的主観:★★★★★星5つ)

Twitterですすめられてみたネットフリックスのドキュメンタリー『13th 憲法修正第13条』。いま無料でYoutubeでも公開しているそう。いま見るべきドキュメンタリーです。systematic racismという言葉の意味がよくわかるので、とてもすすめ。アメリカの長きにわたる構造的な人種差別の変遷を知らないと、なぜ黒人がこれほどこるのかが、分からくなってしまう。そして、当然のことながら、日本人には、この感覚は、簡単にはわからないので、勉強がいる。いまホットなイシューなので、おすすめです。産獄複合体(Prison–industrial complex)という言葉はこれではじめて知りました。新自由主義的な、なるべく市場に任せて、公的部門を民営化していこうというスキームが進むと、軍産複合体や世界に轟く医療保険制度のおかしさや、帝国のようなビジネスシステムが形成されて、なかなかそこから脱却できるなくなるさまは、なんというかパターンなのだなぁとしみじみ思います。

petronius.hatenablog.com

こういうのは現実に起きている時に「機会を逃さず」考えたり調べたりしないと、流されていちゃうので、ちゃんとメモ。僕は、「わからないこと」をわかるようになって、それなりに極端に走らず、「結果にフォーカスした」意見というかことが考えられるための唯一の方法は、「しつこく一貫性をもって興味を風化させないこと」だと思う。その時その時の感情を喚起する文脈はあるもので、それは大事だけど、長く疑問を持つと、そういった感情の脊髄反射を超えて、考えるようになるので、そういうのが大事だと思う。だいたい感情に任せて暴走すると、いいことない。


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本日は、2020年6月13日。どんどんいろいろなものが再開する兆しが見えているが、ロサンゼルス、オレンジカウンティは、まだまだじわじわ感染率は上がり始めている。でも、経済を再開させる方向なのは、なによりも、まず仕事を再開させないと、プロテストが終わらないっていうのもあると思うんだよね。

ktla.com

下は、アメリカの映画を見て、よくわからない歴史の課題を考えているうちに、自分(日本人)にとって、アフリカンアメリカンの歴史がすっぽと実感がないんだ!と思って、ずっとこつこつ見続けている感想。とにかくその時のアドホックなイシューへの、好き嫌い、善悪の判断に流されないで、ずっとこつこつ追っていると、色々見えてくるものがあると思う。

petronius.hatenablog.com

ちなみに、Twiiterで他にも紹介してあるのが流れてきて、この辺もコツコツ観ようと思っている。

『𝐓𝐡𝐞 𝐡𝐚𝐭𝐞 𝐮 𝐠𝐢𝐯𝐞』は、もともとYA-ヤングアダルトの小説だったものを、ベースに映画化されたもの。ちょうどよかったので、家族で鑑賞。うちは12歳なのだが、子供とみるのにはちょうどいい題材だった。過去にあった現実の事件をベースに作られたものらしい。rottentomatoesのスコアもよかったので見たのだが、なかなかに素晴らしかった。ジョージ・フロイドプロテストの話を子供に説明してるのだが、黒人と白人、金持ちと貧乏人が分断している現実をどう説明するかが難しかったのだけれども、「見れば一発」で理解できるので、良かった。

The Hate U Give (2018) - Rotten Tomatoes


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www.youtube.com

評価:★★★★星4つ
(僕的主観:★★★★星4つ)

ヤングアダルトの小説の領域というのは、僕には、Hunger Gamesとか、ハンドレッド、The Darkest Minds、 パーシージャクソンとかそういうイメージだったんですが、この領域も悪くないぞ、というコメントがみつけて、確かになぁと思った。一般的なファンタジーの領域ではないけれども、過酷な現実ではあるが、アメリカの現実で、子供たちの現実なわけだから、ここの領域で物語を作ることが可能というのは大きなポイントだろうと思う。Boy in the Striped Pajamaとかそっちの方面のものかな。



アメリカを知っている人、もしくは住んだことがある人には、自明なのですが、なかなか他の国の人にわからないのは、このアーバンとサバーバンというか、都市圏の中心から放射線状に、郊外に広がっていく都市の発展における「階層の分断」。金持ちの住む場所と貧乏人が住む場所んぼ、極端なまでの分断。そして、それが人種やエスニックでも分断されているところ。「この現実」を知らないと、アメリカに住むということが、いまいちわからない。日本人の駐在員などの裕福な派遣者だと、この現実がさっぱりわからないまま、何年もたつということはよくある。安全な郊外のゲーティツドコミュニティとかに住んでいると、全然実感がないからだ。一部の大都市、ニューヨークやサンフランシスコとかに住んでいると、さっぱりわかっていないという人が出てきてもおかしくない。というか、経験的に多い気がする。永住の人は、一発でわかる現実なんだけどね。安全で教育レベルの高い地区の不動産お値段は、気が狂ったみたいに高いので、全く手が届かないから。


という「白人の住む町」と「黒人の住む町」が、物凄くクリアーに分断されているのが、普通だという現実からはじまらないと、まずアメリカの現実がわからない。


この分断が、目に見える形で描かれるの映画なので、「目に見えて」わかってよかった。が、なんとかこの貧困の連鎖から抜け出ようと、子供を白人がほとんどの私立に通わせる親の気持ちはよくわかる。しかし、その世界で、自分がいかに「違うか」を見せつけられながら生きていくことの、ほんとうの自分を出すことも、文脈を理解されることもなく育つアフリカンアメリカンの子供の気持ちも、ほんとうにやるせなかった。白人の親友だとおもっていた女の子の能天気な発言に、あまりに、黒人の置かれている「現実」に無頓着なさまは、これは傷つくよなぁ、とグッと来た。

アジア系だって、マイノリティなわけで、アジア系の多く住むトーランスでレイシストに罵倒された映像が先日でまわっていたけど、こういうことも、「このようなアメリカの現実」を背景に見ないと、うまく説明できないので、いい機会だった。



■しかしながら、ポリコレ疲れは、凄いする。これは反発が出るの、分かるわーという気もする。


しかしながら、ネットフリックスを中心に、これらのドキュメンタリーを見ていたら、物凄い疲れてきた。検索している時に下記のブログの記事に出会ったんですけど、ああ、そうだろうなー。そう感じるよなーと、しみじみ共感しました。この疲れた感じ、これがポリコレ疲れか、となんだか今の政治状況がなんでもたらされたのかが、はっきりと自分の心の中で像を結んだ気がしました。「正しさをベースに」「保守的な白人はいくら馬鹿にしてもいい存在である」って言われ続けると、それはそれで、Too muchだし、偏ってい過ぎて、気持ち的に反動が来てしまう。

なぜこんな本ばかり読んだかというと、さいきんはネットフリックスで映画ばかり見ていたのだが、アメリカ映画全体に多かれ少なかれ漂う「保守的な白人はいくら馬鹿にしてもいい存在である」「田舎は脱出すべき場所であって、まともな人間はニューヨークかカリフォルニアのどちらかに済むものだ」という価値観に耐えられなくなってきて反動的な気持ちになったというところが強い。また、『アメリカン・ファクトリー』を見て、改めて「アメリカの田舎労働者」問題に興味を抱いたというところもある(そして、『アメリカン・ファクトリー』は例外として、ネットフリックスで観れるほかのドキュメンタリー作品のラインナップは「ネットフリックス的価値観」に縛られていて多様性や自由のイメージを強調すぎるあまり逆に多様性や自由を失っている感じが強く、「こんなんばっか観ていたら洗脳されちゃうから、ちゃんと本も読んで別の考え方にも触れなきゃな」と思ったというところもある)。


davitrice.hatenadiary.jp


さて、まぁこの「正しさを過剰に言い立てて畳み込んでくる」感覚が、それへの反発が、根深く世の中にあるというのは、常に覚えておかないといけないな、と思う。『13th 憲法修正第13条』みたいな話を、見まくっていれば、それはそれで、とても偏った感覚を持ってしまうと思う。間違っているとか、真実かどうか、という以前に、現実に対して理念を押し付けるようになると、世界は破壊と暴力しかなくなるので、この辺りにバランス感覚は常にいるよなと思うのだ。


さて、ということで、中和という意味で、じゃあここにいたる「ポリコレ疲れ」的な感覚と、それをレバレッジする現在のトランプさん劇場は、なんで生まれてくるのか、というのは、やはりWhite Supremacyやリバタリアン、Antifaなど極端に振れたところが、どう生まれてきたのか、ってことを見ておかなきゃなーと思った次第。

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Alt-Right: Age of Rage

www.youtube.com


んで、これを見たんですよね。これもネットフリックスのドキュメンタリーなんだけど、いわゆる白人至上主義が今どうなっているのをみせたもの。渡辺靖さんの新書を読むと、同時に詳しくわかって面白いです。疑似科学をベースにした発想だけど、白人だけの国家を作りたいという発想は、これはこれで、よくわかる発想で、少なくともこういう感情が基幹にあって、White ethno-satateが作りたいという政治勢力が発生するのは、民族自決をベースにするのであれば、理解はできる。共感しにくいけど。

白人ナショナリズム アメリカを揺るがす「文化的反動」 (中公新書)


これは2017年のシャーロッツビルの事件のドキュメンタリーになるんだけど、とにもかくにも、極左と極右が、激しく暴力志向をしていることが見てとれる。とりわけ、右翼の側から見ると、左翼、とりわけAntifaの暴力志向は、見ててとても恐怖するのがよくわかる。もちろん、極左が暴力志向で、行動的になっていったのは、極右が、共和党が、現状の構造的な不正義、不平等を、まったく手をつけないことに対するいら立ちがそのルーツにあるわけで、「どの視点で見るか?」によって、評価が全く分断されてしまうのは、見ていてもよくよく分かった。

petronius.hatenablog.com

ちなみに、トランプ大統領が言う、Antifaをテロ組織ということや、law-and-order-strategyは、うまいなぁとしみじみ思う。

www.npr.org

TwitterとかFBなどSNSの素人というか個人の意見を見ていると、トランプ大統領がAntifaをテロ組織と言い出したあたりから、いっきに、抗議活動をひとくくりにして「法と秩序」「いま現在の安定した生」活への破壊者であるという論調が、一気に広まっている。ようは、『13th』のような話を持ち出しても、暴力的な治安紊乱の集団であって、こんなことになんの正当性もないと、一刀両断してしまう。正直ね、これは、住んでいる「普通の生活」をしている人からすれば、非常にわかる感覚です。仮にこの「普通の生活」自体が、システマチックなレイシズム一部だとしても、それをどこまでも見続けて直視したくないわけですよ。特に長く続くと、無理。それはそう。だって、仮に底上げされている中産階級だって、安楽な世界を生きているわけではないので、余裕がなければ、そんなことにかまっていられないというのが、保守的な生活者の本音んじゃないかなぁ。まさにニクソンの「法と秩序」戦略の構造そのまま。とはいえ、そこには濃度がある。その人が、どんな文化背景を持ち、どんな肌の色で、どこに住んでいるのかによって、この怒りや嫌悪感にどうシンクロするかは、凄いわかれてしまうだろう。それを、「分断」といっているんですね。

gendai.ismedia.jp


11の国のアメリカ史――分断と相克の400年(上)


なんというか、しかしながら、、、、もう少し細かくこの分断がどう生まれてきているのかを勉強しないと、分からないなぁ、と思い始めた今日この頃。というのは、ブルースタイツとレッドステイツとかだけだ大雑把すぎて、その背景がどう来たのかの細かい気質という背景が、分からない。友人と話していても、全然わからないのだけれども、、、アメリカ時の友人たちの気のおけないFBとか人生の決断をみていると、凄いルーツ?というか考え方の基盤が関係しているのはわかるんですよね、実感として。けど、そういうのがもっとわからないと、実感をもって何をアメリカに住む人が感じているのかがわからないなぁと思い始めてきました。たとえば、白人のみの国家を作りたい!というWhite Supremacyの発想は、意図はわかるんだけど、何か大ざっおぱ過ぎて、なんでそのルーツが生まれてきたのか、よくわからない。白人とひとくくりにするには、多様すぎて。アメリカのばらばら具合はもっと複雑な感じがして、いまいちわからなかったんですよね。ドナルド・トランプの大統領選出に貢献したAlt-Rightの中心人物のリチャード・スペンサー(このドキュメンタリーにでも出てくる)なんかの議論は、あまりに、白人というのを大枠で囲いすぎていて、もう少しいろいろある気がするというのを、ハンティントンとウッダードの議論を組み合わせると、分かりやすいかも、と思った。僕はSFが好きなんですが、個と全体で分ける、この人の思考は、面白そうなので読んでみようかと思った今日この頃。白人と一括にしないで、個を重要視する視点と、公共善を重要視する視点に分けて、各民族ルーツでアメリカの分裂を仕切りなおすのは、確かに面白い。

American Character: A History of the Epic Struggle Between Individual Liberty and the Common Good
American Character: A History of the Epic Struggle Between Individual Liberty and the Common Good (English Edition)


www.youtube.com


あっと、ちなみに、このジョージフロイドプロテストは、いまは銅像の撤去に話が進んでいますね。この銅像の問題、毎回何かしらの暴動とリンクするので、歴史評価に関する記憶がイシューなんだなぁ、というのがよくわかります。これって、レオポルド二世とかは、まぁ比較的わかるんだけれども、ものによっては、様々な歴史の記憶にかかわる、価値観の闘争になるわけで、それをどのように選択するかの「線引き」の問題は、かなり難しいと思う。

ただ、これってアメリカ国内だけだと思っていたんですが、ベルギーとかにめちゃ飛び火してて、とても驚きました。レオポルド二世とか、全然知らなかったので、そういう風になるのかぁ、と驚きました。いやーまだまだ勉強足りないなーと思った。まぁ、こういうのをきっかけに、いろんなことを考えて、今の時点から世界を歴史を眺めると、どう思えるのかというのは、日々掘り起こして再評価していかなきゃならないんだろうなぁと思う今日この頃です。でも、これは、やはり重要な論点ですよね。こうした「歴史の記憶」に対して、その「塗り替え」を要求するのは、現代の「作りあげられた権力の構造」を変えろということでなので、これってかなり激しい戦いだと思うんですよね。「歴史の記憶」ってのは、過去の激しい闘争があって、その事実性の上に積みあがっているので、「それを変える」にも、相当の闘争がいるはず。ここに何御ひねりもなく「暴力肯定による」どっちが激しく行動するか、を基準にしていると、際限なく秩序が壊されてしまうので、そのやり方はかなり危ないなぁと思う。ニクソンの戦略ではないけれども、「サイレントマジョリティ」というか、普通の市民、中産階級が、どこかで熱が冷めて、もう勘弁してくれというところを保守側や右翼側から利用されるのは、目に見えている構造だもの。かといって、暴力的な「行動に移す」ことwしないと、現在が全く変わらないから、現在なわけで、、、、という堂々巡りになる。これって、MLKやマルコムX、ブラックパンサーの時の構造とそっくりだよなーと思う。なかなか、この構造をうまく紐解く方法は、思いつかない。。。

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13TH | A Conversation with Oprah Winfrey and Ava DuVernay | Netflix

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