アメリカの参戦をさせたら勝ちのゲーム~ロシアのウクライナ侵攻(3)

2/24の侵攻から約三週間が過ぎた。本日は、3/17の木曜日。驚くべきことに、いまだ首都のキーフ(キエフ)は落ちていない。大方の予想と、加えてプーチン大統領自体の予想も短期決戦で勝負がついて、直ぐ首都をおさえられるだろうとの予測でこの戦争を踏み切ったであろうことが大体大方の見方として固まりつつある。しかしながら、なぜかの理由は、はっきりとしてはいないが、これが非常に遅れている。ウクライナ軍の抵抗が予想より厳しかったのか、ロシア軍が弱かったのか、このあたりは分析が進んでいる。しかしながら、首都のキーフが陥落せず、抵抗が継続されること------特に、ゼレンスキー大統領が死ぬ覚悟での不退転決意を示して首都に残り、戦うことを選択したことで、「世界(=アメリカと国際世論)を味方につける猶予時間を確保した」というのが3月17日現在の僕の理解だ。


だから注目すべきは、国際世論が、どのように「悪の侵略国ロシア&プーチン」という世論を形成して追い込んでいっているか?そのプロセスを注目してみている。これ今後の世界の戦争のやり方の基礎になることだと思う。ハイブリット戦争ですね。


ちなみに、下記のVox Mediaの動画は、ウクライナの第6代大統領ウォロディミル・ゼレンスキーさんのことがよくまとまってる。これを見ていると、めちゃくちゃ自撮り慣れすぎ。流石の元コメディアンだと思います。コメディアンというのは、アメリカでは、かなりポリティカルな発言をする仕事なのイメージがあるので、その流れからだと、政治家になるのはよくわかる。ヨーロッパでもそうなのかわからないが・・・。それにしても、表現能力が高い。悪くえば、扇動能力が高い。SNSや通信を使った情報戦が、けた違いにうまい。ヨーロッパ議会の演説で、通訳が涙ぐむとか、見たことない。あのシーンは、震撼しました。。演説で、空気をひっくり返した。この戦時に、こうした肝の据わった、宣伝にたけた大統領を持っていたことは、ウクライナにとって幸いだったのだろうと思う。もともとかなり日和見だったり、対立を煽ったりと、評価の低い大統領であったようだが、戦時に化けたといっていいでしょう。ナチスに対するイギリスのチャーチルに比較してよく語られます。

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Vox Mediaは、新興のヴァーティカルメディアで動画に強いところなので見やすいです。ちなみに、下のメディアバイアスの表はいつも参考にしているのですが、この位置づけだと「極左」の位置づけになりますね。僕もそこはかとないリベラル臭を感じます。こういう時は、FOXを同時に見るとバランスが取れます。英語しんどい、という人には、あっちゃんの動画も見事にタイミングを得ている。

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ちなみに、これを見てて、元アナウンサーにして福岡市長の高島宗一郎さんを、凄く連想した。メディアを使って、たくさんの人々に語りかけるスキルって、明らかに才能だし、訓練されたスキルでもあると思うんだよね。これからは、YouTuberのような人が、政治家になって、大統領なる日は近いなと思った。

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■白人だからシンパシーが強いのか?それとも、英語話者が多いからなのか?

ちなみに、この世界中のシンパシーを扇動する「国際世論形成」で、これまでシリアなど中東やアフリカでもっと人が死んでいるのに、なんで今回だけ?、人種差別だ!という話が多く出ている。

発言者は全員が白人であり、中には押し寄せるウクライナ難民を目の当たりにし、涙ぐみながらリポートする者もいた。人は自分と似た属性や環境にある他者に「まるで私みたい」と親近感や同情心を持つ。そうした人々の不幸が他人事に思えないだけでなく、「明日は我が身」の恐怖心も芽生えるからだ。逆に言えば、自分と「似ていない」人々の立場を思いやれない想像力の欠如の表れでもある。

 問題は、客観性を保つべきジャーナリストや政治家が我を忘れて「私たちと似た人々」「白人」「中流」「ヨーロッパ」を強調し、その比較として「シリア難民」「北アフリカ」「開発途上国」「第三世界」などを持ち出したことだ。背後には言うまでもなく無意識の強烈な人種差別がある。

僕自身は、個人的な感覚で、アメリカで毎日ニュースを見たり、こうしていろいろ情報を集めているときに、やはり「普通の人々が英語でインタヴューをガンガン受けているさま」がニュースで流れまくるのは、大きな差になる気がする。人種差別というよりも、そもそも「伝わりやすさ」「感情移入の度合い」がけた外れに違う。結局のところ人権という幻想は、西ヨーロッパや北米の形成している文明のパワーを根拠にしているので、この空間での中産階級の人々の共感をどれだけ買えるかのゲームなんだろうと僕は思う。世界の国際世論形成において、「英語を話すことで毎日の地獄を共感度合いが高く発信できる」ことは、こういった焦土作戦的な、抵抗戦には、重要なポイントになるのだろうと思う。それがないと、少なくともパワーのある、アメリカとEUにからは、無視されてしまう。そういう意味で考えたらこの戦略は、日本ではなかなか通用しない。日本で戦争中に、普通の人が英語で訴えまくるというのは、まだちょっと難しいかなぁと思う。

このインタヴューはとても興味深かった。というのは、国際世論形成において、自国のメディアをどれだけ支配できるか?というのは、北朝鮮、中国、ロシアを見ると重要なのがわかるのだが、インターネットに接続できる若い世代と、老人世代の分断が起きているんだよね。これも重要なファクターとして、覚えておかなければならないんだろうと思う。まったく同じことが、日本でも起きると思うので。構造は、どこの国も一緒だ。


■米議会への演説~米国をいかに参戦させるかのゲーム

3月16日は、朝から、米国議会でのゼレンスキー大統領のニュースばかりでした。朝起きたら、NBCをつけるんですが、ずっと特集でした。そのあとも、難民になった人々の、たくさんのインタビューなんだけど、ほとんど英語なんだよね。ウクライナの人々って、英語話す人が多いんだ。やはり、わかる言語で話されるとシンパシーが違う。国際発信力が桁違いなんだろうなと思いました。それにしても、やはり、個別の難民になって人々の話を聞いてると胸が痛すぎて、しんどい。

なんと言っても、大きな戦争は、米国をいかに参戦させるかのゲームのようなもの。第二次世界大戦から変わってないんだな、としみじみ思う。ソ連スターリン連合王国チャーチルが、ひたすらそればかり考えている日記というか資料が残っているのを見て、アメリカを動かしたら勝ちなんだという構造は、いまだ変わっていないんだなとしみじみ感じました。

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これらの演説は、ハイブリット戦争の-----新しい戦争のやり方の一つの大きな例として、人類史に残るものだと思うので、全文見ておくのをお勧めします。また、これからの、というか戦争の在り方自体が、「アメリカを引き込んだら価値」のゲームなんで、アメリカのリーダーを動かすのは、常に民意なんですよね。アメリカの文脈に、アメリカの中産階級ボリュームゾーンへいかに共感を訴えるかのゲームだと思えば、アメリカを学ぶこと、どんな文脈が言い方が、刺激になるのかを分析することは、最重要なことだと思うのです。日米同盟があっても、日本なんか属国レベルの国力差なんだから、最後は、アメリカの意思を動かすのは、アメリカの民意にいかに接続できるかってことなんです。

■日本の国会には?

そう考えると、ゼレンスキー大統領が、「真珠湾攻撃」にコメントしただけで吹きあがるのは、とても最悪の-----なんというか日本を悪い方向に追い込む最悪の動きです。「アメリカの共感を得る文脈」をいかに語れるかが重要な時に、自分たちのナルシシズムをで吹きあがることほど、危ないことはないからです。

僕はぜひとも日本国会伝絶してほしいと思っています。というのは、ヨーロッパ近代文明側、アメリカ側に立って「国際的な連帯を考えるとき」の、「分断を超えるメッセージ」の出し方のよい例になるから。僕は、どのみち日本が日米同盟から逃げられるとは思わないので、積極的にこれをできる限り対等にしていくこと(いまはまさに隷属ですからね)、いざとなったときに、日本の意思でアメリカの離反を食い止められるようなメカニズムを国に持っていることが大事だと思うんですよね。たとえば、安倍首相のアメリカの演説とか、オバマ大統領の広島訪問とか、アメリカとの絆を喚起する------多少損でも、共感と価値観を共有する存在として、ともに戦わないとだめだなとアメリカの民意を刺激する、できれば共振度の高い西ヨーロッパに対しても、そういったメッセージが、国民的な発想があるようになってほしいんですよね。

■ドイツ議会

この辺も興味深い。

アメリカの参戦をめぐる情報戦

このあたりのアメリカの参戦や共感を引き出すための、情報戦としてのメッセージの出し方を考えながらいろいろな情報を見ると、とても勉強になります。