2024年のスーパーチューズデーの結果〜既にわかっていたことだったけれども共和党候補としてのトランプさんの独走状態が固まった


🔳2024年3月5日のスーパーチューズデーの結果

15州のうち14の州で、トランプさんの勝利。基本的に70%近く表を獲得しているので、もう共和党候補としての独走状態ですね。この感触はすでに去年からシャドウプライマリー(影の予備選)である世論調査で分かっていたことなので驚きはありません。事実が確認され、何もサプライズがなかった感じです。ヘイリーさんにしても、次回に名前を売ったことはできましたし、ヴァーモント州の勝利は、そもそも無党派層も投票できるところなので、むしろ対バイデンだと、アンチトランプの票が入りやすいことを示しているという、これも従来からわかっていることの再確認。この感触を見れば、無党派層はやはり転びやすいので、バイデンVSトランプの一騎打ちでは、ほぼ互角の情勢なのが変わっていないですね。世論調査的には、この時点でトランプさんが数ポイント先行に見えますが、この時点では、選挙戦をガチでやっていて、報道されまくるのは、対抗馬の共和党トランプサイドなので、ここで優勢でないのはおかしいぐらいですから、実質差はないと思います。


Super Tuesday 2024 Primary Election Live Results: All the Republican and Democratic Races

ただし、事実として、共和党が親トランプの事実上の「トランプ党」になったことが確認されたと言えます。もともと、トランプ元大統領の支持率は昨年から力強く上がっていて、特に、彼が裁判で訴えられればられるほど、支持が固くなっていく傾向が見えます。現在経緯事件の訴追を4件受けていて、どの一つには、1月6日の議会襲撃事件のものもあります。選挙戦において、彼が告訴されて裁判を抱えるようになっている様は、とても重要で、訴追されればされるほど支持率と求心力が高まっているのが、トランプさんの選挙戦術の大きな特徴です。この現象は、トランプさんの支持の構造を示すものなので注目しておくと良いことかもしれません。刑事事件で訴追されている政治家が、堂々と選挙に出れて支持を失わないという、これまでのモラルのありかたでは考えられない現象であることも重要です。


このロジックは、党派性のある共和党支持者にとって、トランプさんは、現在の現職の大統領であって、不正を行ったバイデンに選挙結果を盗まれた悲劇のヒーローであることです。


流石に、それは陰謀論として無理がなくない?という物語ですが、このストーリーが、共和党支持者、特にトランプ支持者の中で「真実」としてガチっと強固であることが、昨年から今年の1−3月の候補者の絞り込みで、はっきりと示されました。予備選は、基本的に踏破性のある政治をする気満々の人々で行われる(だいたい各党の支持者の40%ぐらいのようです)ので、「この政治をする気がある=選挙に行く気がある共和党支持者の層」が、このストーリーを信じていて、トランプ支持でかなり強くまとまっている様が伺えます。



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🔳ヘイリーさん撤退〜候補者の絞り込みの過程から見える共和党支持層の在り方

国連大使のニッキー・ヘイリーがここで撤退を決めました。もちろん、ほぼ勝てないのは分かっていたんですが、なんらかの奇跡が起きれば!というところはあったようですが、特に何も起きませんでした。

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ここから言えるとことは、共和党候補者の絞り込みの過程で、ロン・ディサンティスやビベック・ラマスワミなど、トランプ大統領をさらに洗練して、言い換えれば、トランプのさらに右派的なポジションを設定した二人が、共和党左派的な中道路線のニッキー・ヘイリーにも、もちろんトランプさんにも、勝負にならなくて弱かったのは、どうもアメリカの有権者は、共和党のトランプさんよりさらに急進派になることは、今の所望んでいないことがわかる。

トランプさんの主張を聞いてみると、やはり


アメリカファースト


この主張は革新的かつ、まだまだ射程距離を保った、大きなマグニチュードな主張なのがわかる。バイデンさんが大統領になっても、基本的な政策はほとんど変わらなかったことからも、彼が打ち出したこの「アメリカ国民の本音路線」ともいえる方向性は、まだまだ生きている。この方向性が行き着くところまでいかない限りは、いつまでもこのトンランプ支持者の熱量というのは消えないのだろうと思う。思想的にも、これは言ってみれば「ヨーロッパに対する新世界としてのアメリカの特異性」が、旧世界のヨーロッパ的な「血と土のナショナリズム」をベースにした「普通の国」になるかどうかの重要な分岐点だと僕は思う。「血と土のナショナリズム」を全面的に認めたら、最初期の移民、白人が優先されるネイションステイツ(国民国家:この場合の国民は一義的に最初期の移民だけになる)になるわけだから。アメリカの理想やあり方の特異性を真っ向否定する新しい動きだと思う。


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まだまだ、トランプさんが打ち出した方向性は、アメリカの中で、支持を、期待を失っていないということになります。共和党予備選挙の絞り込みで、2023年からほぼ独走状態にあったトランプさんですが、そこへチャレンジをしてきた、より右のポジションが失速し、より左の中道路線のヘイリーさんも力が及びませんでした。なので共和党支持者のコアは、やはりとドナルド・トランプの立ち位置、あり方に強い支持をしているということになります。


🔳民主党の現状

民主党の現状は、ここで書きました。

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🔳分断と均衡〜2024年のアメリカの現在

このスーパーチューズデイの結果とバイデン大統領の一般教書演説を見ると、


バイデン VS トランプの前選挙戦と同じ一騎打ちになると思われます。


これを書いているのは、今回は忙しくて時間がかかってしまったので、3月16日なんですが、特に状況は変わっていません。アメリカは、大きな流れでは移民を受け入れて、人口動態が多様化していく方向性は変わらないと思います。しかし、その途中で、2024年の断面を切り取ると、分断が深まっているのははっきりしています。この時点では、トランプさんお優勢な感じが強く伝わりますが、単純にいま選挙戦をしているのがトランプさんだけで、クローズアップされているだけなので、事実としては、共和党内の支持ががっちり固まったというに過ぎません。トランプ優勢が伝えられればられるほど、反トランプの民主党側の結束が固まりますので、やはり、2020年の前回の選挙と同様に、均衡対立状態にあるのだろうと思います。この視点はとても大事。分断しているけれども、実は均衡して釣り合っているのが現在だからです。


🔳参考
さてさて、ちなみに僕は、前嶋和弘先生をアメリカを見るときの大事な指針として追っています。いやはやバランスがよくて、事実をちゃんと押さえて、素晴らしいですね。あとニコニコとかもそうですが、選挙のリアルタイム放送とか、演説のフルスピーチバージョンとかが今は、アメリカに住んでいなくてもフルで見れるのが、本当に素晴らしい時代です。メディアのバイアスとかフェイクニュースと言いますが、これほどオリジナルに一視聴者が肉薄できる時代もないと僕は思います。主要メディアの、それが日本語のNHKであれ、アルジャジーラであれ、アメリカの主要メディアであれ、抜粋されたものを聞いた後に、フルで演説を聞いたりすると、全然印象が違うことが多々あります。僕はアメリカウッチャーでありたいと自認しているので、さすがに、メディアで言っていることだけを信用しないで、フルスピーチを確認しようといつも思っていますが、こういう癖をつけると、やはり面白さが倍増しますね。メディアが、「どのように切り取りたがっている」のかが、よくわかるようになるからです。そして世間の世論の動きをどちらに向けたいのか、もしくは、報道のタイミングで世論がどちらに流れるかなどのパターンがわかるようになるので。何かを、コツコツ追うというのは、とても楽しいことです。

キャンセルカルチャー ~アメリカ、貶めあう社会~

【緊急YouTube配信】米大統領選「スーパーチューズデー」でどうなる?経済、国際情勢まで徹底分析(永濱利廣/前嶋和弘) - YouTube


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