競馬素人の中の素人による2021年ブリーダーズカップ(Breeders' Cup World Championships)観戦記


Breeders’ Cup | November 1 & 2 2024

2021年11月6日(日)に、「ブリーダーズカップ・ワールド・チャンピオンシップ(Breeders' Cup World Championships)」を見に、デルマー競馬場(Del Mar Racetrack)に行ってきました。"Where The Turf Meets The Surf."(太平洋のそばにあるから)で有名な、競馬場。ウマ娘で興味を持ったら、ちょうど家の近くでやっているのを友人に教えてもらい、いっちょ行ってみるかと言ってきました。馬券を人生で買ったことがないくらいの素人なので、ほんの思いつきでした。

サンディエゴの近くのこの辺ですね。ペトロニウスは、オレンジカウンティ在住なので、車で1時間から1時間半ぐらい。I5のこの辺は、良く渋滞するので、まぁ1時間半ですね。ちなみに、当日はやはり渋滞で、結構行くの遅れました。

ちなみに当日のパンフレット。もちまわりでカリフォルニアのデルマーでいつもやるわけじゃないからだと思うけど、駐車場が遠くて、そこからシャトルバスが出ていくので、ちょっと遠かった。なんだかおじいちゃんのお金持ちな感じの人が多かったのは、年齢層高めの場所なんだなぁと思いました。まぁ乗っている時間は10分もかからないけど。渋滞でラブズオンリユーのフィリーメアターフがギリギリみれるかどうかだったので、間に合ってよかった。ギリギリでチケットかったので、WillCall(既に代金の一部または全額を支払っている予約済みチケットを受け取ることのできる窓口のこと)で窓口受け取りだったんで、入る場所わかんねーと焦りました。

サンディエゴに近いデルマーというのは、めちゃくちゃ金持ちに住むなんで、まぁそんな気はしてなんですが、入った途端、ドレスアップした女性がめちゃくちゃいて、なんというか金持ち------!!!って感じの人ばかりしかいなくて、いやー場違い感が凄かった。社交場!!的な感じあふれてて、やばかった。あと、よくよく見れば、スペイン語やフランス語があふれてたので、必ずしもそうじゃないんだろうけれども、白人しかいない!って感じで、アジア人の風貌の自分はマイノリティ感あふれてる上に、ドレスコードあるんじゃないか?くらいの恰好の人が多かったので、なんとなく怖い感じがして仕方がありませんでした(笑)。あとで、レスター伯爵にいったら、デルマーでのブリーダーズカップならば、そういう感じもあるかもですねぇ、。と言っていました。サンタアニタ競馬場はもっと、広くてフレンドリーで家族とかで行ってもいい感じだったのですが、こっちは家族で来れる感じがしないなぁって感じでした。あ、ちなみに、マスクをしている人は皆無でした(苦笑)。

アナウンスで、シェイクモハメドという人のインタヴューをしてて!、あれこれは!とレスター伯爵にLINEさしたら(リアルタイムで日本でも見てたんで、解説してもらいながら(笑))、ゴドルフィングループの殿下!だった。アラブ首長国連邦の王族みたいですね。ゴドルフィンGodolphin Racing Inc.)ってのは、世界三大グループ、クールモアスタッド (Coolmore Stud)(アイルランド)、社台(日本)のうちの一つだそうです。習ったすぐそばから、実物を直接に見れるなんて、ラッキー!と思いましたよ。ちなみに社台グループは、ゆうきまさみ先生の名作『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』の醍醐グループのモデルだそうです。

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着いてすぐ3歳以上の牝馬が芝2200mを競うBCフィリー&メアターフをラヴズオンリーユーで勝ちました。もともとウマ娘を見たにわかが行こうと思ったのは、レスター伯が、フィリー&メアターフでラヴズオンリーユー(日本馬)が勝つ可能性あるので、行ってみたらいいですよ!ということでした。まったく知識ないもんだから、「何かに注目する軸」がないと、どうにもならないので。始まりは14時だったので、ギリギリに到着でしたが、サクッと楽勝で勝ったので、おおーーとうなりました。ちなみに、ちょっと曇りがちだったのが、だんだんい晴れていく感じの一日でした。サザンカリフォルニアは、というかサンディエゴは、位置的には沖縄くらいかなぁという感じなんですが、冬は結構肌寒い。ちょっと厚着していったので、それは正解でした。ずっと外で見ているので、、、。ClubHouseのチケットだったので、中でゆったりもできるんですが、せっかくだから真ん前で見たいじゃないですか。

そうこうしてるうちに、ダラーっと見ていたら、いきなり日本の馬が勝ったみたいで???えっ?って感じで、場内騒然で、まわりのそこかしこから、Japaneseというつぶやきが聞こえてきて、後でわかったのですが、最低人気のマルシェロレーヌがまさか勝つと思わなかったので、マジかよっ!みたいな感じだったんだと思います。よくわかんなくて信じられないから、Twitterで検索して見直して、レスター伯爵が叫んでいるので、ああ、これ日本の馬が予想外に勝ったんだなって思いました。

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2頭の日本調教馬がアメリカ・競馬の祭典で優勝
 6日(日本時間11月7日)、アメリカ・デルマー競馬場で行われたブリーダーズカップ(以下、BC)において、2頭の日本調教馬が優勝した。BCはアメリカ競馬の振興のため、1984年に創設された"競馬の祭典"である。1996年に藤沢和雄厩舎のタイキブリザードBCクラシックに挑戦して以降、昨年までで13頭が挑戦してきたが、その壁は敗れなかった。今年はライバルとなる欧州馬よりも日本馬のほうが輸送距離が短く有利な状況ということもあり、7頭が挑戦。そのうち、まず3歳以上の牝馬が芝2200mを競うBCフィリー&メアターフをラヴズオンリーユーが優勝し、続いて3歳以上の牝馬がダート1800mを競うBCディスタフでマルシュロレーヌが優勝した。

ラヴズオンリーユー、厳しい展開を克服して抜け出す
 ラヴズオンリーユーはこれまで日本、ドバイ、香港でもGIに参戦しており、日本のオークス、香港のクイーン・エリザベス2世カップを制している。3着に負けたドバイ・シーマクラシックで1着馬にクビ+クビ差と僅差で迫っており、まさに世界を股にかけて活躍してきたといえる。

 今回のBCでも人気を集めており、当然ながら楽な競馬もさせてもらえなかったが、ゴール手前で力強く追う川田騎手に応えるようにしっかりと伸び、前を捉えた。

 川田騎手は今週はもちろん、帰国後も隔離期間があるため、来週のエリザベス女王杯のレイパパレなど日本のGIレースでの騎乗機会よりブリーダーズカップへのチャレンジを選んだことになる。それだけ深い想いで臨んだ戦いであり、幼いころからの夢を叶えた瞬間でもあった。
歴史的快挙!日本調教馬2頭のブリーダーズカップ優勝 日本で紡いだ血統が世界で知られるGIを制した日(花岡貴子) - エキスパート - Yahoo!ニュース


このあと、レスター伯から、こんこんと

日本の馬がアメリカのダートで勝つことの意味とは、凄さとは!!!


を、ムチャクチャ説明してもらいました(笑)。軽く僕の理解を書いておくと、ヨーロッパの馬というのは、長距離、高低差のあるフィールドに最適化しているので、とにかく根性とスタミナが凄い。アメリカの馬は、とにかく短い距離で一気に加速してスピードとパワーに特化している。そのアメリカの馬が特化、最適化したのが、ダートであり、その単距離で、そもそも外国馬が勝つのはとても難しい。

というか、競馬というのは、その土地固有の特性あるフィールドが作られ、そこに最適化するように掛け合わせて選抜されていくものだから、超一流まで生態系が形成されて育成されたレベルでは、海外からサクッと遊びに来て勝つというのは、物凄く難しい。過去のジャパンカップなどは、楽勝でヨーロッパからきて遊び気分で賞金を荒稼ぎすることができたが、今はそもそも来ない。勝てないのを知っているからだ。言い換えれば、日本の競馬産業は、そのレベルに達しており、ある種のガラパゴス化を迎えているといえる。しかしながら、それは、本場のアメリカやヨーロッパでも同じで、超一流まで最適化したものは、それすなわちガラパゴスなのだ。しかしながら、当然そうして「最適化」した場合には、そこから多様化や分岐もまた始まる。


この文脈で考えるならば、血統のエリート中のエリートであるラヴズオンリーユーが、BCフィリー&メアターフを勝つことは、それほどおかしなことではない。これは、日本の競馬育成が、ヨーロッパやアメリカと肩を並べているということの証左であり、追いついているということの証明のようなものだ。ただし、、、それは、やはりアメリカとヨーロッパの一流馬をかけ合わせているわけだから、ぶちゃけ、同じレベルに達したコピーとも言えなくもない。もちろん、それは物凄く難しいことであって、軽々しく言えることではないにしても。


一方、マルシュロレーヌが、BCディスタフ(3歳以上の牝馬がダート1800m)で勝つということは、非常に、想定外だったはずだ。レース自体は、アメリカ最強場の布陣らしく、物凄い序盤のハイスピードの戦いになった。いや、なりすぎた。それによって、スタミナに難があるアメリカ馬の性格上、スタミナ切れしてしまったところに、スピードに何とか食らいついた(それだけでも物凄いこと)マルシェロレーヌが、スタミナで勝利したというレース展開。もともとアメリカの牙城であるスピードとパワーが試されるBCディスタフにおいて、そのアメリカ最強布陣がそろっていたこと。日本の馬では、とてもではないがそのスピード+パワーは、質的にあまり得意ではないはず。そのうえ、ぶちゃけ、マルシェロレーヌは、それほど血筋的にはよくない、いやはっきりいって極東日本のオリジナルとは言わないものの、かなりドさ回りして下から這い上がった馬だ。「それ」が勝つ!ということの意味は!。ようは、現在の日本の競馬産業の質が、エリートの馬を育てるのも、地方ドさ回り(笑)から血統だけで勝負しないでも、世界に通用するレベルにあるってことなんだろうと思う。そういう意味で、この2つの種類が違うタイプの馬が勝ったことは、本当に喜ばしい。そして、凄いことなんだ。

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それ以来、四半世紀が過ぎても、ここ十数年で凱旋門賞は手の届きそうなところまで来ている感触はあっても、ブリーダーズカップは依然として遠いままであった。たとえ日本馬が凱旋門賞を勝つことがあっても、ブリーダーズカップだけは高い壁として立ちはだかるのだろうと思っていた。
特にダートで行われる、ブリーダーズカップクラシックとディスタフ、スプリントあたりは、アメリカの馬たちに敵うわけがないと感じていた。それはパンパンの高速馬場で行われる日本の競馬場で海外の馬が勝てなくなっているのと同じで、極めて特殊な能力が問われるレースであるからだ。
しかもブリーダーズカップには全米から強豪が集まり、レベルの高いレースになるだけに、適性と能力が突出していなければ勝てないのだ。

そういう意味で、ラヴズオンリーユーによるBCフィリー&メアーターフの勝利も素晴らしいものだが、僕たちが、いや全世界の競馬ファンが驚かされたのは、マルシュロレーヌがBCディスタフを勝ったことである。1984年から設立された同レースの勝ち馬を振り返ってみると、1991年のダンススマートリーがカナダ馬として勝利した以外は、36頭の勝ち馬はすべてアメリカ馬。
この事実だけを見ても、今年、日本馬のマルシュロレーヌの勝利がどれだけUpset(大番狂わせ)であったか伝わるだろう。

それにしても、恐ろしいほどのハイペースで進み、序盤で前に行った馬たちは総崩れとなるという、いかにもアメリカ競馬らしいレースであった。このペースを押っ付けることなく追走し、早めに先頭に立って押し切ったのだから、文句なしの完勝である。マルシュロレーヌはアメリカ競馬で問われる、スピードとスタミナ、そして根性を世界トップクラスのレベルで兼備していることを証明したのだ。

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最後に、それぞれのレースに出走した各馬の種牡馬の名前を眺めるだけで、このブリーダーズカップの多様性が分かる。ラヴズオンリーユーが勝ったBCフィリー&メア―ターフには同じ父を持つ馬は1頭もいないし(ディープインパクトでさえ種牡馬の1頭なのである)、マルシュロレーヌが勝利したBCディスタフは、カーリン産駒が2頭いるのみでそれ以外は別々の種牡馬を父にしている。その他のレースも同じような状況である。日本の重賞レースで走る馬たちの父の顔ぶれと比べてみて、日本の競馬ファンそれぞれが多様性とは何かを考えてみてもらいたい。僕の目にはブリーダーズカップの姿は健全に見える。

ブリーダーズカップとは、まさに生産者たちのために創設されたレース。彼らが思い思いの配合で強い馬をつくり、それらを持ち寄って競わせる──まさに、競馬の原点を象徴している一戦と言えよう。そして多様性を体現するブリーダーズカップだからこそ、マルシュロレーヌが勝つことを受け入れられたとも考えられるのではないだろうか。

僕たちは、この歴史的勝利におごることなく、もっと幅広い視野で、多様なサラブレッドを生産していかければ、次は二度とないかもしれない。

『ウマ娘 プリティーダービー』から広がる競走馬の世界の物語へ

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評価:★★★★★星5つ
(僕的主観:★★★★★星5つ)

■事実とフィクションの組み合わせの演出〜サイレンススズカ(Silence Suzuka)とトウカイテイオー(Tokai Teio)の史実と演出の関係に注目

親友のLDさんからサイレンススズカというドラマがあって、そのドラマをベースに、物語をつくっているので、その事実を知っていると涙なしには見れないと勧められたところから、興味を持ちました。というのは、艦これもそうなんですが、競走馬を萌え擬人化したキャラクターで描く、このタイプの物語類型というかフォーマットは、それぞれのキャラクターの持つ「過去のドラマトゥルギー」をどう利用して描くかが、重要だからなんです。しかしながら、むしろ結構好きな、戦闘機や撃墜王や戦艦などの物語を、名前からさかのぼって戦史を調べてみようという意欲は起きなかったんで、なぜ今回に限ってみてみようという気になったかは、偶然としか言いようがないですねぇ。ただし、Twitterを見ていて、ウマ娘は、名前の使用を馬主さん許可を得て、二次創作でエロを描かないという、かなり思い切ったやり方をしていたので、何となく心に残っていたんですよね。それで娘と一緒に、見たらハマりました。温泉回とかでも、エロシーンも入浴シーンも全く描かないのが潔くて、むしろよかったです。さて、実は、そうはいっても、最初の数話、あんまりおもしろくなかったんです(笑)。僕は、あんまり萌え擬人化って得意じゃないんですよね。絵としてはかわいいけれども、そういう女の子たちが、たくさん出てくると、なんかマーケティングされているようであんまり気持ちよくない。


けど、まずハマったのは、「駆けっこ」の魅力が詰まっている、ことです。


走るシーン。単純に走るだけじゃないですか、競走って。でも、この追い抜くとか逃げ切るとか、走るのって、めちゃくちゃなんか血沸き肉躍るんですよね。この時点では、サイレンススズカも、スペシャルウィークも、シンボリルドルフも全く知らないので、フーンと思いながら見ていたうえに、萌えにもあまりヒットしないので、ほとんど興味なかったはずなんですよね。けど、この「駆けっこ」の競争の、抜く抜かれるは、見ていてシンプルに心惹かれる。いま思い返すと、まさに競馬の本質って、これんじゃないかなって思う。これを大観客の万雷の拍手と歓声の中駆け抜けることって、そりゃ見ていて、心が沸き立つよ。こればかりはぜひと見てほしいとしか言いようがない。これを見てから、僕は、リアルの競馬の映像が面白くてたまらなくなりました。二期中心ですが、感想は物語三昧チャンネルのほうに挙げています。

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さて、僕ごとき素人が解説するまでもなく、ウマ娘を見ている人とかは、馬の背景知識はあると思うので、僕のアウトプットのして覚えるための自己満足なんでしょうが、まぁ自分日記で書いてみます。サイレントスズカの特徴って、


1)大逃げ

2)天皇賞(秋)においてレース中に左手根骨粉砕骨折を発症、予後不良と診断され安楽死


ていうことで、この「事実」をベースに、何を描くかってことなんですよね。これって脚本家がどこに焦点を合わせるかってことなんですが、LDさんが感動にむせびながら解説していたように、絶頂期で死んでしまったサイレンススズカが、その後、走っている姿が見れるだけで、泣くという言葉が象徴しているように、この悲劇のストーリーをどう料理するかで、たぶん直接この悲劇を見ていた人たちが伝説として語り継ぐポイントは、もしサイレンススズカが生きていたら!というイフになっているんですね。もちろん悲劇に仕立ててもよかったんですが、まぁ第一期の最初で、そんな苦しいことを描いても仕方がないので、必然的にこうなるかなって思うんですが・・・・レスター伯爵いわく、本当はサイレンススズカって、凄い気性が荒い馬だったそうで、このドラマの構成とキャラクターのおしとやかな感じをみると、悲劇のヒロインとして描いているのがわかるんですよね。

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そこに元気いっぱいなアイマスの春香的な、なんというか万人受けしそうな、それでいて特徴がない(笑)スペシャルウィークという新人のウマ娘が、サイレンススズカにあこがれて「彼女と一緒に走りたい戦いたい!」と憧憬を持つところにキャラクターの主人公の動機を設定しているところに、脚本家素晴らしいと思いました。というのは、このお気楽な、天真爛漫な頑張り屋さんのスペシャルウィークが、強いあこがれを持てば持つほど、「それは実はかなわない夢であるというはかなさ」が見ている側につはどんどん蓄積されていくわけですから。この後の二期のトウカイテイオーメジロマックィーンのライバル関係を設定するのも、僕はこの脚本見事だなぁと思います。というのは、僕のような競馬に興味がない素人には、まずはディープインパクトセクレタリアトのような物語の重みをもった大スターをシンボルとして軸にして伝えないと、誰が何だか、何が何だか分からなくなってしまうからです。しかしそれを、一人にしないであえてひねってライバル関係に設定しているのは、僕はうまいと思いました。というのは、日常萌え系の女の子たちがきゃははうふふとイチャイチャするアニメの類型・フォーマットをベースにしながら、この関係性が、選抜と競争という過酷な世界で試される構造になっているからです。なので、見ていて感情移入すればするほど、この「関係性」が、物凄く過酷な方向へ突入していくことを、ドラマの展開上を見ざるを得ない。そして、それほど過酷で悲劇であるからこそ、逆にどうでもいいような日常の関係性が、美しく際立つという構造になっている。僕は二期が好きで好きで、たまらないのですが、エンディングテーマでトウカイテイオーメジロマックィーンの声優さんが歌う「運命のいじわる」というところで、いつも涙してしまうのですが、それは、どれほど普通に仲良く生きていても、サラブレッドの競走馬の世界というのは、過酷な生と死をかけた競争の世界の残酷さに常に直面しているからです。やはり懸命に生きている人は美しい。


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サイレンススズカスペシャルウィークの関係性に「追いかける憧憬」を設定して単純に日常をコツコツ、それこそ日常萌え系で積み上げるだけで、それが悲劇への序章となって、ドラマトゥルギーを大幅に押し上げる並みとなるわけです。どんなに思っても、あこがれても、頑張っても、、、、サイレンススズカは、大舞台の天皇賞で足を折って、死んでしまうのですよ。もうかなわないことを観客は知っているわけです。そして、最終のシーン。サイレンススズカが骨折してしまうシーンは、僕は演出がうまいとうなりました。というのは、通常のドラマを盛り上げるような劇的な演出をわざわざ「しない」んですよね。それはもう、不思議なくらい淡々と、描いている。これは本当によくわかっている演出だとうなりました。だって、すでに起きてしまった伝説の悲劇を見ている側は前提で知っているから、ことさら演出をぐどくする必要がないんですよ。


まとめると、ウマ娘は、このタイプのシナリオの作りかたを洗練しているなぁと思いました。


■一緒に見る快楽〜解説者がいると全然理解が違う


重要なことなのですが、僕は競馬が好きではないです。うーん、という言う言い方は、よくないなぁ、、、というか、僕はギャンブルがダメなんです。僕は子供の頃から賭け事が大嫌いで、パチンコとか見るのも嫌でした。今でも、あまり変わらないのです。ラスベガスに何十回遊びに行っているんだ?というくらいいっていますが、一度もかけ事をしたことがありません。だから射幸心を煽るようなゲームは、本当にダメです。だから、「競馬の楽しみ方」というのも、基本よくわからない人です。


その僕が、競馬の醍醐味、歴史の面白みを、感じれるというのは、本当に嬉しい。趣味がクロスするもののも面白さってここにある。


もともとは、物語類型の話で、LDさんがおすすめしてくれたから見たものでした。けど、二期を見ているときに、友人のレスター伯爵や哲学さんが、リアルタイムで見ているあいだLINEで付き合ってくれて、いまこの場面見ている!と書くと、その解説を(笑)どんどん入れてくれて、なんか物凄い楽しいリアルタイムセッションでした。


二期を見ているときに、レスター伯爵から、


ペトロニウスさんはサイレンススズカ状態ですね」


といわれたのが、始まりでした。最初意味が分からなかったんですが、これは、サイレンススズカアメリカに挑戦していて、このトウカイテイオーメジロマックィーンのストーリでは、アメリカから見ているという設定なんですね。しかも、たしかに、僕は、サンタアニタデルマー競馬場の近くに住んでいます!。途中でわかって、おお!そういうことかとつながりました。サンタアニタ競馬場にはいったことがあったんですが、デルマー競馬場(Del Mar Racetrack)はなかったんですよ。そしたら、ちょうど11月にブリーダーズカップがあるって、伯爵が興奮しているんですよ。最初は名前すら知りませんでした。でも、なんというかこの辺は、「新しいものを知るきっかけ」にいいよなって思って、無理がない限りは、いろんなところに直接に見に行くのは大事だと思っていて。物語は、「頭の中だけで体験している」と、途中で全然面白くなくなってしまいます。なんというか、新しい知識や体験を自分の中に蓄積しないと、面白さが摩耗していってしまうようなんですね。これは人生を楽しむうえでも真理だと僕は思っていて、ある程度、新しい知識や体験を継続的に積み重ねていないと、もともと「自分が楽しいと感じていた軸」みたいなものも失われて、飽きてしまいます。だから、せっかくレスター伯爵がリアルタイムに「二期を見るの付き合ってくれている」幸運の出会いを、無駄にしてはいけない!と、そこでブリーダーズカップを見に行くことを宣言しました。僕はこういう「偶然の出会いやきっかけ」は、物語の種だと思っていて、そういうのは大事にしようと思っています。何かアクションを起こして、人との関係性が結ばれていると、なんというか「何かを為すことに重みが生まれる」と僕は思っています。えっとね、僕は残りの生涯を物語を楽しもうと決断してかなりしぼっています(人生の優先順位をだいぶ絞っている)が、それでも選択肢はたくさんあるんですよね。なにも、アニメではなくても、競馬ではなくても、何でもいいじゃないですか。でもね、人には、何かしらの「理由」が必要ようだと僕はおもっています。そして、レスター伯爵くらい競馬の好きな人が、リアルタイムで付き合ってくれるような幸運ってなかなかないんですよね。僕は、アメリカで、なるべくいろんなものを見ようと思って、たとえば建国史を知らないといけないし、建国の父を知らないといけないな!と思ったら、ジョージワシントンの家であるマウントバーノンに旅行に行ったりします。実際に「その目で見る体験」をすると、その後の理解が飛躍的に上がったりするからです。僕は自分の頭の良さには自信がないので、こうやって体験を差し挟んで、理解度や感受を上げようといつも努力しています。

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2021ブリーダーズカップに日本馬が予備登録 JRA

https://www.jra.go.jp/news/202110/102807.html?fbclid=IwAR2zNoY1lcmod0s9wi4y4i14UEyYjvBMNkFldv6ZfuPKlrT3i247_TcFsbgwww.breederscup.com


ちなみに、これで課題というか宿題ができましたので、せっかく行くのに調べたりしていかないともったいないので、レスター伯爵に電話して、何を見ればいいというのを講義してもらったら、さまざまなことがわかって、、、これは!と次のステージに行くことになります。

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ちなみに、レスター伯爵はガチの歴史学の学者さんなので、近代スポーツ史は、ガチです(笑)。こうやって、世界は広がっていく。新しい知識というのは、こうやって広がっていくもんで、ありがたいなぁとしみじみ思いました。ちなみに、そこで何か映画化小説でいいのがないかと紹介されたのは、シービスケットなんですが、それは配信で見れなかったので、ディズニー+ですぐ見れたこの『セクレタリアト』を見ることになります。もちろん、せっかくアメリカのブリーダーズカップを見に行くから、アメリカの伝説や情報を知らないと話にならないので、アメリカ縛りで絞っていきます。なんでも調べものってのは無限に考えていると、ダメなので、なんか理由を作って縛りを作っていくと、スムーズに進みます。

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この辺を聞いていただければ、ちゃんと勉強してそれなりに、素人よりは通な見方をしているのがわかるでしょう?(笑)。これが趣味になるまで広がるかわかりませんが、少なくとも、これで機会があれば、アメリカの三冠である、ケンタッキーダービープリークネスステークスメリーランド州)、ベルモントステークスニューヨーク州)などは、頭の片隅に入りましたし、雑談チャットでアメリカ人に振ると、この辺は常識に近いものみたいで、少なくとも名前は聞いたことあるって感じで、話が広がります。広がると、もっと知りたくなるし、いろいろ教えてもらえます。こういうの最高。


ということで、明日(今日は、2021/10/5)にデルマー競馬場で、ラヴズオンリーユー(Loves Only You)を見に行ってきます!。


ゆうきまさみ先生の傑作『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』を読み返す。

競馬を知るに一番いい物語は何か?と言ったら、やはり『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』ですね、と言われました。それで、全巻再度読み直してました。なかなか興味深かったのは、これって荒川弘さんの『銀の匙』と動機の構造は全く同じなんですよね。親子関係も似ている。勉強ばかりやっていたけど、「何のためにやっているか?」がわからなくて、家でうまくいかなくなって、北海道や農家や牧場に逃げ込んでいくことで、自分の人生の目標や大事な人を見つけていくという流れ。僕自身は、この少年のビルドゥングスロマン(成長物語)として読み込んでいて、好きで何度も何度も読み返しているのですが、競馬の血統の選抜の物語という新しい知識がわかったところで読み返すと、かなり違った流れを感じられて、名作は本当に重層的で凄いとうなりました。これはパールバックの『大地』とか、家族の年代記になっているところ、世代を超えて受け継がれていく思いがあるところが好きだったのですが、それには、この競馬の「世代を重ねることで見えてくるもの」が重なっているからなんですよね。いやはや、一粒で何度もおいしい、傑作は違うなぁとしみじみ思います。


また、最近実感するのですが、僕自身の世界観や地理感の「感覚」が、物凄い変わっているんですね。僕は小学校まで北海道で育ったので、僕の中に、日本というと東京と北海道なんですよね。自分の人生の実感がそこにある。けど、もうアメリカにも住んで7年ぐらいになるので、なんというか、本当にアメリカの景色とか地理とかが「普通」になって来たんです。一番下の娘に至っては、人生の9割はアメリカなわけで、子供たちにとってもほとんど故郷みたいなもんなんです。そうすると、なんというか、競馬という物語を見ても、体感感覚では、昔は牧場というと、北海道しか思い浮かばなかったんですよね。でも、最近だとカリフォルニアでも内陸とか、オレゴンとかあっちのほうも、あーそういう生活あるよなー的な感じがうっすらと感じる。だって行ったことあるし、知り合いもいるから。多分身体的な地理感覚がアップデートされているんだろうと思うんですが、そうするとね、「競馬という産業、文化にかかわる人間の営み」みたいな重層的なイメージが、日本に限定されなくなってきた感じがして、、、そういう感覚で、府中の競馬場とかデルマー競馬場とか、そういうのが並列に「感じる」んですよ。うまくいえないんですが・・・・なんかねぇ、凄い世界が多様性にあふれているというか、、、、こんなに世界って広く深いんだ見たいな圧倒的な立体感のある感覚が来るんですよ、、、、胸に。これ間違いなく、「さまざまな異郷の地に住んだことがある人」が「様々な異郷の地の歴史や生活や人間関係も体感して」いるときに起きる感覚だと思うんですよね。この圧倒的な世界の複雑さ、地理的な広さの実感って、、、物語歴史を読んで学んで(縦軸)、それとガンガン旅をしたり生活をして(横軸)、時間と空間の重層性を「実感している」人にしか訪れない感覚だと僕は思う。イヤーこんな感覚が、新しい世界が、訪れるなんて、、、と最近感心している。もっと旅したい、いろんなところに行きたいし、暮らしたいし、もっと本も映画も楽しみたい。。。。凄くそう思う今日この頃です。

じゃじゃ馬グルーミン★UP!(1) (少年サンデーコミックス)

■おすすめ

ちなみに、レスター伯爵にお勉強として、おすすめされた本当がこれ。あと、いろいろテキトーに動画を見てたやつを。

競馬の世界史 サラブレッド誕生から21世紀の凱旋門賞まで (中公新書)

NumberPLUS「Number競馬ノンフィクション傑作選 名馬堂々。」 (Sports Graphic Number PLUS(スポーツ・グラフィック ナンバー プラス)) (文春e-book)

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『Turning Point: 9/11 and the War on Terror』2021 Brian Knappenberger監督 対テロ戦争20年を網羅し「いま」見るべきドキュメンタリー

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■歴史となった911からのイラン・アフガニスタン戦争

バイデン大統領は2021年8月30日、アフガニスタンからの軍の撤退が完了したと宣言した。その後、一月くらいは持つだろうと予測していて様ですが、アフガニスタンではイスラム主義組織タリバンが全土をほぼ掌握してしまい、20年間で2兆ドルを超えるコストをかけた「アメリカ史上、最も長い戦争」が終わりました。『Turning Point: 9/11 and the War on Terror』は、ネットフリックスのドキュメンタリーシリーズ。アメリカの対テロ戦争の20年間を網羅して、まさに「いま」のタイミングに見るべきドキュメンタリー。素晴らしかった。いま與那覇潤さんの『平成史―昨日の世界のすべて』を読んでいて、平成がついに歴史になったんだな、という感慨とともに、だからこそ、全体像を「歴史」として俯瞰して見れるポジションが獲得できつつあるという感慨を抱いています。同じように、2001年9月11日から始まるイラク戦争アフガニスタン戦争と続く「同時代のアメリカ」というものが、生々しすぎて、しかも僕は2013年からは米国に移住しているので、なかなかバランスよく見れていなかったのですが、このドキュメンタリーと2020年のバイデンVSトランプの大統領選挙で、一つの区切りというか、まとまりを眺めることができるようになった気がします。こういう「区切り」を設けて、過去の帰結をまとめなおすことは、時々何かのきっかけをもとに行うと、世界が、同時代に生きながらちゃんと罪があっていく感じがするので、僕は好きです。アフガニスタン撤退は、ある意味、米国が中国との新冷戦体制にシフトしていく契機でもあり、新時代の幕開けでもあるので、いったいなぜこうなったかのまとめをしておくことは、とても価値があるタイミングだと思います。僕は、ミドルスクールの子供たちと、家族で見ました。米国が、今どこにいるのかの一つの起点として、これは見ておくべきだと思ったからです。

■『Turning Point: 9/11 and the War on Terror』が示す、対テロ戦の時代の米国の問題点~戦略目標を明確にできず、大統領に白紙委任を与えてしまったこと

911の3日後の9月14日、上下院はテロへの対抗措置としてブッシュ大統領武力行使を認める決議(AUMF)案を採択した。上下院の議員531人のうち、1人だけAUMFに反対票を投じます。バーバラ・リー下院議員(カリフォルニア州選出・民主党)です。彼女は言います。


 「議会は大統領に対し、武力行使白紙委任を渡してしまった」


これ、このドキュメンタリーの軸となることです。というのは、もし映像を見て、1. The System Was Blinking Red、2. A Place of Dangerを見れば、911のテロのすさまじさに、言葉を失うと思います。その臨場感。僕は見ているだけで涙が止まりませんでした。正直言って、これだけの出来事が起こってしまっては、この深い悲しみ、怒り、その激しい感情が「どこかに拳を振り下ろさなければ終わるはずがない」というのは、見ていれば「実感として」感じられてしまいます。ここで理性的に、ソ連の侵略を退けるためにアメリカがCIAを投入して、ゲリラン戦術と暴力を教え込んでいき、それによって911よりはるかに多い数の死者が生まれたなどの怨念を比較したりは、人はしません。とにかく、アメリカを攻撃し、アメリカ人を殺戮した!責任を取らせなければ、ならないというのは、自明のどうしようもなかったことだと思います。世界は、そんなに甘くはないので、ここで平和を叫んでも、むしろアメリカが舐められてもっとひどいテロが起きるだけでしょう。だから、アフガニスタンに、テロリストを倒し、捕まえに行くために侵攻するということ自体は、もうここまでのことが起きてしまったのだから、止めることはできなかったでしょう。

ブッシュJr大統領が、America Is Under Attackと閣僚によって、エレメンタリースクールの子供たちと話しているときに、伝えられた時の表情が、凄まじかった。あんなクリティカルな場面が、映像に残っているんだと感心する。

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とにかく見てみればわかります。これで感情移入できなかったら、その人は、よほどアメリカが嫌いとか、前提がある人だと思います。


しかし、では、最も重要な問いは、この「起きてしまった出来事」の「落としどころの絵をどう描くか?」なんだろうと思います。しかし、もちろん、そんな冷静なことはできません。自国民数千人が本土で殺されて、アイコニックなビルが崩壊させられたら、そりゃそうでしょう。なので、さまざまな情報は集まっていたのですが、国は復讐で熱狂していきます。ここで重要なのは、この熱狂の中、問われたことは何か?でした。バーバラ・リー下院議員は、ただ一人、「テロへの対抗措置としてブッシュ大統領武力行使を認める決議(AUMF)案」を拒否します。実は、彼女自身、戦争に反対という言わけではありません。ここで重要なのは、この「どこまで武力行使を認めるか?」という範囲について「白紙委任」になっていることを彼女は問題視しました。

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アメリカの憲法の、そして建国の父であるワシントンの重要な意思は、絶対権力を握る暴君を、独裁者を作り出さないことです。それは、イギリス帝国という国家の暴力と、暴君ジョージ3世を倒して、共和国を生み出したアメリカの柱です。だから彼女は、「白紙委任」ではなくて、「対象を限定」すべきだとしたのでした。この時点で、アメリカは、ほぼアルカイダ、ウサマビンラディンが犯行であることをつかんでいました。ならば、「そこ」だけに限定すればよい、という話です。アメリカの憲法意志、建国の父たちが意識していた権力行使の抑制の問題点を、アメリカは熱狂によって忘れ去ってしまったのでした。


そして、、、、白紙委任にしてしまった。そして、ブッシュ政権は、全世界に対して活動領域を広げていくことになります。その結果、どれほどの広大な、選別しているとは思えない広い範囲での、ブッシュ政権での「対テロ戦祖という名の軍事行動」が、発動されていきます。これラストシーンで、その国の数が明かされると、戦慄します。


そして、アフガニスタン戦争が、あれだけの大失敗に終わった理由はなぜか?


ほぼ最初の段階から、その理由はわかっていたとこのドキュメンタリーは主張しているように思えます。最初から繰り返し現場の将軍、司令官、だけでなく前線にいた兵士たちの意見は同じです。米軍が、一体に何をしたいのかが、よくわからない。


一言でいえば、戦略目標の不在です。


アルカイダを倒すのか?、アフガニスタンの新国家を建国するのか?、それすら、行ったり来たりしていて、よくわからない中で、兵士たちは戦い続けます。なぜ、アフガニスタンで、米軍が、だらだらしているように見えるのか?。簡単です。アフガニスタン以外に戦線が拡大しすぎていて、アフガニスタンに米軍の兵士が集中していないからなんです。一番わけわからないのは、アフガニスタンが中途半端になったのは、米軍がイラク戦争を始めたからでした。このあたりは、イラク戦争に4度従軍したクリス・カイルが著した自伝『ネイビー・シールズ最強の狙撃手』( American Sniper: The Autobiography of the Most Lethal Sniper in U.S. Military History)の映画化『アメリカン・スナイパー』(2014)や『バイス』(Vice)2018年の第43代ジョージ・W・ブッシュの下で副大統領を務めたディック・チェイニーを描いた映画、『グアンタナモ、僕達が見た真実』などを見ると当時の雰囲気が伝わってくるのでお勧めです。ここで映画かれているのは、白紙委任を与えられた権力が、なんだかんだ理由をつけて、権力を濫用していくさまがよく見えてきます。効果的に暴力を使うのではなく、党派性、私利私欲に歪んでいくのは、「白紙委任」されているからですし、「白紙委任」されているので戦略目標をクリアーにして評価される必要がないんです。

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少なくともこれを見ると、明らかにアメリカが「対テロ戦争の根本戦略」を歪めて間違えているのがわかる。対テロ戦争の根本問題は、「アフガニスタンをどうするか?」であって、イラクは明らかに何の関係もない。これに労力を割かれたのが、戦略不在になった大きな要因になっています。


僕は、いまの2021年から振り返ると、カーター、ブッシュジュニアクリントンオバマ vs トランプのような構図で描かれているアメリカのメディアの報道の仕方や、民主党支持者やリベラルサイドの態度って、物凄く理解できない。少なくとも第43代アメリカ合衆国大統領ジョージ・W・ブッシュのほうが、アメリカ合衆国第45代大統領ドナルド・ジョン・トランプより、よほどめちゃくちゃだよって思うもの。


しかし、、、、つくづくアメリカの建国の父と憲法は偉大だな、と感心しました。本当に権力の本質をよくわかっている。この憲法意志に、ちゃんと殉ずる議員が、挙国一致ではなくいるということが、アメリカのすごみだなと思います。


■本質を探ることなしに「世界の警察」はなしえない

ちなみに、歴史をさかのぼると、帝国の墓場(Graveyard of Empires)、アフガニスタン問題が、ソ連による侵略からはじまって、ねじれてねじれていくのが、よくわかる。このあたりは話すと長くなりすぎるので、僕のおすすめは、下記。ロシアの軍事・安全保障政策を専門とする東京大学先端科学技術研究センター特任助教小泉悠の意見。この人は、ロシアの軍事戦略の視点から、この地域をロシアがどのように考えているのかを説明している部分があって、おおーとうなりました。素晴らしいのでお勧めです。ロシアという大国の戦略を、長く深く追っておいて、それをわかりやすい言葉で平易に網羅的に説明できる喜住さんらしい素晴らしい視点でした。

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あとここではほとんど出てこないけれども、僕はやはり、そもそも問題の根本原因は、パキスタンとしか思えない。パキスタンが、アフガン影響力維持のために「タリバンなど過激派、原理主義の神学校を建てまくっている」のが、結局のところアフガニスタンのユースバルジに火をつけているようにしか思えない。「問題の根本は、パキスタン」だと思う。なのに、パキスタンへの対応がほとん描かれない、表に出ないのも、米国の戦略が不在なのがよくわかる。だって、これってイスラム教におけるユースバルジを利用したパキスタンの隣国へ影響力維持戦略だもの。だから、ビンラディンパキスタンに隠れていたわけでしょうに。


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中田のあっちゃんの動画は、僕は網羅的に全体像を追うのには、素晴らしい導入だといつも思っています。ある意味、歴史を知っている人でないと、この複雑な背景は、まったく意味不明になるので、まずはこういった解説動画をざっと見てから、いろいろ細かいところに入るのは、ありな時事問題の理解の仕方だと思っています。


ちなみに、このドキュメンタリーは、イラク戦争が題材ではないのですが、ブッシュ政権が、なぜ石油に固執したのか、、、そしてその結果どうなったのかは、このあたりのシェールが巣のその後の展開を見ると、世界の動き方のすさまじさに、ため息が出ます。2012年ガス・ヴァン・サント監督『プロミスト・ランド』(Promised Land)がよいです。高橋 和夫さんの『イランvsトランプ』がおすすめ。

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■同時代をまとめなおす物語群

こういう機会なので、いくつかの物語をお勧め。『生きのびるために』( The Breadwinner)2017は、ノラ・トゥーミー監督による、タリバン政権下の少女の物語です。また、このあと、ウサマビンラディンオバマ政権の時代に暗殺するわけですが、それを描いた2012年のキャサリン・ビグロー監督の『ゼロ・ダーク・サーティ』(Zero Dark Thirty)などもおすすめです。

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