白熱した議論の中で、チェンジオブペースを

今日は、尊敬する先輩が海外の会社の取締役で赴任することになったので、その最後の日に飲みに行った。常々聞いたみたいことがあったので、質問。彼はもう、とびっきり優秀で物凄い人なんだが、とりわけ仕事をしていて、感心したのが、会議、ちいさな打ち合わせ、そしてハードな交渉の現場、あらゆる場面で、


えっ、うそ!


と思うような、劇的なロジックや交渉の流れを変換する力だ。僕が抽象的には、チェンジオブペースをと呼んでいるものなのだが、これが見事なレベルで、、、、何が見事かというと、打率が高いのだ。僕も、この手のことは意識しているので、じっくり考えたり、後から分析するとできないわけではない。が、彼の凄いところは、何の準備もしていない中で、ほとんど9割近い確率で、この現象が起きることだ。なによりも、ハードで、もう追い詰められてどうしようもない、打開策がない、これ以上デッドロックだ、と思う交渉時にこそ、あざやかな切り返しで、議論の流れを劇的に変えてしまう。


ずっと、ずーっと尊敬していたのだが、今回は機会があったので、出会って8年目にして初めて質問させていただいた。ずっと考えていた疑問の一つだった。・・・・質問するのに8年かかった(笑)。何度も飲みに行っているのに、いえなかった。どうすれば、そのようなことができるようになるのか?、と。マインドや精神的なものが、、、つまり心のアティチュードが重要なのはわかるので、それは意味がないので聞きたくありません、そこではなくテクニカルな方法論で教えてください、と聞いた。

彼曰く、

「すまん、ロジカルにまとめていないので伝達できない」


「が、、、答えになっているかどうかわからないのだが、あえて言葉に直してみると、たとえば、ある交渉をしたとする、その後、そのことを、謙虚に、全力で反芻し返して、これだったら、どうだろう?あれだったらどうだろう?と可能性を、限りなく追及することを、自分に課すことだ。小さな会議でも、大きな交渉でも、その後、議事録を書くときなどに、ここでこういう可能性がなかったか?、こういう表現で雰囲気を変えられなかったか、交渉のロジスティクス的に、誰を、どのような配置で、どんな順番で言葉を重ねるべきだったか?と、自問自答を、限界の限りまで繰り返す。日常的に徹底的に、すべて自分が間違っている前提で、より正しい方法があったはずだ、と思いこんで、追求し続ける。おれは、それを自分課している。」


「それと、とりわけ交渉時に熱くのめり込んでいる時に、相手に脅されて恐怖している時に、有利で優越感を感じている時に、、、、感情に自分が支配されているとこそ、第三者的に、頭の中から幽体離脱するように、上にのぼり、そこから俯瞰して、より高みから見たら、今の状況って、どんなふうにみえるだろう?というふうに、熱くなる中にも、常に俯瞰した視点を同時並行で持ているように訓練する。」



「まだ言葉によくなっていないので、この程度しか言えない。すまない、答えになっているかはわからないが、俺は、こう意識している・・・」



というのが、その先輩の答えだった、


一つ、とても大きな勉強になった。


そして最後に、

「ビジネスはすべて結果だ。相手が行動を変えて、相手動いて、動かすことができたことが、すなわち正しいことだ。それをわすれるな。」


といわれた。頑張ろう、と思った。







追記


なぜ、この質問したかったか?といえば、シゴト、交渉、あらゆる場で、僕は「水が低きに流れるような二元論に落ち込む」と表現していることなのだが、てんぱっていて、準備がない中で、もしくは相手が激しく怒り狂ってしゃべる時に、


「この製品を値下げをしてくれ!」


という要求が来たとする。


すると、まず120%間違いなく普通の人、、、いや、相当優秀な人でも、必ず



「下げるか、下げないか?」



と考える。



実はもうこれは負けなのだ。だって、相手の議論の文脈にに乗ってしまっているから。そもそも、いや今日は価格の話ではありません、と切り返すような第三の選択肢を提示する力量が必要なのだ。


ここで、文章で書くと、わかりやすい、簡単に聞こえる。


が、物凄い優秀だと思われている人でも、そもそも選択肢の二元論から逸脱したことを、「相手に納得させて、動かしてしまう」レベルでコミュニケーションできる力は、100人いたら99人は持っていないものだ。これは、激しい交渉をしたことがある人ならば、絶対にわかるはずだ。そもそも相手の話をひっくり返すことは、強い嫌悪を不愉快さを相手にひきおこすのが常で、技術や戦略、、、、何よりも相手の深い納得なしにこんなことを何回か続けたら、裏から刺されて、業界や社内でいられなくなるように消されるのがオチだ。交渉は正攻法だけではない。僕らは、全権担当者やオーナーではないのだ。僕らはサラリーマンだから。この微妙な深奥がわからない奴は、たぶん生涯、交渉における第三のポイントを一瞬にして見つけ出す、表へ掬い出すということの深さを知らないままだろう。正しければいいという話では全然ないからだ。


本当に世界を変える、戦略を語れる、偉くなれる人は、そもそもそういった「水が低きに流れるような二元論に落ち込む」というナチュラルなものを超えて、全く違う選択肢を提示して、しかも相手に納得させて巻き込んでしまうような、コミュニケーションを、できてしまうものなのだ。

オレも、そんなふうになりたい、そう思った。