『少年式少女』 和田依子著

少年式少女(2)<完> (アフタヌーンKC)

評価:★★☆2つ半
(僕的主観:★★★3つ)3つ


女の子の体に、死んじゃった男の子の魂が憑依してしまうという話。よくある話で、最終的に物語としても特に目新しい展開もなく、ストーリーとしてはいま一つ殻を破れないものだった。


けれども、この手の話は、僕は1巻の可能性だけで、次は買わないんだけど、どうしても続きが気になって買ってしまった。買うって結構大きい行為だと思うんだよね。物語の骨格や展開は、雑誌媒体の対象マーケット層や編集の意向も含めて、いろいろあるので、作家主義的になんでもその作家がいったことというわけではないんだろうけれども、その作品自体の固有の魅力というのは、作者自身のものだといつも思う。そういう意味では、正直言って、とても面白かったんだと思う。


何がと言えば、キャラクター造形がとても、素直に感情移入しやすいう用に、丁寧に描かれていたからだと思う。この「丁寧」って曲者で、ただ単にだらだら書けばいいものじゃあないんだろうと思うんだなー。何なのかよくわからないけれども、、、それが漫画の技巧的テクニックのせいなのか、セリフとかの問題なのか、よくわからないんだけど、、、、なにかが、ぐっとキャラクターに魅力を与えるようなんだよなー。これってなんなんだろう?。この話って、女の子の体に憑依しちゃった男の子の「独白」だけでほとんど完結していて、関係性すらほとんど存在しないわけだから、関係性の物語ですらない。こういうものの魅力をしゃべるのって難しい、、、このへんのもやもやは、LD先生やルイさんに聞けばわかるものなのだろうか・・・・。


これって凄く深刻な物語で、展開の種はたくさんあったとは思うんだけれども、、、、普通こういう設定ならば、萌えというか商業的に考えれば、もっとHなシーンを追加して、とかそういう方向に持っていくべきなんだろうけれども、特にそういう意思も垣間見れない。かといって、逆方向に、精神世界の問題で、この男の子と女の子の葛藤をディープに追い詰めていくというようなサイコスリラー的に持っていく「もっと深刻」でもよかったのかもしれない・・・けれども、どっちも選択肢なかったんだよね。それ故に、とっても丁寧に「男の子」が、女の子の心と体を受け止めて、その人生をちゃんと生きて行くという、地に足のついた話になってしまった。



めちゃめちゃ無邪気な少年が、遊びに行った男の先生の家で収納に隠されて元彼女の服やコンドームを見て、「女」を意識しちゃうシーンとかは、なんというか、上手いなーと思った。ここはこのシーンが一番印象的だったんで取り上げているんだけれども、基本的な萌え的な視線やHな視線は全くゼロなんだよね。たしかに女性が書いたって感じが凄くするよ。編集者とかは、「この設定」でなぜそっちを誘導しないのか?って結構ビックリだよ。アフタヌーン、、、僕は媒体がよくわからないので、どの雑誌だろう?。なんか、このマイナーのにおい漂う、変に媚びない作風は、そんなに凄く売れるとは思えないけど、いいなーと思う。



この人、新人なのか?それとも、ベテランなのか・・・新人だとしたら、育てようとしているのかなー。いい題材に当たれば、面白いものが書けそうな気がする。これだけマイナーなテーマで、微妙に魅力をは立つんだから。今度はもっとトリッキーなテーマで書いてみると、この人の幅の広さが見えるかもしれないなぁ…。☆は少ないんだけど、なんか言葉に表せない感じがあって、思わず書いてしまった。・・・まぁなんかマイナスのようにも見えるけど、ちゃんとお金出して買ったので、これくらいは許してもらえるよね?。。