スミソニアン・インスティチュートの航空宇宙博物館にいってきました。ここの凄さは、アメリカにおける航空産業の歴史が、そのまま世界の航空産業の歴史そのものだというのをわからせてくれる。黎明期のレシプロから最新のジェットの旅客機、戦闘機はては、人工衛星からアポロ計画、スペーシャトルまで全てが一度に揃えられているこの網羅感はアメリカでないとあり得ないな、と感心します。
一日で見切れる量ではないのですが、一時間半の博物館のキュレーターらしき人のガイドツアーに参加して、質問しまくっていました(苦笑)。ここはライト・ブラザーズの最初の飛行機の部屋。この時は、まだまだ、本当に黎明期で、手作り感が満載。
ライト兄弟の次にきたもの。ここが僕には非常に興味深かったのですが、アメリア・イアハートやリンドバーグなど職業冒険家と、軍と、それのスポンサーになる各種航空産業メーカーの黎明期で、ライト兄弟の時代で、これはつ使えそうだ!ということになって、凄まじい開発競争が始まるのですが、個人の夢やまだまだ差別のあった女性や黒人などのマイノリティーのチャレンジの場でもあったりして、なんというか、方向性が定まっていないカオスな雰囲気でありながら、新しい産業の勃興で莫大な金が動いていたりと、なんかフロンティアとか冒険がある感じなんですよね。ここは、プライヴェートセクターが充実していないとありえないので、日本では、ないんですよね。
http://www.nasm.si.edu/exhibitions/gal208/pioneers/
The 1920s and 1930s were formative decades in aviation on many levels. Flight technology rapidly advanced, military and civilian aviation grew tremendously, record-setting and racing captured headlines and public interest, and African Americans began to breach the social barriers of flight. The interwar period also witnessed the birth of modern rocketry.
The Barron Hilton Pioneers of Flight Gallery highlights this exciting era with an eclectic collection of aircraft and other objects. A common theme unites them. All are connected with people who pushed the existing technological or social limits of flight during the early decades of the 20th century. Each aircraft or exhibit represents an unprecedented feat, a barrier overcome, a pioneering step.
This website provides brief highlights from four main sections of the exhibition on display at the National Mall Building in Washington, DC. A full online exhibition is yet to come.
『アメリア(Amelia)』 監督ミラ・ナーイル
どこまでかっこよすぎる『プリティーウーマン』なんだよっていうラブロマンスをやっちゃったリチャード・ギアを見よ!
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20100211/p4
ちなみに、博物館を見るということの作法には、それぞれの個別の物語をよく知っている、それを網羅して「つなげていくこと」の知的スリラーを楽しむというものがあります。だから、ある一部の個別の物語をよく知っていると、それがどのような時系列的な直列のつながりをもつのか?とか、同時代的に誰が、どのようなことがあったのかを見せてもらえると、びびび!!!と繋がってくるのです。この博物学的視点の面白さ、19世紀的な大英博物館的の面白さは、下記の記事や本とかどうぞ。特に、中沢新一の『森のバロック』は、日本が生んだ博物学の巨人南方熊楠の半生を追っていて、彼の内面にフォーカスされた、素晴らしい本で、この本を読むと、博物学的な視点という物の内奥がどういうものかが、よくわかると僕は思っています。
『銀河市民 Citizen of The Garaxy』ロバート・A・ハインライン ハインラインの入門書にしてその本質1
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20080418/p1
ハインラインの描く「アメリカ的なるもの」〜ハインラインの本質2/大英博物館にみる博物学的視点
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20080419/p1
WW1やWW2のエースパイロット。そして、第一次、第二次世界大戦のエースパイロットや飛行機の展示。第二次世界大戦の部屋では、何人もの日本人のエースパイロットや服装の紹介もあり、ましてや零戦いわゆるアメリカ側の呼称ではジークの実物もありました。なんというか、ここの領域は、やっぱりドイツと日本のパイロットの存在感が大きいな、と思いました。ちなみに、その隣の海軍機の歴史は、もうひたすら、第二次世界大戦の太平洋戦線の、第日本帝国海軍との戦史ばっかりでしたね。まぁ、人類の歴史上で航空母艦である機動空母艦隊同士の大激突なんて、日本とアメリカしかやったことがないので、当たり前ですけどね。けど、戦史が、全てアメリカ側からの視点での説明なので、それはめっちゃおもしろかったです。まぁ、海の戦争の歴史において、大日本帝国海軍(JIN)の存在の輝きは、世界の軍事歴史上、屈指のものですから当然でしょうね。
不屈の鉄十字エース―撃墜王エーリッヒ・ハルトマンの半生 (学研M文庫)
大空のサムライ(上) 死闘の果てに悔いなし (講談社プラスアルファ文庫)
最後のは愛嬌?(笑)。でも、冗談じゃありません。まじめなのから萌えまで、広範な分厚い教養があってこそ、感じる面白さは何倍にも跳ね上がるものなんです。知的な面白さというのはそう思う物。オリジナルな教養ベースがあって初めて萌や二次創作的な見立てな面白さが理解でき、そこをベースにまた新しい世界観が作られ、新しいオリジナルなものへと繋がっていく。物事って、そういうものだと思います。
そんで宇宙船。びっくりしたのですが、飛行機と宇宙って、僕には別カテゴリーのイメージがあったんですが、アメリカ人にとっては連続性のある同じものみたいです。この博物館の凄さは、こういった宇宙開発の冒険のような黎明期から巨大産業になるところまで全部網羅してあるところで、旅客機もそのままジャンボとかおいてあるんですよね。ちなみに、上の写真は、マイクロソフトの共同創設者のポールアレンがお金を出して、Xプライズの賞をとった、民間による世界最初の宇宙船ですね。Xプライズ財団の内容や映像を見ると、燃えるものがあります!。
http://www.xprize.org/prize-development/exploration
こういうのを見ると、アメリカが、イアハートやリンドバーグの頃の、産業や政府の部分と、私企業や人々の個人の夢の部分が、渾然一体となったカオスでありフロンティアを動かしていく全方位的な社会運動を非常に大切に思っていること、また、それを意識すれば、それなりに再現できてしまうような、巨大な力を持った国であることが良くわかります。この宇宙時代に、これほど大規模化した産業の時代に、まだカオスのフロンティアや個人の夢の香りが残っているなんて、本当にすげぇ、国です。このへんは、資源がない日本でなんかは考えられない規模の営みです。
The $10 million Ansari X PRIZE was a competition to build a spacecraft capable of carrying three people to 100 kilometers above the earth's surface twice within two weeks. The $10 million purse was won by famed aerospace designer Burt Rutan and his company, Scaled Composite. Together, 26 teams from seven nations spent more than $100 million to win the prize. Since SpaceShipOne won the prize, there has been more than $1.5 billion dollars in public and private expenditure in support of the private spaceflight industry.