ディズニーの変化からアメリカの変化の文脈を読み取る

まず価値観の多様化、あるいは価値相対主義というものが、アメリカのカルチャーを大きく変えたということがあります。要因としては、911からイラク戦争へという時代の中で、アメリカ人自身が善悪二元論の限界にようやく気づいたこと、更に善悪二元論では飽き足らない団塊二世が社会の中核を担い始めたということ、グローバリズムや移民によってヨーロッパやアジアのカルチャーの影響が濃くなったことなどが挙げられるでしょう。

中略

そうした中で、いつの間にかアメリカの子供社会において『ドラえもん』の世界観は、何の違和感もないことになりました。また団塊二世より更に若い層を含む、今のアメリカの親たちも、往年の「善悪二元論」によるクラシックな子供向けコンテンツでは飽きたらず、様々な「価値相対主義」や「多元的な価値観」を持った表現を子供に与えたがるようになっています。


ドラえもん』のアメリカ進出に30年かかった理由とは?
2014年05月22日(木)冷泉彰彦
http://www.newsweekjapan.jp/reizei/2014/05/30.php

アメリカにいると、その強烈なプリンセスプッシュに驚きます。


日本のセーラームーン以降(といっていいのかな?)の多様性、価値相対主義善悪二元論の超克の文脈になれた、洗練された日本市場、アジア市場からすると、


正統性の軸、型


という主軸を壊さないという強さはまだまだ健在です。


しかし、これが、最近ディズニーでは、じわじわ多様性の側にふれています。

お姫様のキャラクターの変化で考えると、男性との結婚、王子様に選ばれることを最終ゴールにする型から姉妹の愛を選んだFrozenもそうです。それに、BigHero6の主題も戦隊ものの善悪二元論をベースにしながらそれへの超克を強く意識している解決方法・・・・復讐でも悪を倒すのでもなく、自分の兄を殺された憎しみを超えて、人を癒すことを選ぶ、、、単純に主題だけではなく、日系人初のディズニーの主人公であったり、日本や日本のサブカルチャーへのあふれんばかりの非常に深く細かいところまでの愛情自体が、マイノリティへーの深い愛情と多様性への深いコミットを感じさせます。


アメリカやディズニーの文脈を見る時に、この一度も国が滅びるレベルで戦争に負けたことがない歴史を継続しているがゆえの、善悪二元論への、正義のへの、正当な主軸への強いこだわりと信仰が軸にありながら、それに対する強烈な振れ幅を持つことを考えないと、いろいろなことの思考がスタックしてしまうと思うのです。なので、この視点は、とても重要だなーと思う今日この頃。冷泉さんのこの記事と文脈は、とても面白いです。僕はこれまで日本のサブカルチャー善悪二元論の解体方向をずっと語っていて、それと同じ文脈でハリウッド映画などの同様の展開を指摘してきましたが、世界的に共通の主題展開がある半面、その支える文脈は個々のローカルの地域と歴史によって全く違ってしまいます。けれど、その違いこそが面白いと思う今日この頃です。日本はとにかく深くコミットしているので、時系列もディティールもよくよくわかるのですが、アメリカのこともそうやってコツコツ追っていけると、本当に面白いだろうと感じている今日この頃です。

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それにしても、『ベイマックス』とんでもない物凄い傑作です。完成度の高さも凄まじいですが、ぼくはずっとボロボロ泣いていました。それに、制作者たちの日本への溢れすぎだろう!(笑)という感じの愛情は、なんか凄いうれしかったです。もちろん非常にアメリカ的な理解ではあるんですが、もう見ればわかるとんでもないレベルでの深い愛情を感じるので、いやーこれは見ていて気持ちいいっすよねー。これ見ないともったいない凄い作品です。

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