『インフェルノ (Inferno)』 米国2016 Ronald Howard監督 世界が滅びるかもしれない!と煽るよりは、滅びた後の方を見たいと思ってしまうのはSF好きだからなのだろうか?

評価:★★★☆3つ半
(僕的主観:★★★3つ)

ダンブラウンさんは、大ファンなんですが、映像化は、どれもいまいちなんですよねぇ。小説の方が、ダントツに面白い。けれども、たぶん、小説は複雑すぎて、脚本がすっきりできないんだろうと思うんですよね。でも、様々な美術や建築、図像、歴史などの知識が効いてくる作品なので、小説を読んで(しかも繰り返しに耐える系の小説なので!)、それで映像を見るというのを、何度もしていると、イタリアに旅行に行くのがすごく楽しくなるのが請け合いです。『ダ・ヴィンチ・コード』からのロン・ハワード監督の映画は、なんというか、観光のためのガイドブック的に使うと凄いいんじゃないかな、といつも思っています。今回は、トルコもですね!。


さて、この作品を一言でいうと、世界を滅ぼそうとする人と組織を、ロバート・ラングドントム・ハンクス)が必死に守ろうとする話!です。僕は、殺人的な伝染性のウィルスの頒布によって世界を滅ぼそうとするという筋書きは、ずっとテリーギリアム監督の『12モンキーズ』を連想していました。脚本の構造としては同じで、世界を滅ぼそうとする、もしくは滅ぼすのが「なぜどうやって起きた・るのか?」というのの推理とそれを追うサスペンスが主軸です。


『12モンキーズ』の方は、既に滅びて世界が変わってしまったその最底辺で暮らす主人公(ブルース・ウィルス)が、過去になぜ世界が滅びたのか?といいう問いを追い続けるという設定になっています。僕はこっちの方が好きでした。それは、滅びてしまった最底辺で地下の収容所みたいなところで暮らす主人公が、美しい汚染されていない世界を夢見る思いが、ルイ・アームストロングのWhat a Wonderful Worldの音楽に乗っているて、その憧憬がいまでもすごく記憶に残っているからです。滅びた世界で、みじめな人生を暮らす主人公のせつない、自由や美しい地上に憧れる「感情」はとても情緒があって感情移入できたからです。確かテレビシリーズもあったからみたいなぁ。

12モンキーズ(Blu-ray Disc)

それに比べると、今の世界を守るのに、ラングドンがなぜ守るの?という動機が薄い気がするんですよね。もちろん世界を守るのに理由はいらないのですが(笑)、最初から記憶を失って事件に次々巻き込まれる体質のラングドンは、もうシリーズ4作目にもなると、慣れ切っちゃって、なんだかなースーパーマンなんだなーと様式美になってしまって、いまいち入れませんでした。そういう意味では、ラングドンに観客が感情移入するには、記憶喪失は弱かったのかもしれないですね。観客は、世界を救っちゃうようなヒーローなラングドンだってことを知っているのですから。


相手役のシエナブルックスフェリシティ・ジョーンズ)は、2016年だとこの少し後に公開したローグワンの主人公ですね。ネタバレですが、正直さほど衝撃がなかったので、はっきりいちゃうと彼女が犯人の一人なわけですが、その動機が全然わかりませんでしたよ。ようは、世界を滅ぼそうとしている男にはまったちゃった?のか、逆に滅ぼせるような男を本気にさせたのか?という毒婦役なわけですが、うーん、小説だともう少し時間を取って彼女の生い立ちや性格を丁寧に描写しているのかな?と思うんですが、いまいち映画の中だけだと、感情移入できませんでした。ダン・ブラウンの物語は、こんな機関が、組織が本当にあったのか!というようなほとんど物語のような存在だけど、本当にある!というガイドブックみたいなところが面白かったのですが、こういう陰謀論的なところまで踏み込んでいくと、話がSF的になってしまい、SFを連想していしまって、そうであれば良質なSFを求めてしまって、そこまで行く途中半端だなと思ってしまいました。僕としては、『天使と悪魔』もセルンとかが出てきて、おおっと思ったのですが、物語の出来と、ダウンブラウンの魅力が一番あふれているのは、『デセプション・ポイント』でしたねぇ。


■映画版『ダ・ヴィンチ・コード』 米国的ハリウッド的なメディアミックス展開が悪い形で①  
http://ameblo.jp/petronius/entry-10012642166.html

■小説版『ダ・ヴィンチ・コード』 大きな物語を壊す動機②
http://ameblo.jp/petronius/entry-10012794086.html

■『デセプション・ポイント』 ダンブラウン著 カブリエールアッシュのかわいさにノックダウン(笑)
http://ameblo.jp/petronius/entry-10019565603.html

■ダンブラウン著:『天使と悪魔』の紹介〜科学と宗教の対立
http://ameblo.jp/petronius/entry-10014299779.html


過去の記事、、、、2006年くらいにけっこう詳細に書いているんだ、自分、、、と驚いたのですが、読み返して、ロン・ハワード監督の映画化を酷評している。やっぱり見る目変わってないなぁ、と思いました。すっかり書いたことを忘れていたけど、今、感じたことと全く同じですねぇ。


デセプション・ポイント(上)<デセプション・ポイント> (角川文庫)


結論は、ダンブラウンさんは、小説の方が圧倒的に面白い!です。これも映画を見に行く前に小説を読めば良かった。。。と後悔。


インフェルノ(角川文庫 上中下合本版)