2018年米国中間選挙を目前にメモ

冷泉彰彦
プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
中間選挙を目前に、トランプが分断を煽る理由
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2018/11/post-1043.php
2018年11月01日(木)15時30分

本日は、2018年11月1日。昨日のハロウィンの熱気が冷めやらないお祭り気分ですが、もうすぐ来週の火曜日にの11/6に米国2018年中間選挙があります。トランプ大統領に関しては、なんだかとても不思議な気がしていて、倫理的、道徳的には、共和党支持者を含めてもだいぶ、それは受け入れられないだろうという暗黙の雰囲気があるにもかかわらず、どこかで彼の暗黙の支持があるような感じ。

テイラー・スウィフトの「民主党議員支持発言」から学ぶマーケティング【連載】幻想と創造の大国、アメリカ(7)

https://finders.me/articles.php?id=457&fbclid=IwAR0h0W-rbfHL8oJkemdDXOCo-wsceO8zfAp6FIhXAgWzVOdlJSfoqLQUUz8

「これまでは自分の政治的見解について公の場で述べることをためらってきました。けれども、自分の人生や過去2年間に世界で起こった出来事のおかげで、それについてずいぶん異なる見解になりました。これまでもそうでしたが、これからも私は、この国のすべての人が持つに値する人権を守り、そのために戦う候補に投票します。私はLGBTQの権利のための戦いを信じますし、性的指向ジェンダーに基づいた差別はいかなるものでも不当であると信じます。この国に現在でも存在する有色人種(people of color)への構造的な人種差別は恐ろしく、吐き気がするものであり、しかも蔓延していると信じます。
肌の色、ジェンダー、愛する相手に関係なくすべてのアメリカ人の尊厳ために戦えない人に私は票を投じることはできません。テネシー州上院議員に立候補しているマーシャ・ブラックバーンという女性がいます。これまでもそうですし、これからも女性候補に投票したいと思っている私ですが、マーシャ・ブラックバーンを支持することはできません。彼女のこれまでの議会での投票の歴史には、ぞっとします。彼女は、女性が男性と同一賃金を得ることに反対の投票をしました。ドメスティック・バイオレンスやストーキング、デートレイプから女性を守るための「女性に対する暴力反対法」の再認可に反対の票を投じました。(中略)これらは、私にとっての「テネシー州の価値観」ではありません。私は、上院議員はフィル・ブレデセン、下院議員はジム・クーパーに投票します(どちらも民主党)。どうか、お願いですから、あなたの州で立候補している議員について学び、あなたの価値観に近いことを代弁してくれる候補に投票してください。すべての問題について100%意見が一致する候補や党を見つけられることはないかもしれません。それでも投票はしなければいけないのです。
賢明で、思慮深く、冷静な多くの人が(大統領選後の)過去2年の間に18歳になり、票を投じる権利と(それによって影響を与えることができる)特権を得ました。でも、その前に選挙登録をする必要があります。手続きは簡単ですが、テネシー州では10月9日がその最終日です。Vote.orgに行ってその情報を得ましょう。ハッピー投票!」

https://www.instagram.com/p/BopoXpYnCes/?utm_source=ig_embed


テイラー・スウィフトが10/7にこの投稿をして、確かのその前日に、ブレット・カバノーが最高裁判事の承認を受けた日だったので、タイミングがすごかった。10代での性的暴行を受けたという女性が公聴会で証言したが、共和党が支配する上院が僅差で可決。これに反するような流れを作った、、、と思っていたのですが・・・・。

<オンラインのヘイトスピーチを規制すればするほど、ネオナチが自由でオルタナティブSNSに集まっていくジレンマ>
ペンシルベニア州ピッツバーグユダヤ教礼拝所(シナゴーグ)を襲撃し、11人を殺害した容疑者が利用していたことで一躍注目されたソーシャルメディアGABは、その後サービス停止に追い込まれたが、ネット上でのヘイト規制の強化は必要であるとしても、白人至上主義をアンダーグラウンド化させ、先鋭化させやすくもするとみられる。
反ユダヤ主義の蔓延
アメリカのユダヤ人団体、名誉毀損防止同盟(ADL)は10月27日のシナゴーグ銃撃事件を、ユダヤ人を標的としたヘイトクライムとしては「アメリカ史上最悪」と表現した。
ユダヤ人に対するヘイトクライムは増加傾向にあり、ADLによると、2017年には脅迫、器物破損、襲撃などが1986件と前年度比で60パーセントの増加し、この増加幅は過去最大だった。
欧米世界における反ユダヤ主義は中世にまで遡り、19世紀以降さらに激しくなったが、最近では数千人の移民希望者が中米ホンジュラスからアメリカへ陸路で北上するなか、「(ユダヤ人の著名な投資家で大富豪)ジョージ・ソロス氏がアメリカを破滅させるためにこの大移動を企んだ」という陰謀論も広まっている。また、トランプ大統領の周辺に娘婿クシュナー氏をはじめ多くのユダヤ人がいることも、(キリスト教徒であることを前提とする)白人至上主義者の反感を招いている。

根深い反ユダヤ主義を背景に、ピッツバーグシナゴーグを襲撃したロバート・バウアーズ容疑者は発砲の直前、「全てのユダヤ人は死ぬべきだ」と叫んだと報じられている。
ユダヤ教礼拝所銃撃】アンダーグラウンド化する白人至上主義──ネット規制の限界
2018年10月31日(水)13時00分
塗り替わる世界秩序
六辻彰二
https://www.newsweekjapan.jp/mutsuji/2018/10/post-46.php


先週27日に、ペンシルベニア州ピッツバーグユダヤ教礼拝所で11人が殺害された乱射事件も、そもそも、アメリカの背後にある反ユダヤのどす黒い部分に火をつけたのは、何かの問題を差別や移民や陰謀論にすり替えて攻撃しても「いいんだ!」というようなトランプ政権下の雰囲気が背景にあるのは誰が見てもそうだと思うんですが、現状トランプ政権は、全く大統領の責任ではない、といった感じで、中間選挙を睨んで無視している感じがします。(ちなみに、その前のトランプさんの熱狂的な支持者が爆弾を反トランプの人々に送り付けた事件では、国民に和解を!とか、自分伊関係あることのようにふるまっていたのと好対照です)戦術的にはわかるのですが、それが許されるのが、とても不思議。むしろ、中南米からの移民キャラバンの問題をガンガン取り上げて、South Boarderに兵士を送るなどのパフォーマンスで、むしろ共和党トランプ支持者に追い風になるような雰囲気が満ちていて、とても不思議。

大統領は、自分は「ユダヤ系にはフレンドリー」だとしていますが、例えばNY市内では昨年の大統領就任以降、ユダヤ系に対するヘイトクライムが増加したということが社会問題になっています。今回の残虐な乱射事件も「ユダヤ系の投資家、ジョージ・ソロスが移民キャラバンを支援している」というネット上の噂を信じて、勝手にヘイト感情を募らせた結果でしたから、百歩譲って大統領に「反ユダヤ」の意図はないにしても、大統領の言動が暴力を誘発したという批判は否定できません。
中間選挙を目前に、トランプが分断を煽る理由
2018年11月01日(木)15時30分
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2018/11/post-1043.php

中米からアメリカに向かっている移民キャラバンの入国を阻止するべく、米軍は最大で1万4000人の部隊を、メキシコと接する南部国境に配備する計画だ。うち7000人は、万が一に備えて24時間で待機する予備役部隊。
移民キャラバンの入国は決して許さないと警告してきたドナルド・トランプ米大統領の指示で、米国防総省は10月29日、キャラバンの到着に先駆けて最大で5200人の部隊を国境に派遣すると発表した。今回派遣されるのは「実際に武装」した部隊で、すでに国境に配備されている州兵2000人に合流すれば、合計で7200人となる。これは、イスラム国(IS)掃討作戦でイラクとシリアに投入された米軍兵士の数に匹敵する。
中米からの移民キャラバンを迎え撃つ?米軍部隊が国境へ
U.S. Has Force of Up to 14,000 Ready for Border Action

2018年10月30日(火)16時16分
ジェームズ・ラポルタ、トム・オコーナー
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/10/post-11204.php

冷泉彰彦さんの上記の指摘などが恒例ですが、なんとなーく、いままではポリティカルコレクトネス的に言ってはいけないという意識があったものが、そこのリミッターを外してもいいんだ、というような雰囲気が蔓延している気がしてなりません。デモクラット的には、そりゃ悪い影響だろうといえるのでしょうが、これが長期的に人類の未来にどういう影響を与えるのかは、わからない。ちなみに先進国共通の現象のように思える。ブレクジットと安倍首相の長期政権も構造は似ている気がします。なので、これははっきりとした「傾向」なので、これをイデオロギーでいい悪いと言い切ってしまうと、冷静な分析というか予測を妨げる気がします。ただ、アメリカに住む居住者として、こういう移民は意識的な感覚は、怖いなとは思う。もちろん、自分が住んでいるサザンカリフォルニアと、その他の地域では全然事情が違うんだろうと思うけれども。サザンカリフォルニアは、そもそもヒスパニックの色が濃いし、デモクラットの牙城のリベラル色が強いし、なによりも、経済が好調な西海岸だからね。ここでは、多様性がとても肯定的な感じがするし、こういう場所と、打ち捨てられたラストベルトやバイブルベルト、内陸部と比較しても全く違う場所で同じとは言えないと思うので。「アメリカは!」とか主語をひとまとめにする人は、本当に信じられない。そういう出羽守にはならず、具体的でミクロの視点で、そこに住む人の主観にシンパシーのあるような世界の長め型ができる人でありたいと思います。

Pittsburgh mayor to Trump: Armed guards are not the answer
"We should try to stop irrational behavior from happening at the forefront," Bill Peduto tells "Meet the Press" in the wake of Saturday's deadly shooting.
https://www.nbcnews.com/politics/donald-trump/pittsburgh-mayor-trump-armed-guards-are-not-answer-n925341?cid=sm_npd_nn_fb_ma

全米ライフル協会なら言いそうなんだけど、時の大統領が、もっと武装していたら、襲撃は防げたなんというセリフを言うのは、憲法修正第二条がある、革命権を認める国という伝統があるとはいえ、現代では、さすがにそれはないんじゃないかと思うんだが、平気で言えちゃうところが、トランプさんの凄みな感じがする。マーケティング的に、凄い嗅覚。でもナーこういうマーケティングって、いわゆるポピュリズムとしかいいようがないんだよなぁ。

ポリティカルコレクトネスについては、たとえば町山智浩さんの視点は、常にリベラルで一貫していて気持ちいいん詩、僕もとても共感するんだけど、、、、だって、その通りだもん、外国(日本)からきてアメリカに住んでいるのに、PCにうんざりとは言えないと思うんだよね。そこがよるべきところだから。

でも、アメリカ全体に、これがうんざりという気分が広がっているのも、事実。たぶん、これは日本でもそうで、フェミニズムが行き過ぎて嫌われるキズナアイ問題とかもそうなんだけど、なんだか、「正しさ」が暴力的になって、反発を生んでいく流れの中で、これまでは差別やヘイト、陰謀論などとして全く受け入れられていなかったものが、その反発を吸収して(それ以外に吸収する場所がないので)社会が閉塞して、非寛容になっていく大きなうねりみたいな力学を感じます。つい先日、10/29/2018にブラジルの大統領選挙で、極右のボウソナロ氏が当選したんだけど、なんか世界的に、この傾向は強いような気がするんですよねー。

ポリティカル・コレクトネスの時代とその誤解:なにが「ポリコレ疲れ」を生んでいるのか?
2016年11月28日政治・国際関係
The HEADLINE
https://www.theheadline.jp/30811

Americans Strongly Dislike PC Culture
Youth isn’t a good proxy for support of political correctness, and race isn’t either.
OCT 10, 2018
Yascha Mounk
Lecturer on government at Harvard University
https://www.theatlantic.com/ideas/archive/2018/10/large-majorities-dislike-political-correctness/572581/?fbclid=IwAR1XD0SnZbzT0MmdwsTh96AHFVbKxyIbtV8wUV2Ybop5b8aIk0iVgGeY4O8

“Hidden Tribes: A Study of America’s Polarized Landscape,”
https://static1.squarespace.com/static/5a70a7c3010027736a22740f/t/5bbcea6b7817f7bf7342b718/1539107467397/hidden_tribes_report-2.pdf

WESTERN EUROPE
Shocking study reveals 72 per cent of French youngster want to leave France
By ABDELHAMID KADDOUR 21 October 2018
https://voiceofeurope.com/2018/10/shocking-study-reveals-72-per-cent-of-french-youngster-want-to-leave-france/?fbclid=IwAR3sTo3th3RVAdRqmsJdECBeizkMdrmnyhwUPgN_eSr0yxoRGf2VAMKyJOo

この辺のサーベイとか、見るとショッキングなんですが、でもなー実感的には、僕は男性で、ミドルクラスのアジア系に分類されると思うんですが、そうだよなぁーとしみじみ思うんですよね。

SNSで行われる議論に必要な意識
 私はその困難さの理由のひとつには、TwitterをはじめとするSNSの構造の難点にあるのではないかと思っているが、現状はこのような構造の中に私たちの公共圏は危うくぶら下がっている。だとすれば、そこで行われる議論はより攻撃的ではない方へ、より抑制的な方向へと意識することが必要なのだと思う。
 具体的に言えば、「表現の自由」のような制限をかけやすいネガティブな方向については、より抑制的に自由を侵害しないようにすること。いっぽうで、マイノリティの包摂のようなポジティブな方向については、選別せず積極的にみんなを包摂していくこと。

 いまのネットの議論では、なぜか表現の自由は制限の方向へと進みやすく、包摂は選別されやすくなっている。これは明らかに逆ではないだろうか。

炎上した「キズナアイ」問題 “表現の自由”を主張する前に考えたいこと
佐々木 俊尚
http://bunshun.jp/articles/-/9492


ちなみに日本のキズナアイ問題は、佐々木俊尚さんの記事が素晴らしかった。公共圏、公の問題とインターネット的な文脈は相性が悪くて、公が成り立たなくという会脳死なくなっているのは、世界中の現在的状況な気がします。ハーバマスの『公共性の構造転換』でも読み直すかなぁ。

ちなみに、アメリカ人の友人と話して、彼はデモクラットなんだけれども、中間選挙どうなると思う?という質問をしたところ、共和党が勝つだろうなーと、しんみり言っていた。なぜと聞いたら、Gerrymanderingだからね、とのこと。

Gerrymandering
Gerrymandering is a practice intended to establish a political advantage for a particular party or group by manipulating district boundaries.

ゲリマンダー(英語: Gerrymander [ˈdʒɛriˌmændər])とは、選挙において特定の政党や候補者に有利なように選挙区を区割りすることをいい、本来的にはその選挙区割りが地理的レイアウトとして異様な場合を指していう。ゲリマンダリング(英: Gerrymandering)とも呼ばれる。英語での発音はジェリマンダーであり、jerrymanderと綴られることもある[1]。ただし語源となった人名はゲリーと発音される[2]。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B2%E3%83%AA%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC
https://www.google.com/search?q=gerrymandering&rlz=1C1GCEA_enUS774US774&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=0ahUKEwj8nY3P6LPeAhVdIDQIHW4aBLcQ_AUIDigB&biw=2133&bih=1053&dpr=0.9

選挙区の区分けが共和党有利にできているので、どうしてもその傾向があるんだよ、とのこと。2020年にセンサスがあって、redistrictingが行われるときの政権が何か、が勝負だね。という風に言っていました。この辺りは、保守派の傾向があるブレット・カバノー(Brett Kavanaugh)さんが、トランプ大統領に指名されて、リベラルの比率が下がって、長期的にアメリカの最高裁の意思が保守派によっていることのように、むしろ時の大統領が誰かよりも、アメリカの歴史を支配する要因なんで、「そこ」を追うべきところなんだなーと思った。