評価:★★★星3.4
(僕的主観:★★★星3.4)
アイドルが、クラスメイトになって、友達になるという物語類型は、たくさんある。なんでか、リアルのアイドルには、全く興味がないんだけど、マンガは好きなんですよね。好きなことに気づいたのは、宮島礼吏さんの『AKB49〜恋愛禁止条例〜』かなぁ、あれは熱かった(笑)。よくこの系統のやつは、好きで読んでいます。BookWalkerで1巻が無料でダウンロードしていたので、読んだら続きが読みたくなって、全巻読了。とても良かった。何か類型や文脈的に特殊なことがあるわけじゃないんで、★3つなんですが、完成度は高かった。なんというか、この累計を「どこのテーマにもっていくか?」は作者と編集者さんの腕の見せ所だよなって思うんですが、河原和音さんの『高校デビュー』とか椎名軽穂さんの『君に届け』のような別冊マーガレット系の少女マンガをすごく連想して読んでいました。
なぜならば、偶然アイドルのクラスメイトの隣の席になった「女の子」が主人公だからです。いってみれば、百合もの?になるのかな。男の子がクラスメイトでラブコメなのは基本形ですが、女の子同士だと距離感が変わるので、僕的にはグッときて引き込まれました。
えっと、まぁとはいえ、典型的なアイドルが自分のクラスメイトで友人になってという話なんですが、僕がこの類型でいつも思う「観察の力点」というのは、
アイドルの仕事って、アイドルを卒業した後、何があるんだろう?
ってことです。いや僕はアイドルって、あまり知らないのでわからないだけな部分もあるんですが、とても記憶に残っているのは、モーニング娘。とかAKIBA48の前田敦子さん。アイドルの全盛期過ぎたら、その後って、いったい何をしているんだろう?って思ってしまうんです。ええとですね、これは僕の勝手な思い込みなのかもしれないんですが、打ち上げ花火のように10代と20代の煌めきがあって、卒業したら、流石に全盛期の輝きを越えるって難しい感じがしちゃうんですよね。オリンピッククラスのアスリートの、金メダル取った「その後」の人生というのも同じ感覚を僕は抱くんです。自分の夢の頂点をそんなに早く極めてしまって、「その後の人生」ってどうしているんだろうと思うってしまうんですね。
いやここまでアイドルものが増えたのならば、むしろ「アイドルのその後の人生」ってやつを僕はみてみたい気がします。物語の類型としては、それがみたいという「系」ができているんじゃないかなと思う。
アイドルものって、基本形が「アイドルになっていく少女の成長物語」か「アイドルが自分のクラスメイトで恋に落ちるという手が届かない天使が手に届く」という話ばかりな気がします。最初の視点が少女マンガよりで、あとのはガチで男の視点ですね。
ちなみに、ペトロニウスの性癖ぶっ刺したのは、赤川次郎さんの小説『棚から落ちて来た天使』ですね。栗本薫の小説『猫目石』の系統とも重なるんですが、『棚から落ちて来た天使』って、中学か高校生の頃に読んで、マジでこれ最高だ!と唸ったのを覚えています。29歳の中年サラリーマンの小田桐が、偶然助けた女の子が人気絶頂のアイドルの細川ゆかりで、彼女にお礼としてコンサートの席をもらったので、観に行ってみるかと行ったら、コンサートの真っ最中にその席に向けてアイドルから告白されて、しかも結婚します!と宣言されて逃げられなくなった(笑)というシュチュエーションから、赤川次郎的ミステリーに突入していく話しですね。ああ、これって、基本形なんだなと思います。この系統の話は、全てこの辺の軸が基本。「アイドルになっていく少女の成長物語」なんかは最近だと、『NEW GAME!』で有名な得能正太郎さんの『IDOL×IDOL STORY!』が好きですねー。こっちは基本系で捻る必要がないので、どこまで少女の成長への熱い気持ちがストレートに描けるかが勝負なので、ケレン味が必要なくて、ストレートなのが熱い。
ちなみに、「推しているファンの側の世界がどう見えるか」の種類も少しづつ、広がっている気がします。ちなみに、僕はいつもいいなーと思っているのは、コイルさんの『オタク同僚と偽装結婚した結果、毎日がメチャ楽しいんだけど!』の滝本さんですね。
この人は、ドルオタなんですよね。ドルオタが物語のメインではなく、この人が、社会人同士の偽装結婚をする話しなんですが、対等な男女が距離をゆっくり詰めていくところがこの手の作品の良さなんですが、お互い自分が「譲れないこだわりがある社会人」が、それをどうしていくか?に魅力がある。逆にいうと、ドルオタという「趣味が安定して社会生活に馴染んでいくさま」が主題なわけですよね。大抵のドルオタや推しファン視点が軸の物語だと、会社を全て辞めて活動につっこむ、、みたいな極端なシュチュエーションが、物語の類型としては先にきちゃうので、そう言ったものが飽和しないと、「ここ」まで幅が広がらないので、この物語はいいなぁと思います。僕は大好きで推しなので、小説も漫画も全て購入しています。
えっと、まぁこの系統は、なんだか好きなんですよね僕。やはり、自分お好みとしては、「少年少女の成長物語」みたいな熱い話が基本好きなんですよね。もちろん、幼馴染やクラスメイトがアイドルで恋に落ちていくちょっとエッチなドキドキラブコメ見たいのも、男性ですから好きなわけです(笑)。でも、好きなだけに見つけたら片っ端から読んでいるんので、批評家的視点というか、もう一歩も二歩も踏み込んだ作品が見たい。
というのは、10代の少女がアイドルを目指すのはわかるんだけれども、「その後」の射程距離がないと、ただ「10代に煌めいて花火を打ち上げて」その結果、人生おわちゃいましたみたいな、「激しく燃え尽きたい!」という物語になってしまうので、そういう昭和的な、成長できれば「あとはどうでもいい」みたいな発想は、もう流石にこの類型が増えてきているのだから、捻ってくれてもいいじゃない?と思うんです。
ちなみに、いろいろな系がありますが「その後」を感じさせるのは、なんといっても赤坂アカさんの『推しの子』ですね!。赤坂アカさんがインタビューで下記のように答えています。
――【推しの子】は13巻までの累計発行部数が1500万部以上(23年12月時点)です。人気の秘密は何でしょう。
◆いわゆる「アイドルもの」は、理想や憧れをベースにした作品がこれまで多かった印象です。僕はタレントに取材できるパイプがあり、ファンタジーではなく、アイドルや役者をこれまでにない「お仕事もの」として、リアリティーを追求して書きました。実体験をベースに作っているので、そのリアルさが人気につながっているのではないかと感じています。
僕は、アイドルものがもう少し深い射程距離を備えるには、この女優ものというか演技の世界のプロフェッショナル系の「お仕事もの」に接続するのが一つのルートじゃないかなと思っている。というのは、『推しの子』は、「アイドルや役者をこれまでにない「お仕事もの」」として描くというように、「恋愛リアリティショー編」「2.5次元舞台編」や現在の「映画編」など、もしアイドルになっていく過程で、映画に出たりバラエティーに出たり、偶像のアイコンとして「お仕事をしていく」ならば、このルートが現実的だと思うんですよね。