『惑星のさみだれ〜The Lucifer and Biscuit Hammer』2巻 水上悟志著 前世の記憶とフラッシュバックによるミステリー劇の手法(『僕の地球を守って』)と『Fate/Staynight』の劇空間の手法を思い出させる

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水上 悟志

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評価:未★★★★星たぶん4つ(読み途中)
(僕的主観:★★★★星4つ)


■底が抜けた人格を説得するのはとても困難

昨日夜を徹して、読みました(笑)。うむ、相当面白い。たぶんこれがうまくまとまれば、僕としての総合評価は、まぁ星4つプラスアルファかなぁ。読む価値は物凄くある一級の作品だけれども、間口が万人にOKと思えないので、星5つにならない・・・というところか。そういう意味では、『ランドリオール』も『カルバニア物語』も同じなんだけれども、なんというか年齢対象が、少し低く抑えられている感じがして、そこがもったいない気がする。えっと、ランドリとカルバニアは、もうなんつーか、対象とする層へのアピールの仕方が飛躍していて性別や年齢をぶち超えている部分があって、その「ぶっとび感」「スケールにはまらなさ感覚」が、マイナー色の強い作品であるにもかかわらず、文句なしの★5つの傑作認定をしています。事実マイナーでしょう市場での扱いは。けれども「よめばわかる!」というやつです。読み込む力があれば、万人が凄い!と思えるものだという僕の思えたものが、★5つなんです。とりわけ、僕には性別を超えられるかどうか?というのは強い基準になっている気がする・・・とすると、少女マンガの方に軍配が上がる可能性が高いのか・・・・。にすると、絵柄、テイストがもう一歩少年漫画の域を出ないんだよなぁ。中身は★5つ級なんだが、、、見る層が限定されそうな感じがする。まぁしかし、「その次元でちゃんと世界観をキープ」しているからこそ、まとまりを感じるのかもしれない、絵柄もそういう感じだしなぁ・・・。でもそのへんの評価は、他の短編集とかを読んでみないと、何ともいいがたいかも。まぁ今の感想。

「大人が笑うのは大人が楽しいぜって子供に羨ましがられるため


人生は希望に満ちてるって教えるためさ



・・・おれの大人論」


p79

これは東雲のセリフだけれども、カッコいーよねー。全編このセリフが溢れているんだけれども、これ自体が、作者が、大人目線で子供にメッセージを与えたいという構造の中で物語が進んでいることを示していると思う。実際には、この作品を支配する主人公コンビである朝比奈さみだれちゃんと雨宮夕日の二人の世界への絶望を、どう覆せるか?という部分にあるので、そういう設計をしているんだろうね。


ただ、さみだれちゃんと夕日くんの絶望は、「子供でわかっていない」のではなく、「重々承知でそれをやっている」という、、、なんというかある種底が抜けているキャラクターたちで、それをひっくり返すのは難しいぜ。言葉でやられたら物凄い陳腐だし、ねぇ。こういう人を殺しても平気なそこが抜けた人格を翻意させるのは言葉ではなく体験でしかできないから、それの方法によってこの作品が最高の作品になるかまぁ普通で終わるかが決まると思うねぇ。


あっと、個人的にマクロ楮をもう少し整理しておきたいので、2点指摘をしたい。


■『Fate/staynight』の劇空間の演出手法との類似

年代はどっちが先かわからないのですが、この狭い空間で、特定のキャラクターに世界が背負わされてしまい、その闘争を通して世界の在り方を突き詰めるという劇の手法は、TYPEMOONの『Fate/Staynight』と同じだなーと思った。これって、12人の獣の騎士というゲームルールが、いきなり降って沸いてくるわけじゃない?、それってFateのサーバントシステムと全くの同じですよね。戦闘による活劇は、物語を盛り上げるのにとてもいい手法なので、なぜだかわからないが命の危険があって、戦うしかない状況に追い詰められながら、「なぜ戦わなければならないのか?」のゲームルールを知っていくというスリラーサスペンスのハラハラドキドキ感も採用している。

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■前世の記憶をめぐるスリラー〜日渡早紀さんの最高傑作『ぼくの地球を守って』との類似性

まぁこれもFateの構造と同じ部分もあるんだけれども、前世の記憶が今後の選択を縛る、という意味ではこっちの方が本家本元のオリジナルで且つ、そのドラマツゥルギーを限界まで突き詰めた作品としては、やはり日渡早紀さんの最高傑作『ぼくの地球を守って』であろう。ちなみにこれは僕的主観★10個級なので、漫画好きで読んでいないなんて言うのは、許されざることですよ(笑)。

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同じ構造を持っているんだけれども、ぼくたまと比較すると、やっぱりどうしても年齢層が低く感じてしまうんだよね『惑星のさみだれ』は。12人の獣の騎士もほとんどがティーンエイジャーだし、そういった意味で愛憎が青春物語に変換されてしまい易い。この前世の記憶を追うスリラーという形式は、内面を追うが故に、内面の葛藤が深くドロドロしていればいるほど面白みを増します。まぁ悪いが、ティーンエイジャーのガキには、このドロドロ感は出せないんですよねー。Fateも登場人物の年齢は若いですが、はっきりいってその成熟度合いや背負っている重さは、桁が違います。ぼくたまは、まるでフジテレビの月9の『男女7人秋物語』みたいなもんですからねー。たかが恋愛とか痴情のもつれなんですが、それがああも大舞台になると、、、うぉぉぉっって感じになりますよ。

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ちなみに、前世の記憶ものでいま最も期待しているのが、小池田マヤさんのこの作品ですね。


あと『寄生獣』とかの感じとの類似性もいいたかったけえど、とりあえず・・・・寝る。

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