この後半の部分を、まわりはあまり好きになれないという人が多い。たしかに、カエサルまでのあの血沸き肉踊るダイナミックな物語と、五賢帝までの静謐ながらも楽天的な意思に満ちた帝国の拡大期にはない、滅びの、斜陽の匂いが満ちてくる。あらゆることは後手に回り、ゆるやかにあの偉大だった帝国が滅亡していく様を見るのは、あまり気持ちが良くないことなのかもしれない。
正直、僕も物語として楽しむという意味では、少し意欲が失せているかもしれない。けれども、同時に、この時代が、のちの中世ヨーロッパとをつなぐ「接続」部分なわけで、この次の巻ではついにキリスト教が全面に登場してくることになる。そういう意味では、知的好奇心はとてもくすぐるものです。
いや、、、逆にここがもっとも面白いところなのかもしれない?。それは、中世やその後の、終末論に彩られたヨーロッパ中世の世界の物語や宗教を見ていると、わかる。過去何百年も前に、自分たちよりはるかに優れて偉大な文明があった・・・という事実が、どういった感覚ののちの人の時間感覚に与えたか、というのは想像すると興味深い。何を言っているかというと、つまり、「進歩」を信じられなくなるはずなんですよ。なのに、最終的に、ヨーロッパは極限の進歩を示す予定説のプレディスティネイションの時間感覚を持つにいたります・・・17世紀以前の中世には、その片鱗すら感じないのに・・・その謎を解くキーが、ここにあるのかもしれない。
ちなみに、最近の具体例だと、この終末的な世界のイメージは、『ヴィンランドサガ』のアシェラッドとトルケルのラグナロク(北欧神話の世界の終りの日のこと)の感覚のことが念頭にある。
ヴィンランド・サガ 5 (5) (アフタヌーンKC)
幸村 誠
講談社 2007-10-23
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