『帝王学―「貞観政要」の読み方』 山本七平著 徳川家康や源頼朝は、何でリーダーたるとはを学んだのか?

帝王学―「貞観政要」の読み方 (日経ビジネス人文庫)帝王学―「貞観政要」の読み方 (日経ビジネス人文庫)
山本 七平

日本経済新聞社 2001-03
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中国皇帝として唐の時代に貞観の治 と呼ばれる最高の治世を出現させた二代目太宗李世民 の政治を、語ったのがこの本で、



リーダーとはどうあるべきか?


を語っている歴史時空を超えた大ベストセラーと思えばいいだろう。ちなみにこの内容をマジで読み込んだ人の代表例は、徳川家康で、肌身離さなかったくらいだそう。僕も会社の先輩から、ぜひ読んでおけと渡されたものです。内容は至極真っ当だが、それを実践するのは酷く困難であろうと思い、よく読み返しています。 しかしそうした教訓として読むよりも、そもそも日本の政治思想や民間への伝播など物凄い巨大な影響力があったであろう本書の研究が「ほとんど為されていない」という現実に、驚きを隠せない。徳川家康北条政子が、その統治の核心・手本として生涯学び続けて研究し、しかも江戸時代の知識人の常識であったような『貞観政要』が、である。おそらく鎌倉時代以降日本で最も読み継がれた本が、である。故・鬼才山本七平さんは、古今東西の古典を本当の意味で読みこなす能力を持っていたようで、しかも資料マニエリズムに落ち込むことなくダイナミックな思索の材料として展開する人のように僕には感じられました。だから山本さんは著書中では、何度も批判する割に原典や著作も読みもしない批判者が多いと嘆いていました。確かに本も読まないで非難する人って、多いんですよね〜。

また日本社会は忘却するのが物凄く得意で、歴史上凄まじい規模で中国のオリジナル思想・書物から影響を得ているのに、それが綺麗さっぱり忘れ去られると語っていましたが、それを強く思い出しました。そう云えば社会学宮台真司さんも日本はナショナリズムを持つには、忘却癖が強く、韓国のように歴史的怨念を子々孫々に伝えることは全くできないと分析していたのを聞いたことがあるります。ちなみにこの『草創(創業)と守文(守成=維持)といずれが難きや』貞観政要から引用されたものであるということを知らなければ、昭和天皇が守文を旨とする教育を徹底的に受けたという事実や山本七平昭和天皇論は、理解できないだろう。そもそも唐の皇帝太宗は、創業とその維持の両方を経験し、しかも成功させた稀なリーダーであったことが、後世に影響を与えた大きな理由の一つである。

山本七平の武田信玄論―乱世の帝王学 (角川oneテーマ21)山本七平の武田信玄論―乱世の帝王学 (角川oneテーマ21)
山本 七平

角川書店 2006-12
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