評価:★★★★星4つ
(僕的主観:★★★★☆4つ半)
夢中になってみた。本当に良質のSFロボットアニメーションだった。リアルロボットものを追及したというかリバイバルを狙ったというのが、気合だった。この作品、どうも評価が難しい気がする。というのは、「見終わった後に全体で評価する」と凄い駄作に思えてしまうんだよね。駄作というのは言い過ぎかもしれないが、どうもいまいち微妙。ただしなかなか難しいのは、2クール分を一気に息もつかないで見終えていることからも、凄いレベルで描かれた近年稀なリアルロボットものであるし、志村貴子さんの描くキャラクターとのマッチングも素晴らしいんですよ。なのでミクロの群像劇もあって、見ている間は、ほくほく胸が熱くなる充実感で見ていました。これって、「途中経過で感じる時の熱量」と終わった後が、凄いずれる系の作品だと思います。終わった後で、全部見通すと、うーん、いまいちかな?となるんですが、見ている時の没入感は、TROYCAとA-1 Picturesのレベルの高さもあるし、あおきえい監督の上手さも重なって、素晴らしかったです。アニメが好きなら、見て損はないものじゃないかなーと思います。特に、1クール目は、素晴らしく面白かった。火星の側のことがよくわからない状況で、地球の通信網がズタズタな状態での孤立感とか、そういう状況の設定がすごくよかったんでしょうね。火星側の事情や、世界のマクロ構造が見えてきて、物語を終息に向かわせる2クール目は、それよりは少し熱量が落ちる。
全体の評価が下がる理由は、全体を通してみると、マクロのドラマトゥルギーが弱いからだと思います。結局、この物語は何だったのか?というと、よくわからない。火星の独立戦争?なのか?、何の目的で戦っているのか?というのが、微妙に不明。資源が不足しているのが主な理由でしょうが、、、、あれだけ画期的なエネルギーシステムがあるのならば、確実に外交交渉で譲歩を引き出すのが得策で、そんな暴挙に出る必要があったんだろうか?と何度も思ってしまいました。突きでゲートが破壊されたヘブンズ・フォールによって、建国第一から第二世代の、地球の豊かさと洗練された文明を知っていて、なおかつ独立に踏み切り、火星の貧しさをよく知っていた貴族の当主が軒並み死んだのが、たぶんこの戦争の遠因で、第三世代の何もわかっていない若者たちが、まったく周りが見えなくて暴走するのを押さえるシステムがなかったんだろうなーと思う。そう思うと、しなくていい戦争だよな、とどうしても思ってしまう(苦笑)。2クール目で、なんでそんなに科学力やエネルギーに差があるのに、地球が戦線で互角に戦えるのかがわからないし、仮にそうだとしても、一度は地球自体がほぼ壊滅に追い込まれているのに、たった1年ぐらいで、宇宙空間に巨大な戦線を構築できるほどの物量やロジスティクスを回復できる理由もよくわからない。だってそれなら、1クール目であんなに地球壊滅レベルまで追い詰められているのがよくわからないんだもん。
また、この辺りは、面白さをどこに見るかという部分なんだけど、3人の主人公、スレイン、アセイラム姫、イナホの物語も、カタルシスが全然ないよね(笑)。僕的には、虚淵玄さんらしい、予定調和を裏切る関係性の構築よかったと思うし、三角関係でだれも報われないってのも、なんというか志村貴子さんおキャラクターデザインに凄くあっていてよかったんですよ。でも、僕の感想はさておき、やっぱりカタルシスがなくて、不完全燃焼に大多数がなるのは、やっぱりしかたがない。
ということで、マクロにしてもミクロにしても、ちょっと全体をまとめると、意味がよくわからないって感じになってしまうんだよね。もちろん、ガンダムファーストだって、意味がわからないといえばわからないんだけど、あれはそれをはるかにおける濃密さがあったんだけど、この作品は濃密さがそこまで行かなかった、という感じかなー。うん、何とも微妙な結論だ。星4つ級なのに。。。。
ちなみに、僕は、アセイラム姫が、めっちゃ好きでした。なんというか、シャワー室で暗殺されそうになって裸で抱き着かれても、人工呼吸されても、まったく恥ずかしさも、なにも気にしない・・・・鈍感を通り超えて、ああ、この子は、本当に「高貴な出自」なんだなって感じがして、手が届かない感がビシバシ出てて、いやーなんかよかったです。そのオーラを感じれば感じるほど、スレイン頑張っても、意味ないんだよねーーーーと思えて、泣けてきて、よかったっす。こういう届かない感じが凄いよかった。変にラブコメで、幸せになったりしないところが、素晴らしくよかった。