『スリー・アゲーツ―三つの瑪瑙』 五條瑛著 

スリー・アゲーツ―三つの瑪瑙 (集英社文庫)

評価:★★★★星4つ
(僕的主観:★★★★星4つ)


comingsさんのお薦めで、本日、出張の帰りの飛行機で読み終わりました。凄く面白かった!です。この作家は、僕にとって金鉱のようです。まだまだたくさん書いているので、楽しみでたまりません。『プラチナビーズ』も購入済みです。紹介ありがとうございました。特にスパイ小説と、現代の東アジアを巡るテーマの話の流れで読んだので、全体像を描けながら読めて、とても楽しかったです。モノごっとつ厚かったですが、一気に読めました。

特に、『ウルトラダラー』は韓国出張時に、この『スリー・アゲーツ』は上海のからの出張中のホテルと移動時間に読んでいたので、なんというか、話の世界にとても良く入り込めました。こういうって、雰囲気が重要じゃないですか(笑)。漢江の奇跡のくだりを読みながら、インチョンからタクシーでソウルの市街に向かう途中の漢江を眺めつつ読んでいたりすると、なかなかひたれてよかったです。
最近、ここらを飛び回っているので、こういう東アジアを巡る小説とか読むとなかなかぐっときます。

北朝鮮の偽ドル札をめぐるマクロの状況は、『ウルトラダラー』が良く書けており、それを前提とした「ある北朝鮮人スパイの物語」というミクロ視点でのドラマ性を盛り上げたものが、『スリー・アゲーツ―三つの瑪瑙』という、評価はまさにそうですね。二つ同時に読むと、非常に全体が分かって面白いと思います。また、この作品は、北朝鮮のスパイの内面描写が延々続く・・・事実上、シリーズの主人公である葉山が狂言まわしの役になって、このチョンという悲しくも苦しい「北朝鮮のスパイを主人公とした物語」になっていると思いました。これはかなり北朝鮮人のスパイの内面が描かれていますが(これが泣けるんだ・・・・)、そういった内面描写がほとんどないのは、村上龍さんの『半島を出よ』なんかがいいです。これらを比較しながら読むと、興味深いですよ。


そうですね・・・・マクロの伏線は、『ウルトラダラー』がとても良く、また僕は葉山やエディ、坂下ら米国駐留軍の情報機関に連なる日系二世三世や、その指揮を執る青い目のアングロサクソンのエリートの葛藤や緊張関係は、山崎豊子さんの『二つの祖国』の主人公天羽の苦悩を読み込んでおくと、非常によく全体像が分かってより深く理解できるな、と思いました。またこういった、「私とはいったい誰なんだ?」というアイデンティティの問題と、アジアの事実上の支配者たる米国アングロサクソンと、そのなかで葛藤する為政者やアジア人という緊張関係は、村上龍さんの『愛と幻想のファシズム』の万田総理のエピソードが凄く重し出される。最近、この手の物語を多く読んでいるので、なんとなくこの世界の考え方とか全体像がうっすらわかって気がします。いや、読書って面白いです。


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