批評:小説(Japan)

『凍りのクジラ』 辻村深月著 その安定した深い人間理解に感心

評価:★★★★★5つ (僕的主観:★★★★★5つ) 基本的にファンタジーやSFが好きで、「この世界と関係ないどこでもない場所」がみたい志向が強い僕の読書癖の中で、時々、この作品のように日常とは言わないけれども、僕らの生きている現代日本の普通の生活の世…

底の抜けた悪意に対して人は?

「人を殺してなんで悪いんですか?」 こういう質問が出ること自体が、大人の、教育制度の、社会の敗北だ、という意見を聞いたことがある。そして、丁度サカキバラ事件のころだよな、こういう質問が世に流布した感性って。ああ・・・その世代の、この系統の問…

素晴らしい大河ロマン!

海燕さんのところで紹介していたので、今日の大阪出張の移動時間に読了。・・・・素晴らしい大河ロマン。さすが『流血女神伝』の作者だけある・・・・この人は、こういうのが書きたかったんだろうな・・・少女の自己実現と大河ロマン・・・。なんか、非常に…

最近山田詠美が気になって…

これ、お薦めされてて、実は読みたくて仕方がないのだが・・・。最近村上春樹を読んでいて、日本にはろくな文学者がいないなーといろいろ思いだしていたら、考えてみれば、この人ってありだったと思ったんじゃなかったけ?と思いだして、そうしたら急速に読…

『オリガ・モリソヴナ反語法』 米原万理著  浦沢直樹のMONSTERに似てる

評価:★★★★★5つ マスターピース (僕的主観:★★★★★5つ) ■浦沢直樹『MONSTER』に似ている世界観冗長という欠点さはあるものの、浦沢直樹『MONSTER』を強く連想させる。台湾の出張中、移動時間の全ては、この本への熱狂と集中で過ぎ去った。よくあるのだが…

『獣の奏者』 上橋菜穂子著 風の谷のナウシカのマンガ版を読んだ時のような歴史と人と獣とを包括するマクロの視点

評価:★★★★★星5つ (僕的主観:★★★★★星5つ) 本日読了。時期が分かれているようで、1−2巻と3−4巻では、全く断裂を感じないが、全く描くものが違う。作者もあとがきではっきりそう考えているが、、、第一部にあたる1−2巻は、獣と人という相容れない存…

傑作だ。

評価:★★★★★星5つ マスターピース 僕的主観:★★★★★星5つ 傑作だ。 読み始めたら、いきなりエリンが30歳を超えていました・・・(笑)。そして、18歳の時のエリンよりも愛しく思えるんだから、大したもんだと思いました(笑)。いやーマジでかわいいよ、…

『カノン』 篠田節子著 日常を敵視するセルフの一致の物語(1)

評価:★★★星3つ (僕的主観:★★★★星4つ) 関口さん脚本の『SWANSONG』を終了して、ああ、そういえばここで描かれているテーマは、小説家の篠田節子さんが『カノン』で描いていたことと同じだな、と強く連想させられたので、『SWANSONG』を…

『スリー・アゲーツ―三つの瑪瑙』 五條瑛著 

評価:★★★★星4つ (僕的主観:★★★★星4つ) comingsさんのお薦めで、本日、出張の帰りの飛行機で読み終わりました。凄く面白かった!です。この作家は、僕にとって金鉱のようです。まだまだたくさん書いているので、楽しみでたまりません。『プラチナビーズ…

『暗き神の鎖』 須賀しのぶ著 大いなるものに翻弄される人間存在にとっての自由

評価:★★★★★5つ 傑作マスターピース (僕的主観:★★★★★5つ傑作) ■大いなるものに翻弄される人間存在にとっての自由 ラクリゼは、目の覚める思いで、エディアルドを見た。かつては目的も意思もない、人に命令されることでしか動けない飼い犬のような男だと…

『エトロフ発緊急電』 (3) 佐々木譲著 レジスタンスというドラマツゥルギーの類型

■レジスタンスというドラマツゥルギーの類型 「そうじゃありません」金森はこんどははっきりと歯を見せていった。「前にも話したじゃありませんか。わたしは植民地の人間です。その後何があろうと、わたしはけっきょく、この国を滅ぼすために力を傾けていた…

あまりにも素晴らしいの何度も読み返しながら時間をかけて・・・・

物凄い好きなので、早く終わらないように、物凄い時間をかけて何度も読み返したりしあらべたりしながら時間をかけて、ようやく読了。うん、素晴らしい、凄い。物語としても、本当に美しいし、読みやすいし、それでいて、この時代の深いところまで僕を連れて…

『ウルトラダラー』 手嶋龍一著 東アジアの戦略地図を鳥瞰するインテリジェンス小説

評価:★★★★★5つ (僕的主観:★★★★☆4つ半) ■東アジアの戦略地図をシンプルに覚えておこう! インテリジェンス小説。それって何?と聞かれれば、今の時代に適応したスパイ小説の新しい呼び方だ、とでもなろうか。この小説の何が面白かったかといえば、この…

めちゃめちゃおもしろかった。読み出したら止まらなかった。

評価:★★★★★5つ (僕的主観:★★★★☆4つ半) 素晴らしいインテリジェンス小説。 佐藤優氏が、強く推薦していたので、気になって積んであったものを、昨日の出張中に読破。なんとなく固い小説をイメージして、疲れているこういう時は、もっとバカな漫画とかが…

『女郎蜘蛛』 栗本薫著 その人間理解が素晴らしい

評価:★★★☆3つ半 (僕的主観:★★★★4つ)海燕さんに薦められていた、積んどく本リストが読み終わる。これも手にとると止められなかった。上海出張中の紹興酒をしこたま飲んだ後、眠いんだけど、読むのが止められなくて、ホテルで読破してしまった。うん、昨…

『エトロフ発緊急電』 (2) 佐々木譲著  インテリジェンス小説としての面白さ〜1941年の大日本帝国

評価:★★★☆3つ半 (僕的主観:★★★★4つ) ■インテリジェンス小説としての面白さ〜1941年の大日本帝国1990年(ということは、19年前か)山本周五郎賞を受賞したというのがわかる、読み応えのある小説だった。佐々木譲さんは、あまり知らなかったの…

物語三昧の2008年ベスト 小説部門

2008年のベスト(ちなみの今年発刊ではなくて僕が読んだ中で)/海燕さんの記事を見て思いつきの真似です(てへ) 小説部門 1位『ローマ人の物語』塩野七生 ローマ人の物語 (1) ― ローマは一日にして成らず(上) 新潮文庫塩野 七生新潮社 2002-05売り上げラ…

『エトロフ発緊急電』 佐々木譲著 (1)

『昭南島に蘭ありや』が、戦前の日本を扱った小説という意味では、僕の本を読む時のテーマである「空白の日本近現代史」という部分に引っかかったので、凄くよかったのだが、星自体の評価は3つレベルであった。小説は、そつなく、きれいにまとまっており、読…

『昭南島に蘭ありや』 佐々木譲著 とりあえず買ってみた・・・・・ドキドキ

新しい本屋をふらふらしていたら、これとか見つけてしまった。・・・・この人の歴史ものをいくつか見て、、、タイトルとあらすじだけで、やべぇ、超好きかも・・・・もし、一冊読んでみて、もし好きなタイプだったら、金鉱見つけたかも。だって、これ、『二…

『覇王の家』 司馬遼太郎著 徳川300年の安定社会をつくった三河武士集団を通しての日本人とは何かという評論

いわゆる小説ではないと思います。徳川300年の安定社会をつくった三河武士集団を通しての日本人とは何かという評論だと感じました。だから小説を期待すると肩透かしかも。小説と評論の中間印象です。印象的なのは、あとがきで司馬遼太郎が、徳川三百年によっ…

『テンペスト』 池上永一著 素晴らしい構想力と長編にもかかわらず読者を飽きさせないテンポのよさはあるが、、、、、

評価:★★★☆星3つ半 (僕的主観:★★★☆星3つ半) 非常に評価が難しい作品。 一言で言うと、文章が下手で、時系列が非常に読み取りにくいので、小説というよりは、ライトノベルといってしまいたくなる「軽さ」がある。まず欠点を先に言ってしまうが、たぶんも…

『二つの祖国』 山崎豊子著 個人主義と家族のドラマツゥルギー

二つの祖国〈上〉 (新潮文庫)山崎 豊子新潮社 1986-11売り上げランキング : 74630Amazonで詳しく見る by G-Tools いうまでもない、読む前からわかっていた大傑作。あまりに楽しみ過ぎて、読むのをとっておいたのだが・・・最近、もう体調的にも仕事的にも、…

『テンペスト〜上/若夏の章』池上永一著 小さな少女が立身出世の夢を見るビルドゥングスロマン

テンペスト 上 若夏の巻池上 永一角川グループパブリッシング 2008-08-28売り上げランキング : 484Amazonで詳しく見る by G-Tools これ、、、海燕さんのところで書いてあったので読み始めたが、分厚いにもかかわらず、凄い読みやすい・・・。まだ2章ぐらい…

『雄気堂々』 上巻 城山三郎〜尊皇攘夷と開国の狭間で

評価:★★★★☆星4つ半 (僕的主観:★★★★★星5つ) 最近城山三郎にはまっている。 空白の日本の近現代史を、エンターテイメントを通してイメージを掴みたい、なんて目標を立てておきながら、城山三郎を読んだこともなかったなんて、僕もぬけているな、とただい…

『1492年のマリア』 西垣通著 自然の中に何かのメッセージを見出していくその果てに

1492年のマリア西垣 通講談社 2002-07売り上げランキング : 451303Amazonで詳しく見る by G-Tools 掃除していたら、前に買って積んだままの本を発見。おお、これは読まなければ、と思いつつ、、、よし、読もうか。こういうのって、ウンベルト・エーコーの系…

『毎日が日曜日』 城山三郎著 日本株式会社の経済戦士たちのバイブル①

評価:★★★★☆4つ半 しかし傑作 (僕的主観:★★★★4つ) この作品は有名ですよね。あまりに感想を書こう書こうと思っていたら、日がたって細かい内容を忘れてしまった。『マブラブオルタネイティヴ』の感想は、はし君とかGiGiさんという仮想読者が明確にいて…

『水滸伝』 『楊令伝』 北方謙三著 そのわかりやすさ、見事に簡潔な文体、潔く19巻でまとめる構成力、、、小説家としてのレベルの高さを感じる

水滸伝 (19) 旌旗の章 (集英社文庫 き 3-62)北方 謙三集英社 2008-04-18売り上げランキング : 6036Amazonで詳しく見る by G-Tools水滸伝 (1)北方 謙三集英社 2000-10売り上げランキング : 232628Amazonで詳しく見る by G-Tools楊令伝 一北方 謙三集英社 2007…

『水滸伝』 1〜19巻 北方謙三著 中国の大地に共和政治を打ち立てるという壮大な戦略(1)

水滸伝 (19) 旌旗の章 (集英社文庫 き 3-62)北方 謙三集英社 2008-04-18売り上げランキング : 6036Amazonで詳しく見る by G-Tools水滸伝 (1)北方 謙三集英社 2000-10売り上げランキング : 232628Amazonで詳しく見る by G-Tools楊令伝 一北方 謙三集英社 2007…

『水滸伝』 17巻 北方謙三著 玉麒麟盧俊義の最後に、胸が熱くなる!!

評価:★★★★★星5つ マスターピース! (僕的主観:★★★★★星5つ) 玉麒麟盧俊義。 政府専売の塩の闇のルートを作り出し、大宋帝国に叛乱をおこす梁山泊のロジスティクスを支え切った男。 その壮烈な最後に、胸が打ち震えた。 なんか、あまりにかっこよすぎて…

『スカイ・クロラ』(The Sky Crawlers)押井守監督 空中戦闘のシーンが、感動的でした

先日、見てきました。 空中戦闘のシーンが、圧倒的で、見ごたえがありました。これって、映画館で見ないといけないタイプの映画ですね。 脚本に関しては、まったくもって「押井守」ですね。僕はこの人の言いたいことは、最初期から全作品同じと思っているの…